2009年06月28日

新型プリウス試乗

登場前から予約発注が膨れ上がり、減税効果も手伝ってか、販売1か月後になんと18万台という空前絶後の人気を集めた、3代目プリウス。今回はその試乗レポートです。

まず最初に前置きとして、試せたグレードは「L」「Sツーリングセレクション」「G」。SツーリングとGは軽く街中を試乗した程度、そしてLでは約550km強のロングランで燃費計測・走りのチェックなど細かくインプレッションしました。それらを今回はまとめた上でレポートする事を、あらかじめご了承願います。

スタイリングは随分と精悍となり、ディティールには空力的な処理が散見できます。年内納車も厳しいと言われる中、今年から来年にかけて、これから新型プリウスを街中でウジャウジャと見かける事になるでしょう。差別化のために、エアロやホイールなど、プリウス用のドレスアップパーツの需要も今後多く見込まれるはず。

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また、燃費第一とはいえ、やはり純正の15インチタイアはかなり足元が貧弱に見えます。ボディのボリュームが大きく向上しただけに、見た目とのバランスで言えば17インチのツーリング仕様のほうが自然。思えば、初代が登場した時も、タイア幅は165ながら径は15インチ。そう考えると、幅狭のまま外径だけを大きくするチャレンジがあってもよかったかもしれません。

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続いてインテリア。こちらではグレードの差がモロに出てくるところです。LとSでは見た目はリアワイパー、フォグランプがなくなる程度ですが、インテリアはセンターコンソールの違いや肘掛けの質感、また最大の難点として挙げられるのが、シートリフターがない事。ちなみに自分の場合、Lではどうしても自分のポジションを決める事ができませんでした。

Lで走った感想も後述しますが、もし自分ならこれだけでLは選択肢から外れます。また、SとGではシート表皮が異なりますが、個人的にはその差はほとんど感じませんでした。Sでは本革巻きステアリングが装着されませんが、こちらはオプションにて装着可能。握りはやはり断然本革巻きのほうがしっくりときます。

ステアリングのスイッチ類は、先代から比べるとかなり集約されました。先代ではエアコンのON/OFFや前後ウインドーの熱線までステアリングでコントロール可能でしたが、新型はそこまで徹底していません。操作の分かりやすさでいうと、個人的には先代が若干上。しかし、新型はタッチトレーサーという新機構があるだけに、こういった形で簡略化されたのでしょう。

その他基本的な事は、前回のレポートでお伝えした通り。Lではポジションに不満が残ったものの、S以上のグレードでは問題なく、ステアリングにテレスコ調整機能がついたおかげで、先代ではどう調整してもルーミーさが残ってしまうポジションは随分自然なものとなりました。

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今回のロングランで新たに分かったのは、シートのレベルアップ。先代のそれはお世辞にも褒められたものではありませんが、新型はかなり良くなりました。それでもまだ「最高!」というレベルではないものの、1日元気よく走りまわった時の疲労感の違いは明白。少しタイトなポジショニングを取る自分の場合、新型のほうがはるかにフィット感、サポート性は上に感じられました。薄型化によるクッション性の低下も全くなし。シートサイズも十分なものです。

また、今まで共用していたナビモニターとTHSユニットのエネルギーモニターが新型から分離され、エネルギーモニターはセンターメーター内に。ナビユニットは通常のDIN企画となって、ユーザーの好みのものが装着できるように。

これでナビ表示とエネルギーモニターを同時に表示・確認できるようになり、個人的には好感を覚えたものの、常に乗るユーザーはナビシステムをそれほど毎回使わない事を考えれば、精細度が大きく落ち、分かりやすいとはいえなくなったエネルギーモニターには賛否が分かれるかもしれません。

このエネルギーモニター、下にはトリップメーターも備わっており、メインの画面では時間毎燃費記録・システム状況画面・そしてエコインジケーターが表示可能。エコインジケーターは普段の運転の際のアクセルワークに大きく貢献する画面ではあるものの、緑色の単色表示では、パッと見の視認性にやや欠ける印象。夜だとパワーモードが若干赤色に光っているのが見えますが、全体的な質感の面でも安っぽい感じは否めません。

ここはやはりメーターの色変化でアクセルワークを指南するインサイトのエコティーチング機能のほうが、分かりやすさと見栄えは確実に一歩先を進んでいる印象。絶対的な性能だけでなく「クルマとドライバーの疎通」というインターフェイス面での優位性も、こういったハイブリッドモデルではとりわけ重要になってきます。今回プリウスに乗って、逆にインサイトが、性能の差をできるだけカバーするために、インターフェイス関連が非常によく考えられているという事を実感しました。

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また、インターフェイスで言うと、このシフトノブと「ECO」「PWR」「EV」ボタンにも一言。一応シフトノブに関して、開発陣の方は「一番操作しやすい場所に配置した」とのことで、確かにそれは間違いないのですが、それならばなぜ、この新設された「ECO」「PWR」ボタンも、どうせならシフトゲートの一部として操作できるようにしなかったのか。

現状ではシフトノブに触るのは、発進時と停車時、エンジンブレーキ時、そしてバックの時くらい。せっかく一等地にシフトノブを配置しておきながら、運転の際によく触れるであろう「ECO」と「PWR」のスイッチはボタン式。「バイワイヤ式なので、ボタン式のポジション採用も考えたものの、やはり手元を見ずに、一番運転しつつ操作しやすい場所にシフトノブを設置した」という開発者の言い分が、全く理解できない点がここ。走っている際に選択する頻度が明らかに高いモード選択がボタンでありながら、このような実際のインターフェイスの出来と大きく矛盾する、荒唐無稽の説明は全く理解に苦しみます。

実際、走りながら「ECO」「PWR」モードを選択する際、どうしても手元をつい確認しながらの動きになってしまうのは、全く人間工学的観点からも疑問としか思えません。また、スイッチの形もただ単に同じような形状に統一されており、特に夜間の走行中などには分かり辛い事この上なし。これなら、ステアリングにスイッチとして設置する事も十分に考えられたはず。

サイドのウォークスルーを諦めて、せっかくこのような一等地にシフトノブに配置したのであれば、「N」「R」「B」のポジションに加えて、「ECO」と「PWR」のモードもシフトノブで選択できるようにすれば、このシフトノブの位置の優位点を大きく生かして、使いやすさや操作性の分かりやすさは大きく向上したはず。実際の性能ではなく、こういった何の工夫もない適当さによってインターフェイス上での魅力を大きく削いでいるのは、まったくもって非常にもったいない、その一言です。

さて、実際の走りについてですが、すでに多くのところで書かれている通り、グレードによって乗り味がかなり変化するのが新型プリウスの特徴。まず、スタート時からの静粛性については、これは「S」や「G」が一枚上手。もともと絶対的に出る音が少ないため、「L」でも十分静かなのですが、エンジンがかかった瞬間やロードノイズの侵入など、実際に乗り比べてみると、軽量化のために防音材も大きく減らしている「燃費スペシャル」のLは、先代止まり。SやGではさらにクルマ本体の静粛性が向上している印象。どうせ新型を買うならば、やはりS以上を選んでいたほうがいいでしょう。100km/h〜ではさらに大きく違いが出るはず。

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しかし、体感上の速さの進化でいえば、それを一番実感できるのはこのL。絶対的な軽さに加え、先代と同じ185幅のタイアを履く事もあって、加速感の向上が一番分かりやすく体感できます。このLはプリウス中の最高燃費車であると同時に、最速グレードでもあります。

もちろん、「最速」と言えるのは直線のみ。シャシーのポテンシャルアップによって、ボディの剛性感、サスペンションの接地性も非常によくなっているものの、このシャシーに対してこの185のグッドイヤーは完全にプア。例えるならば、骨格は確実に良くなっているものの、それに伴う筋肉が全くついていけていない、そんな印象です。

それでも、荒れた路面でブレーキング時にリアのスタビリティが不足気味になる傾向は薄れており、先代と同じ頼りないタイアでも確実にポテンシャルは向上しているのですが、このシャシーとタイアのアンバランス感は乗っていて、かなり違和感アリ。また加速感でいえば最速なものの、日本では使えない120km/h〜の領域からは明確に直進性やスタビリティが低下し、そこに安心感が伴う速さではありません。

もちろん、「プリウスでそんな走りなどしない」という意見はごもっとも。しかしながら、登りのワインディングで少しアクセルを多めに開けると、途端にホイールスピン&トルクステアに見舞われて、VSCが作動。ドライ路面でもこれほどのパワーを新型プリウスが実際持ち合わせている事を考えれば、高速域での安定感を含めて、最低限もう少しレベルを上げておきたいところ。

今回ブレーキもリアがディスクに格上げされ、その絶対的なすトッピングパワーだけでなく、ブレーキフィールも随分とよくなった印象なので、とりわけタイアのグリップ不足が顕著に目立ってしまいます。

そう考えると、195幅のBSエコピアを履くS/Gグレードは、スタビリティとグリップバランスが適度にとられていて、やはり実用域でのマッチングを考えるとこちらのほうがベター。単純に言うならば、「プリウスとしての進化」をより求めるならL、「プリウスの魅力を分かりつつ、自動車としての進化も」というのならS/Gの15インチ仕様を、という感じでしょうか。こちらは若干重くなり、タイア幅も太くなりますが、Lのどこか常に頼りない印象がつきまとうことはほとんどなくなります。

しかし、基本的なポテンシャルが満足できるレベルにあるものの、そこに伴う質感の面でいえば、S/Gでも「並」。荒れた路面での少しバタつく乗り味や、スムーズさは十分なものの路面とのコンタクト性がほとんど感じられないステアフィールなど、基本的な部分では先代プリウスの味を継承しているのが実情。先述したように、スタビリティや剛性感の面では進化しているものの、感覚的な部分での質感の向上はあまり感じられません。

それらを求めるならば、俄然お勧めとなるのが17インチを履くツーリングセレクション。215幅の17インチタイアだけでなく(17インチはBS・ミシュラン・トーヨーの3銘柄の中から)、ダンパーやサスペンションも専用品、また電動パワステのユニットも専用で、ステアリングギア比もこちらのほうが若干クイックな設定。

このグレードは17インチを履く事から「スポーティ」なグレードと思われがちですが、実際には走り面ではむしろ「プレミアム」なグレードと考えたほうがいいでしょう。当然ノーマルよりも少し硬めとなるものの、高速域でのフラット感を考えれば、乗り心地の良さはむしろこちらのほうが上。

ややスローすぎるステアレシオを含め若干違和感の残る標準系よりも、キチッとした操舵感を伝え、またステアレシオの方もツーリングセレクションのほうがむしろナチュラル。クルマの動きもスポーティというよりは全体がシャキッとした印象となり、今回の新型プリウスのシャシーのポテンシャルを一番有用に生かしているのがツーリングセレクションといえるでしょう。

もちろん、プリウス最大の魅力である「燃費」という事を考えると、少しばかり矛盾するグレードではあります。それに加え、Lの時に感じた「加速性」という面でも、このツーリングセレクションは、それほど大きく感じられません。排気量アップの効果も、このツーリングセレクションでは、重量増+17インチタイアで相殺されてしまうようです。走りの質感部分での魅力は大きいものの、動力性能の面でのメリットは感覚的に先代と同レベルにとどまります。また、最小回転半径が5.5mと大きくなってしまうのも、少し気になる点。

しかし個人的には「燃費」と「走りの質」のバランスを考えても、このツーリングセレクションは魅力的。また、この足と電動パワステユニットは、S/Gでソーラーパネル付電動サンルーフを選択するとセットで装着されるので、15インチ+ツーリングセレクションの足という組み合わせも可能。しかし、サンルーフが欲しい人なら良いものの、必要なければ単なる贅沢品。ソーラーパネルも現状ならエアコンの動作のみであり、それで20万円を大きく超える金額は微妙なところ。

変わってツーリングセレクションでは、LEDヘッドライトを始め、Lには標準なもののS/Gにはオプションのフロアアンダーカバーに、リアバンパースポイラー、17インチタイア&アルミが装着されて25万円。この乗り味が欲しいのなら、どちらかを選ぶ事になりますが、このあたりの選択の巧みさが、トヨタの販売戦略の上手いというか、憎いところです。

個人的には、Sツーリングセレクションに本革巻きステアリングを装着、そしてタイアサイズをあえて205幅の16インチ仕様にインチダウンする方法で乗り味を模索してみるのがお勧めパーソナルチョイス。もちろん、あくまでもプリウスのキャラクターを考えれば、最低限のスタビリティを確保した上で、できるだけ緩くソフトな味付けのセットアップをするのが本意的。

よく模範的仕上がりで、価格的にも比較対象として持ち上げられるものの、プリウスはゴルフを目指す必要は全くないと考えます。今回の6の素晴らしい完成度には感服しつつ、これがプリウスの目指す走りのキャラクターかと言われると、全くそれはナンセンス。そう考えれば基本的にはLグレードだけ乗っていれば不安はありません。

しかし、そこに「質」が伴うかどうかは話が別。新型のエンジン+モーターのポテンシャルや、シャシー能力とのバランスを考えれば、やはり今新型を買うとなれば、ツーリングセレクションの乗り味の質感は欲しいところ。基本的なキャラクターは大きくは変わらないので、ある程度燃費とトレードオフで手に入れる価値があると思えば、お勧めはツーリングセレクションとなります。

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また、今回使用したカーナビはトヨタ純正メーカーオプションのものではなく、7インチのSD式シンプルナビ。しかしDVDの再生はもちろんの事、基本的な実用域での使い勝手はこれで十分なスペック。HDD内蔵でなくても、iPodが接続できれば音楽メディア内のボリュームも十分。

収まりの良さや画面の綺麗さなどでは確かに純正品やハイスペック品に若干劣りますが、このシンプルナビにバックモニターを装着するのが一番賢いチョイスのような気がします。それよりも気になったのは、新型のオーディオスペースの位置の傾きが、直射日光の当たり方によって画面が反射して全く見えなくなる時があるのは△。角度調整で若干改善はできたものの、実際のナビ装着の際にはぜひ1度確認を。

さて最後に、気になる燃費報告。今回のロングランで試したのは、燃費スペシャルグレードのL。先述したように、軽量なため動力性能でも圧倒的に有利で、パワー不足を感じた事は一切なし。ECOモードではさすがにアクセルレスポンスの鈍さが際立って、ほとんど街中でしか使用できませんでしたが、PWRモードにした際のスムーズかつ強力な加速感は、気持ち良いの一言。

また、足回りがLはフラフラなため躊躇なくとはいきませんが、性能的には2.4Lクラスの言葉に偽りなく、ハイペース領域でもグングンと加速していきます。この高速域での加速の余裕さと巡航時の回転数の低さは、排気量アップの恩恵によるものでしょう。また、リダクションギアの採用による効果も忘れてはいけません。反面、安定性は増すものの、重量とタイアの関係か、ツーリングセレクションだとここまでの動力性能の劇的さは感じず、感覚的には2.2L程度。もちろんこれでもレベル的にはゆとりたっぷりです。

Lでは特に防音材がカットされるため、新型のエンジンとなっても相変わらずエンジンのフィールはガサツ気味で洗練されていませんが、そもそもエンジンの始動している時間が新型はさらに短縮されました。街中でのモーター走行領域は先代よりも確実の広がっており、排気量アップで高速域の燃費が改善されたとはいえ、平均速度が遅いほど燃費が良くなるという傾向は、新型プリウスでも引き継がれています。

ここで、それぞれのシチュエーション別の燃費を紹介。デフォルトとして、エアコンはオート26度でON、オーディオON、3名乗車でテストしました。

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まずは、メーター上80km/h巡航。やや誤差があり平均速度は70km/代なものの、走行車線をゆったりと走った状況で楽勝に30km/L超え。このくらいの速度では、ノーマルモードで普通に走れば、誰でも30km/Lは楽勝でしょう。このあたりの燃費の良さは驚異的です。

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続いては、少しペースを上げて100km/h+α巡航。メーター上での平均車速はちょうど100km/hで、この時の燃費が26.0km/L。先代ではこのあたりの速度域になるとガクンと燃費が落ちましたが、新型の排気量アップによる燃費への効果がこの速度域で顕著に表れた形になりました。

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そして3つ目は、PWRモードにしてアップダウンの激しいワインディングを、アクセルを存分に踏んでかなり活発に走りまわった時の数値。始動直後の冷間時を除けば、これが新型プリウスの最低燃費を出すシチュエーションと考えてもいいでしょう。これくらいまでペースを上げると、さすがに185幅のタイアでは全くアテにならず、VSCが頻繁に介入。またスロー過ぎるステアレシオもこういった場面では気になります。

しかし、ブレーキングで荷重がフロントに移ってもリアのスタビリティは高く、タイアが負けているもののアンダーステアは最小限。このあたりはシャシーのポテンシャルアップを実感するところです。コーナー脱出時でホイールスピンをするなど、少し非現実的ではありますが、それほどのポテンシャルを新型は秘めている、という事をお伝えしておきます。

そのような走りでもこの燃費を叩き出す事を考えれば、実用上はまず15km/Lを切る事はほぼないのでは。タウンスピードでの燃費の良さもプリウスの自慢であり、普通に走って25km/Lを超える燃費を出す事は新型プリウスにとって楽勝ムード。上級グレードや17インチ仕様でも、20km/Lは固いところでしょう。

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そういった様々な走りのシチュエーションをテストしつつ、最終的な燃費はメーター上で24.5km/L。この燃費計はかなり正確性が高く、実際給油した際の数値もほぼ同値の24.4km/L台でした。奇しくも以前同コースでテストしたインサイトと平均車速が59km/hと全く同値。ちなみにこの時のインサイトの数値は約21.9km/L。高速セクションが7割強とやや多めだったので、思っていたよりも差は開きませんでしたが、インサイトのテストの時はエアコンを使用した区間は僅かだったのに対し、新型プリウスの時は常時ON。またインサイトの時はハイペース区間の燃費計測は実施しなかったので、同時に同じ内容で比較すれば、差はさらに広がっていたかもしれません。

インサイトと比較すると、新型プリウスが高速域の燃費が改善されたとはいえ、高速巡航燃費はインサイトでもプリウスに匹敵する数値を狙う事が可能。コーチング・ティーチング機能も非常に分かりやすく、エコ運転さえ楽しみにしてしまうところはさすがホンダ。またハンドリングは軽快で、エンジンサウンドもインサイトのほうがスポーティ。

ただ、得意の高速巡航燃費を出す時の速度域では、足周りのセッティングが合っておらず、プリウス以上にフラッフラ。かといって、5ナンバーサイズが有利になる街中では、途端に燃費がガタ落ち。このあたりのセッティングのあいまいさが、インサイト自体の中途半端さを少し助長しています。また実用性はプリウスに全く及ばず、スポーティなリアドア付クーペと考えたほうが無難です。そして価格を比べてしまうと…。

インサイトで勝っているのは、個人的な好みでスタイリング、アンビエントメーターによるコーチング機能、軽快なハンドリング、気持ちいいエンジンサウンド。その程度。残念ながらこうして比べてしまうと、車格の差うんぬんに関係なく、まず1台の車としての完成度からしてプリウスはやはり圧倒的です。

ちなみに、同区間での先代プリウスの燃費テストは23.1km/L。先代のユルイ仕上がりも嫌いではありませんが、新型の動力性能向上+燃費向上を思うと、さすがに少し見劣りしてしまいます。

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初代、2代目、そして3代目。ハイブリットとしての進化も驚異的スピードながら、新型は「自動車」としての進化もキッチリ盛り込んで仕上げてきた印象です。中には「ハイブリッドは本当にエコなのかどうか?」という事に関しては、議論が今後も続くでしょうが、これからの時代の実用車として考えれば、新型プリウスのこの仕上がりと完成度、そしてバリューフォーマネーは、これだけの注目と注文を集めてある意味当然だと納得せざるを得ません。「所詮ハイブリッドなんて」と鼻で笑っていた欧州メーカーにとっても、このプリウスは驚異的な1台でしょう。今までの従来的自動車評価軸や価値観をぶっ壊しかねない、そんな実力を秘めています。

もちろん、ハイブリッドだけ、プリウスだけ、が選択肢!というわけでは当然ありません。ハイブリッドでなくても、燃費や価格以外にも、クルマの魅力はたくさんたくさんあります。しかし、あえてそちらで勝負してくるなら、それこそ生半可なレベルではこのプリウスに太刀打ちすることは不可能。燃費や価格以外で「プリウスよりも魅力的!」と唸らせてしまう、それだけ本気のクルマ作りがこれからのどのセグメントでも求められてくるのかもしれません。

ある意味、21世紀に自動車という商品がどれほど人間にとって魅力的になれるのかどうか。その試金石となるのが、このプリウスという1台なのかもしれません。




レポート;岩田 和馬


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2009年06月24日

BBCトップギア

イギリスのBBCで日曜のゴールデンタイムにこの時期になると放送されている「Top Gear」という自動車番組をご存じでしょうか?これを見ているクルマ好きの方なら、名前は聞いたことある、もしくはおもしろくて大好き!という方が結構いるかもしれません。

ジェレミー・クラークソン、リチャード・ハモンド、ジェームス・メイというキャラの濃い「少年たち」であるメインキャスター3人が、時に過激に、時に真面目に、時に皮肉たっぷりのジョークを交えてコーナーを展開していくこの「TopGear」。例えば、GT−Rと日本の公共交通機関を使ってレースをしたり、激安中古車を買って様々な指令をクリアしていったり、有名人をゲストに招きコースでタイムアタックさせたり、気に入らないクルマには容赦ない罵声、あげくの果てには破壊・爆破・炎上までさせてしまったり。

おそらく日本のテレビ番組では絶対にできないであろう、ましてや受信料を取るBBC、日本で言えばNHKなどには絶対にできないであろう、Rubbishかつ面白い企画が目白押しの番組。時にあまりに過激すぎる内容に批判がきたり、司会の1人ハモンドがクラッシュして重傷になったり、問題もあるようですが、日曜夜のゴールデンタイムに高視聴率を叩き出し、BBC内だけでなくイギリス国内外から高く評価されており、その人気は世界的規模にまで広がりを見せています。

もちろん、それだけなら単なるハチャメチャバラエティ番組。加えて、もともとはとても硬い真っ当なキッチリとした自動車番組だったのですが、ジェレミーが司会を務めるようになってから、どんどんバラエティー色が強くなったという要因もあります。

かといって、日本ではとうていマネできるレベルではありません。かつて「芸能人キャノンボール大会」という企画で、有名人たちが愛車で高速道路上をレースするという模様を放送し、その後警察で大問題になった事があったように、そんな日本で「戦車とランドローバーの勝負」や「メルセデスSLK55AMGとポルシェボクスター、どちらが銃撃戦でより弾を食らわずに逃げられるか」や「韓国車、プジョー、ポルシェを露骨に嫌う」というような事は到底できませんし、放送としても成り立ちません。

しかしそんなハチャメチャなものの、その美しくクオリティが極めて高い撮影・映像テクニック、そしてなんといっても「クルマってこんな楽しいんだ!」と改めて思わずにいられない企画力・表現力・そしてブラックユーモアを交えながらの情報発信には、現在の日本の自動車文化・メディアと比較してみると、真剣かつ大いに考えさせられる部分が多々あります。腹をかかえて笑いながら「やっぱりクルマの楽しさって、こういう感じなんだよな」という事を、いかに広く伝えていくか。ただ超絶に面白い自動車番組というだけでなく、純粋にジャーナリズムの在り方についても、個人的にはとても勉強となる番組だと思います。

もちろん、イギリス本国で放送されているので、基本は英語。しかしながらブリティッシュイングリッシュの聞き取りやすい発音のおかげで、番組の流れは十分に理解でき、とても楽しめると思います。個人的には英語の勉強の一貫にもなる、と自分に言い聞かせながら毎プログラムの放送が楽しみでなりません。見たことない、知らないというクルマ好きの方には、是非1度機会があればご覧ください。

ちなみに、シーズン13の1回目放送では、あの覆面白レーサーの通称「STIG」の正体暴露の模様も。中身は誰もが知る、あの超有名人物。もちろんこれも、この番組ならではのユーモアあふれる演出の1つだという事が、番組のラストで分かるという仕掛けになっています。

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今回は少し話の話題が逸れてしまいました。次のレポートなのですが、つい先週末に新型プリウスを1日しっかりテストしてきました。各グレードのインプレッション、そして今回行ったロングラン・燃費計測を含めて、近日中にまたこの場でレポートしたいと思います。よろしくお願いします。



<岩田 和馬>

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2009年06月16日

シロッコ/Q5/Eクラス

ここ1カ月のうちに、注目すべき欧州車が連続して登場しました。簡単ではありますが、いくつかピックアップして軽く紹介していきたいと思います。

・VWシロッコ
初代、2代目、そして実質的3代目だったコラード以来、久々復活のゴルフベースのスポーツクーペ。真面目で謙虚なクルマ造りがキモのVWながら、ニュービートルやこのシロッコなど、時よりとてもおもしろくて魅力的な遊び心あふれるプロダクトを行ってきます。

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ゴルフよりグッと低く、幅広く仕立てられたボディスタイルは迫力満点。大幅に拡大された結果、FFとしては珍しくリアのトレッドのほうが広くなっているボディ形状からくるフェンダーの盛り上がりや、薄いガラスウィンドーなど遊び心満点。

しかしながらリアシートも十分実用性は高く、バケット風のシートの雰囲気も○。かつてのトヨタWILLVSを思わせる閉鎖感がありますが、車のキャラクラーを考えればほとんど問題ないでしょう。唯一、グラスエリアの狭さに加え、大型のリアバケットシートによって、後方の死角が多い点には少し注意が必要です。

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インテリアは、ベースとなったゴルフ6と同じく、ゴルフ5の名残を強く残すもの。D型ステアリングや専用シフトノブで雰囲気は出そうとしているものの、ここが唯一シロッコの弱点かもしれません。無論、質感のほうは全く問題なし。

ラインナップは、1.4TSIと2.0TSI。1.4はお馴染みツインチャージャーの160ps仕様、2.0はGTIでお馴染みの直噴ターボ200ps仕様(とはいいつつ、エンジン自体は様々な部分が改良されています)。それに組み合わされるのは、前車に7速、後車は6速のDSG。タイヤは1.4が17インチ、2.0が18インチ。2.0には現時点で国内仕様のゴルフには未装着の、電子制御サスのDCCが装着されています。

そして価格。1.4は392万円、2.0は447万円。日本仕様にはカーナビ、バケットシート、キセノンヘッドライトなどフル装備なものの、ゴルフとの差は明確。日本仕様の新型ゴルフ6が不当に高い価格だとは思いません(むしろ内容を考えれば、コストパフォーマンスは十分以上。本命ともなるトレンドラインの登場も楽しみです。)が、このシロッコの価格設定には甚だ疑問。むしろ本国の価格と比較すれば、呆れるほどです。もちろん、日本仕様=最初からオプションフル装備仕様、というのは、輸入車ではよく見られる事ですが…。

ドイツ本国でのシロッコの扱いは「ゴルフとほぼ同じ価格の、エントリースポーツ」。もちろん、日本に合わせたラインナップ展開をしていく必要性があるのは分かりますし、こういったブランド性の転換を積極的に行っていけるところに、VWの勢いと強みも感じます。

しかし、VGJの勘違いマーケティングによって、オプションてんこ盛り状態が標準状態のハイプライスで登場し、一気に存在感を失ってしまったイオスの悲劇をもう忘れたのでしょうか。魅力的な1台だけに、アウディTTの競合してしまうような価格設定で、自らの存在価値を下げてしまわないか心配です。

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VWから注目のもう1台「ブルーエモーションスポーツ」。ジュネーブで公開されたコンセプトカーで、直噴ディーゼルをミッドにマウントし、DSGを組み合わせた次世代エコスポーツ。先日新たにいくつかの画像が公開され、どうやらVWは本気なようです。是非市販化を期待したい1台。

・アウディQ5

注目を集めるプレミアムSUVであるアウディQ7の弟分、Q5が登場しました。実際Q7は近くで見ると驚くほど巨大で、日本で扱うにはさすがに厳しいものがありましたが、今度のQ5は1900mmという全幅さえ除けば、日本でもどうにかなりそうなサイズです。本音を言うのであれば、もう1回りコンパクトならさらにいいのですが、そうすると今度はVWティグアンとバッティングしてしまうので難しいところ。ちなみにこのQ5はA4がベースであり、ティグアンとの関係性は全くありません。

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ワッペングリル&LEDポジションライトのフロントマスクは、依然厚化粧気味で好みが分かれそうなところではありますが、A4から譲り受けるオーバーハングの短さがプロポーションを際立たせており、全体の雰囲気とまとまりはなかなか。インテリアのキッチリとした質感はアウディらしいクオリティの高さで文句なく、ラゲッジスペースは奥行きが若干短く感じられるものの、高さ方向のゆとりは十分で全く問題ありません。

エンジンは先日A4・A5にも搭載された2.0Lターボと、3.2LのV6。A4・A5とは違い、2.0だけでなく3.2の方にも縦置き用Sトロニックが組み合わされています。もちろん、両方とも前後駆動力比率40:60のクアトロシステムを採用。

価格は2.0Tクアトロが569万円、3.2クアトロが660万円。A4のアバントがそれぞれ513万円、663万円。3.2で比べるとQ5とA4アバントの価格差が逆転しています。これならA4アバントのユーザーも、全幅さえ気にならなければ、Q5へと多く流れてきそうです。

ライバルはメルセデスGLKに、BMWX3。ただ無骨で洗練さに欠けスリーポインテッドを外せば韓国車と間違えそうなスタイルで、左ハンドルしかないGLKに比べれば、Q5のアドバンテージは明確。近日登場予定のボルボXC60が、唯一マトモに競合しそうな1台です。サイズも価格もジャストながら、もう少し高級感が欲しい、またはDSG(Sトロニック)が欲しい、と思っているVWティグアンを買おうか悩んでいるユーザーの方も、気になる存在になってくるでしょう。

・メルセデスベンツEクラス

ゴルフに続く今年のドイツ勢の大物の1台、新型のEクラスが登場しました。スタイリングは昨今のメルセデスのデザイントレンドを持ち込みつつ、方向性も変更。丸目を捨て、角型の4灯となり、スポーティさよりもラグジュアリー性をより醸し出す流れへと変更を受けたようです。

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個人的には、最初に見た時より少し慣れたものの、スタイリングに関してはイマイチな印象は拭えません。顔はどうしてもマーク2ブリッドを思い出しますし、ルーフラインが伸びた事で、W211のエレガントさに比べれば少し無骨さが目立つ印象。その分、リアシートの居住性を中心として、ある意味W124時代の端正なメルセデス像が戻ってきたと感じられる方もいるかもしれません。

スタイルについてはW210登場当初の丸目もかなり違和感があったので、マイナーチェンジや次期モデルなどが出ていくことで次第に慣れていくかもしれません。また、そういった強引とも言えるトレンドの流れを作り出してしまいかねないというのも、ある意味メルセデスのブランドの強さの1つとも言えるでしょう。

ボディサイズは全長・全幅が若干拡大。特に1855mmの全幅は、国内でのオーナーカーとしてはギリギリのサイズでしょう。FRならではの特権で最小回転半径が抑えられているのがせめてもの救い。スクエアなボディデザインや、20mm伸ばされたホイールベースによって、居住性は若干拡大傾向になっています。

インテリアでの注目は、シフトノブがなくなったこと。SやMLのように、ステアリングコラムへ小さくレバーで配置されています。BMW7シリーズがいち早く採用したものの、こちらは新型でコンベンショナルな位置へと逆戻り。しかしメルセデスは、このシフト位置をどんどん他車種にも広げていくようです。また、ナビシステムの位置がようやく現代的な場所へと移動されたのは歓迎したいと思います。

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依然このクラス・価格帯としてはインテリアの質感はもう一息という印象ですが、W211時代からすれば随分とよくなりました。またインテリアはもちろん、外装のLEDライトやAMGパッケージのマフラーと一体型エアロなど、ところどころアウディやレクサスの他メーカーのトレンドを受け入れている点も、目につくところです。

メルセデスの中でも一番の生産メイン車種だけであって、新エンジンや足回り、安全装備の充実には目を見張るばかり。先代W211ではブレーキバイワイヤ―システムのSBCをSLに続いて搭載したものの、モデル途中でリコール問題が発生。トヨタはしっかりとモノにしたものの、メルセデスは潔くこの分野から身を引きました。

そういった出来事もあり、今回のW212を開発するにあたってテストに費やされた走行距離は、約3600万キロ。これは昨今の新型車と比較すると圧倒的であり、同じメルセデスで比較しても、この規模は異例。コンピュータ技術が発展しながらも、こういった人間の感性でしかチューニングできない領域のセッティングも含めて、相当煮詰めて開発が進められたようです。

エンジンは、3Lと3.5LのV6、そして5.5LのV8。いずれも自慢の7Gトロニックの組み合わせ。V8モデルにはエアサスが装着されるのはW211と同じ。ご自慢のブルーテックディーゼルや63AMGもいずれ追加されることでしょう。

注目すべきは、おそらくそれとほぼ同時期に上陸するであろう1.8L直噴ターボモデル。メルセデスといえばCクラスでもお馴染みのコンプレッサー、つまりスーパーチャージャーを採用してきましたが、Eクラスからは過給機をターボに変更。排気量ダウン+過給機で性能維持・燃費性能改善という流れは、ついにEクラスまでやってきました。

排気量がそのまま車格・ヒエラルキーにつながる国内では、1.8L4気筒のEクラス…ともなると少し抵抗あるユーザーが多い事が予想できるので、やはりおそらく当分はE300〜350が結局は売り上げの中心になるでしょう。導入予定と目される204ps仕様のE250が、7速ではなく5速ATというのも少し気になる点。しかし、このような自らが築き上げてきたヒエラルキーを壊すようなドラスティックな改革を行う姿勢は、凄いの一言。気筒数で高級車の品格の差を問う時代は確実に終わりに近づいてきているのかもしれません。

誤解を恐れずに強引に単純に言うならば、クラウンにプリウスのパワートレーンを積むような、そんな感覚に近いかもしれません。さすがにそれは乱暴すぎるとしても、現行のクラウンクラスの高級車に2.0L以下の排気量のエンジンを搭載するなど、売れる売れないは別問題として、今現在の国内メーカーでは考えられません。

もともと必要十分以上のパワーをもつ3.5Lエンジンにモーターを組み合わせ、完全に過剰領域とも言える過大なパワーとバッテリー積載による重量増を手に入れて、それで「ハイブリッドです。エコです」なんて言っている場合ではありません。

ハイブリッド車で成功しているクルマは、今現在プリウスだけ。トヨタ・レクサスを含めてそれ以外はすべて付属価値とブランド欲求のため、と言っても過言ではありません。ハイブリッドなんて、そんなハリボテ・メカニズムを…と完全に舐めていた欧州メーカーは、最近になってようやく焦り本腰を入れ始めてきました。

ハイブリッドに関しては日本が依然断トツ優位なものの、ガソリンエンジン改革に関して欧州勢の勢いというのはそうとうなものです。こういった観点でも、絶対的なクルマの完成度だけではなく、新型Eクラスはフューチャーされるべき1台と言えるでしょう。

少し話は脱線しましたが、いずれ実際乗る機会がありましたら、またレポートにてこの場でインプレッションしてみたいと思います。


<岩田 和馬>
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2009年06月13日

新型アクセラ

マツダから、2代目となるアクセラが登場しました。初代アクセラはファミリアの後継車という世界戦略車のポジションを担って登場し、全世界で200万台という好調なセールスを記録。マツダ全体売り上げの3分の1を占める主力モデルとして、マツダの今後を背負う重要な1台となります。

まずはスタイリングから。先代モデルでは標準系とエアロ系、そして4ドアセダンと5ドアのスポーツでフロントマスクを分けていましたが、新型では国内仕様は基本的にすべて統一されました。

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フロントはバンパーから開口部を大きく開けて、グリルレス風の処理。ヘッドライトはグッとツリ上がって、非常にアグレッシブな顔付きとなっています。先代モデルはデザインに関しては評価が高かったですが、新型も積極的に攻めてきました。国際戦略車としての役目を考えれば、このスタイルはなかなかのチャレンジです。

昨今のプジョーのデザイントレンドに少し似ている点も感じますが、こういった実用的なセグメントのメイン車種でダイナミックな造形に挑戦したその姿勢は、昨今のマツダのデザインレベルの高さを伺える要因の1つ。好き嫌いはハッキリするかもしれませんが、個人的には若々しさと勢いが感じられ、かなり好印象。一目見て「アクセラだ!」とはっきり認識できるインパクトの強さは、文句なしに個性的です。

フロントフェンダーを強調するプレス処理は、RX−8から一連の流れを含むマツダの1つのアイデンティティ。北米市場ではメインとなるセダンは、先代と同じくトランクリッドが短くハイデッキな処理。基本アテンザを思わせる造形ですが、リアからの眺めは先代と比べるとこれでも随分精悍さを増しました。日本で主力となるスポーツのリアは、テールランプからバンパーへと流れるラインが印象的。テールがギョッと飛び出しているスポーツに関しては、こちらも少し好き嫌いが分かれるかもしれません。

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2.0LモデルはリアテールがLEDタイプに。これはアテンザにも言える事ですが、クリアテールの処理は、夕暮れ時などの後方視認性を考えると誉められたものではありません。ノーマルのテールではブレーキ部分はレッドとなるので、LEDテールもこのほうが良いのでは。また、ハイマウントはいまだにバルブ式タイプという「逆転現象」は、新型となっても継続しています。

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もう1つ気になるのは、フロントライト側面の蛍光オレンジのライン。北米仕様のサイドマーカーの役割?とも思いましたが、実際機能面では何の効果もないそうです。この歌舞伎役者の目つきのようなオレンジのラインにはかなり違和感を覚えましたが、これはハロゲン式ヘッドライトのみに施される処理。HIDライトを装着すると、この目立つ不自然なラインななくなるので、気になった方はオプションでHIDを選ぶとこの問題は解決されます。

またボディデザインが非常にボリュームたっぷりなので、先代以上に15インチサイズのタイヤでは視覚面で見劣りしてしまう印象。走りとのバランスもありますが、ここはやはり17〜18インチのほうが、新型アクセラのデザインをより際立たせてくれます。

ボディサイズは全長×全幅×全高×ホイールベースが、4490(セダン:4580)×1755×1465×2640。このセグメントではまだこれでもコンパクトな方とも言えますが、国際戦略車とは言え、これ以上のサイズアップは抑えて欲しいところです。

新型は全長がセダンで+100mm、スポーツで+90mm。しかしホイールベースは変わっていないので、このサイズアップは居住性向上というよりも、スタイリングやラゲッジスペースの拡大、また衝突安全性や歩行者保護の観点によるもののようです。

また国産であまり見られないボリュームたっぷりのバンパーは、使い勝手の観点から言えばメリットはありませんが、カッコよさという点で○。特にセダン・スポーツのリアバンパーの張り出しは迫力満点。バックの際には少し注意が必要なものの、最小回転半径はメイングレードで5.1mと優秀で、実際の取り回しはそう苦労しないでしょう。また純正ナビのバックカメラは、マツダのエンブレム内に上手く隠されています。

インテリアは、マツダらしい囲まれ感を重視したスポーティな雰囲気。チルト・テレスコステアリングとラチェット式シートリフターなども相まって、ポジションの自由度は非常に幅広く、ピシっとドラポジを決める事ができます。フロントシートは標準仕様でも座面部分でしっかりとサポート性を発揮させており、クッションも硬めで好ましいです。20S・20Eなどに採用されるスポーツシートだと、サイドサポートがさらに強調された作りとなっており、スポーティな印象はさらに強い。

また、小径でスッと手になじむステアリング、手を下ろしたそのまさにドンピシャの位置にある、先代から60mmも上方に配置され、FF車としては非常に短いシフトノブも、よりスポーティな雰囲気を演出してくれるポイント。反面、サイドブレーキの位置は少し遠い印象です。このあたり、基本左ハンドル設計で考えられている部分が垣間見えるところでしょうか。

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インパネ付近のデザインは基本的に先代からのイメージを継承。各部の質感は取り立てて高いとは言えないものの、価格を考えれば十分以上。クリーンかつヨーロピアンな仕上がりは、無理矢理デザインに凝って乱雑な印象を残す昨今のホンダ車などよりも、はるかに好感が持てます。

シンプルながらも大きめに配置されるエアコン〜オーディオ付近のスイッチ類の操作系も分かりやすく、インターフェイス面で大きな特徴はないものの、最近のマツダのスッキリとしたインパネの雰囲気は、このアクセラにも受け継がれています。

ただ、エアコン操作系のボタンスイッチとダイヤルの上下位置を逆にしたほうがより分かりやすかったのではという気も。また、新型は内装色が全てブラック基調。先代にあった明るいベージュ内装+ピアノブラックパネルというなかなか雰囲気のよかった組み合わせがあっただけに、今後は内装色のバリエーション増加にも期待したいところです。

先代からの分かりやすい変更点と1つとして挙げられるのが、3眼式から2眼式へと変更を受けたメーター。視認性は大変よく、上級グレードには背景照明:赤、針:白の配色となるブラックアウトメーターが装着されており、インテリアの1つの見せ場ともなっています。

そしてもう1つの注目が、エアコン表示モニターと並列して並べられた、インパネの一等地に装着されるマルチインフォメーションディスプレイ(MID)。ここでi−stopの停車時間や燃費、外気温、平均車速、メンテナンス、オーディオなどの様々な情報が表示する事が可能となっています。ディスプレイの切り替えはステアリングのスイッチにて任意で切り替え可能。純正ナビを装着していなくても、こういったアメニティを楽しめるようになっています。

また、純正は白黒のドット式画面なのですが、マツダスピードアクセラは4.1インチの大型液晶モニター仕様のMID仕様。当然実際の見やすさだけでなく、インテリアの見栄えの良さも段違いに液晶モニターの方が上。この液晶仕様のMIDはHIDヘッドライトとセットでオプション装着可能なので、特にi−stopが採用される2.0L車では、ぜひともチョイスしたい装備です。

前述したように、サイズアップ分は居住スペースにはほとんど使われている印象はなく、居住性については先代から大きな進化はありません。しかしリアシートのスペースは十分実用的。頭上高もスポーツでは十二分に確保されており、セダンでもほとんど気になりません。フロントシート下につま先がキチンと入り、フロアからのシートの高さも適切。当然、リアシート中央席にもヘッドレストと3点式シートベルトが装着されています。

ラゲッジスペースは、セダンの方はオーバーハング延長の効果で、容量が拡大されています。先代はマイナーチェンジでもラゲッジ拡大に余念がありませんでしたが、新型では相変わらずトランクリッドが短く開口部は狭めながらも、幾分広くなった印象。シートは分割で格納でき、その際フラットにはならず段差が残りますが、セダンというキャラクターを考えるとさほど大きな問題にはならないでしょう。

スポーツのほうは、スペースのスクエアさが印象的。やみくもに最大幅を稼ごうとせずに、スペース効率を優先する処理はかなり欧州車チックな仕上がりです。バンパーラインとラゲッジスペースの間に段差が残ってしまうのが少し残念ですが、スポーツの方ではシート格納時はほぼフラット。また、ラゲッジスペースを前後方向や上下方向に上手く仕分ける事ができるフレキシブルフロアボードは技アリ。使いこなすことができればスペースを有効に、普段スッキリとまとめることができそうです。

エンジンは、1.5Lと2.0L直噴、そして2.3L直噴ターボの3種類。それぞれにCVT、5速AT、7速CVTの組み合わせ。北米では2.5Lも用意されますが、日本仕様には設定されません。また、MTがターボのみの設定というのも少し残念な点です。

基本デミオと同じ共通ユニットが搭載される1.5L。ただ数値上のパワーも若干変更されており、アクセラ用に専用にセッティングされています。ポイントとしてはトランスミッションが先代の4速ATから、7速アクティブマチック付のCVTとなったこと。車重を考えると若干アンダーパワー感は否めませんが、新型はそれをCVTが上手く補ってくれそうです。

シフトは押してシフトダウン、引いてシフトアップのレーシングカー方式。高速道路などで、シフトダウンで加速をする…といったシチュエーションでは少し慣れが必要ですが、ワインディングなどでは逆に、慣れればこのマツダ・BMWが採用しているタイプのほうがしっくりときます。また、1.5Lは直噴エンジンではないため、i−stopは残念ながら装着されないものの、それでもモード燃費は2.0L以上。おそらく日本ではこの1.5Lが販売のメインとなるでしょう。

そして今回最大の注目なのが、2.0L直噴エンジン仕様に搭載されるi−stop。従来のようにスターターで再始動をかけるのではなく、シリンダー内へ燃料を吹きかけ爆発させる力でエンジンを再始動させるという、直噴エンジンならではのメリットを生かした新しいアイドルストップシステムです。個人的にはマツダスピードアクセラにも搭載して欲しかったところですが、ターボとの組み合わせ面などを考えると少し難しいのでしょうか?

直噴エンジンといえば、三菱が先駆けるものの先走りすぎて失敗、日産もホンダもすでに辞めてしまい、今残っているのはトヨタとマツダのみ。このi−stopは直噴エンジン搭載車なら比較的低コストで装着できるということもあり、マツダにはアクセラをきっかけに是非他車種への普及を進めていってもらいたいところです。

話が少し逸れましたが、アイドルストップをするためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。また、「アクセルを踏む事」ではなく「ブレーキを離す事」で再始動するので、そのあたり前回レポートでお伝えした、インサイトのアイドルストップの考えに近いもの。なお、このi−stop搭載車には、ボンネット内に縦・横にバッテリーが2個並べられて装着されています。

マツダが偉いのは、i−stop装着車用に専用グレードを設けたのではなく、2.0LFF全車に標準装着した点。せっかくの新機能を出し惜しみグレードにするパターンがよくありますが、今回のアクセラのこの姿勢には拍手!

この2.0Lに組み合わされるのは5速AT。こちらには1.5Lには装着されないステアリングシフトも装備されます。こちらも押してダウン、引いてアップという独自のロジックをBMWと同様に備えていますが、これに関しては一般的なパドルシフトの操作系のほうが、分かりやすさや取っ付きやすさは上。

BMWやMINIの場合もそうですが、確かにGの流れを考えると、減速方向→押してシフトダウン、加速方向→引いてシフトアップ、というシフトレバーでの変速ロジックと同じ考えでステアシフトのインターフェイスが考えられていますが、普通に考えて右がアップ、左がダウンのほうが操作のしやすさも含めて自然に馴染みやすいのでは。マツダ方式は片手でシフト操作できるというメリットがありますが、それを差し引いて考えても少し厳しいところです。

むやみなシフトアップ・ダウンを抑えるダイレクトシフトや、Dレンジ状態でもステアスイッチに反応するロジックは○ですが、そろそろこういったインターフェイスについてはメーカーが頑なに主張するだけでなく、素直に統一させた方がいいような気がします。せっかくの素晴らしく完成度の高いメカを、時代にそぐわないインターフェイスを採用してしまった事で損をしているポルシェのPDKが悪い見本。シフト側の+−方向の違いはクルマのキャラクターによって意見が分かれるかもしれませんが、ステア・パドルシフトについては、そろそろ周りと合わせて考える必要がありそうです。

本題に戻りまして、MSアクセラに搭載されるのは、2.3L直噴ターボ。FFながら264psという快足ホットハッチは、6速MTのみの設定。今の時代に男らしい割り切りの良さですが、営業サイドとしてはAT仕様も欲しいというのが正直なところのようです。

インプレッサSTIのA−Lineがなかなか販売好調な状況を見ても分かるように、若干ディチューンしてでも、MPV用の6速ATを搭載したモデルがあってもいいのでは。ボンネットエアインテーク、大型リアスポイラー、2本出しマフラー、18インチホイールを身にまとうそのアグレッシブさに、心奪われたものの、ATがないということで泣く泣く…というパターンは多いように思えます。

もちろん、MT仕様から手を抜けというわけではありません。1〜3速にトリプル、4速にダブルコーンシンクロを備えた6速MTは、ギア比も先代MSアクセラからファイナルを変えただけでなく、各ギア比それぞれも新型用となっている気合いの入りよう。

またFFでこのハイパワーを受け止めるべく、サスペンションは当然専用セッティング。フロント大径ブレーキローター、トルセン式LSDを装備し、タイヤは225幅40扁平の18インチ。ちなみに、この18インチのアルミホイールは、RX−8のタイプSに装着されているものと同じデザインのもの。

インテリアもMS専用の差別化部分が多数。メーターは専用280km/hスケール仕様で、ノーマルではシフトポジションを表示するセンター部分に、MS仕様はブースト計を設置。ドアトリム・インパネガーニッシュには赤ドット仕様の専用品で、同じ柄があしらわれるシートは、メモリー機能を備えたハーフレザー仕上げのパワーシート。他にも自動防眩ルームミラーなど、単なるじゃじゃ馬ホットハッチではない、プレミアムを感じさせる仕立てとなっているのが、今回の新型MSアクセラの特徴となっています。


そして、最後に価格。全てオーディオレス状態が標準となるものの、これだけの内容で、ほぼフル装備の15Cが166万円、20Cが189万円、セダンの20Eが205万円、スポーツの20Sが214万円、MSアクセラが267.8万円。

20Cの価格は、明らかにインサイト・プリウスを意識したもの。当然この価格設定には裏があり、15Cで標準装着されるレインセンサー付ワイパー、オートライトシステムが20Cではオプション扱い。また、MSや20S・20Eに標準、15Cでオプションとなるサイドエアバッグが、20Cではオプションでさえ装着できません。

また、DSCは20Cに標準で装着されるのに、15Cではオプション設定なしと、少し首を傾げざるを得ない不可解な点も見られるので、購入を検討の際には是非注意して装備内容を見比べる必要がありそうです。もっとも、デミオ・ビアンテでは設定すらされていなかったDSCが、アクセラでは20C以上に標準装着されだたけでも、ここはよしと考えるべきでしょうか。

また、相変わらずの「抱き合わせメーカーオプション」の制度も残っていますが、今回は「セットオプション」と「単独オプション」をそれぞれに組み合わせできるようになっており、選択肢の自由度は若干増した印象です。

またセットオプションは内容を考えると結構値打ちのあるものが多く、例えば20CコンフォートPは先述したレインセンサーワイパー、オートライト、そしてプライバシーガラスがついて約36.000円、20SツーリングコンフォートPは17インチタイア+アルミ、HIDライト、カラー液晶仕様のMIDがセットで約90.000円など、価格に対する装備の充実度は高くなっています。

そして、忘れてはいけないのが先進アクティブセーフィティ装備。ハードブレーキング時にハザードを高速点滅させるESSは全車標準、ドアミラーの死角内にいるクルマをリアバンパーから出すレーダーで感知、ウインカー操作と連動してミラーに警告表示を出すリアビークルモニタリングシステムなど、このセグメントではまだあまり見かけない装備も見られます。これがマツダの世界戦略車たる事実を感じ取れる点でしょうか。

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世間は現在、ハイブリッド旋風の真っ只中。プリウス205万円ショックをきっかけに自動車業界は大いなる脅威に見舞われています。もちろん、車を購入する要素として「価格」や「燃費」は重要な項目。ハイブリッドがこの価格で出てくるとなると、各セグメントのコンベンショナルな純ガソリンエンジンを搭載するモデルは、相当な危機感をもって今後望まなければいけない事実から逃げる事はできません。

しかし、クルマを買う要素が「価格」と「燃費」に全て左右されるというわけではありません。エクステリア、インテリア、走り、など、自動車にはその他の魅力がたくさんあります。

そう思うと、インサイトやプリウスも魅力的と思いつつ、どちらに惹かれるかと言われれば、まだまだ個人的にはやはり新型アクセラに心が傾きます。燃費の差や絶対的価格差を考えると厳しい状況ではありますが、クルマの魅力は何度も言うようにそれだけに縛られるものではありません。

魅力的なエクステリアに、今できる最大限の「エコ」であるi−stopを搭載、内容やボリュームを考えれば、価格面でも十分に頑張っているのでは。ハイブリッドまでとは言わないものの減税も受けられ、燃費も同クラスのガソリンエンジン車からすれば大変優秀。先代の事を考えれば、走りの「FUN」の部分に関しても、新型は相当期待ができそうです。

エコが声高に叫ばれる中、「エコ・スポーツ」とあくまでマツダらしさを存分に発揮する事をメインに登場した新型アクセラ。マツダがマツダらしく、今の時代の流れを読みそれに応えつつ、自社の魅力をたっぷりと詰め込んだ、とても魅力的な1台に仕上がっていると感じました。確かにハイブリッドは魅力的。しかし、それだけじゃ面白くない!そんな勢いが、今回の新型アクセラから大変感じる事ができました。




<レポート:岩田 和馬>
posted by 親方 at 07:59| Comment(6) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月03日

新型レガシィ試乗&結論

試乗記の評価『優』(国沢光宏)
・ドアミラーの形状の違いまでよく見切ったと思う。私もドアミラーを見て「レガシィじゃないな」と思った次第。

前回の新型レガシィのレポートについて、皆様から大変多くのコメントを頂きました。改めてありがとうございます。ご賛同いただけたり、そうでなかったり、厳しい意見もたくさん頂きました。全てに目を通し、これからもまだまださらなる精進が必要な事も自覚することができました。コメント頂けた皆様に感謝の一言です。またこれからも、改めてよろしくお願い致します。

前回酷評気味となった新型レガシィですが、今回はその試乗レポートです。試乗したのは、B4の『2.5i・Sパッケージ』とツーリングワゴンの『2.5GT・Lパッケージ』。レガシィには他にも16インチノーマルサス仕様やアウトバックもありますが、残念ながらそちらは現時点では試せていません。

NAのノーマルサスやターボのビルシュタインサス、またB4・ツーリングワゴンでどのサスペンション、どのタイアがベストマッチなのか?を詳しくお伝えできない点、そして長距離ではなく、ごくごく短時間短距離の試乗でしか試せなかったので、今回は簡易的なレポートになりますことを、予めご了承ください。

最初に乗ったのは、B4の2.5i・Sパッケージ。NAの2.5L+CVTに、18インチ&ビルシュタインサスペンションを組み合わせたモデルです。グリップ式に変更となったドアハンドルは○。ヒップポイントが上がったおかげで、乗り降りのし易さは向上しました。

従来のレガシィは低めのアイポイントがセールスポイントの1つでしたが、すでに乗りこむ段階で「これは全く違うクルマなんだ」という印象を強くします。もっとも、実際にドライバーズシートに収まれば、極端に頭だけが飛びぬけているような印象はなく、自然にポジションを取ることができます。

シートサイズもたっぷりとしているのですが、クッションが柔らかめ。個人的にはもう少しタイトさが出たとしても、サポート性を上げて欲しかったところ。もちろん、先代のシートもあまりいいものとは言えませんでしたが、このあたりもキャラクターの変貌を表しているのでしょう。

また、視認性は十分なものの、自発光式メーターでなくなったのは少し残念な点。メーターの針も以前のようにレッドのほうが、パッと見た時の把握性がより良いのでは。水温計が廃止され、代わりに燃費系が追加。メーターの左側に配置されているのですが、これは以前のようにスピードメーター内の下部配置のほうがよかったかもしれません。

もう1つ、運転する際に気付くのが、巨大なサイドミラー。見た目的には少々無骨すぎて、新型レガシィの不格好さを強める1つのファクターになってしまっていますが、視認性に関しては○。最近ではレクサスISのドアミラーの大きさも印象的でしたが、こちらはさらに上下方向に広い印象。

もちろん、現行BMW3シリーズのように、少し危険を感じるほど小さなドアミラーを採用してしまうよりは、多少見た目を損なっていても、実用性を優先したほうがいいとは思います。もっとも、ミラーの形を多少スマートに改善したところで、新型レガシィのデザインが良くなるというレベルのお話ではありませんが。

動き出しでの注目は、今回新たに採用された電気式パーキングブレーキ。発進時の際には操作不要で自動解除してくれるので、少し慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、一度要領を得れば大変便利な機能です。むしろ、この方式に慣れてしまえば、他の車を運転する際に煩わしさを感じて仕方ない、となるかもしれません。これによって、センターコンソール内の収納スペースは一気に拡大しています。

確かに、収納スペースが拡大した事については歓迎です。しかし、全幅の拡大によって、カップホルダーが横方向の並列配置になった事を、開発の方がことさらアピールしているようですが、個人的にはそこまで言うほど重要な事とは思えません。2つ分用意されていれば、それで十分。全幅拡大のメリットをこういった場面で強調されても、正直どっちでもいい事ではあります。

また、このパーキングスイッチ位置が右側という点に、やはり強い違和感を覚えました。理由として、他の同乗者からのイタズラ防止、という説明を受けましたが、それを言い始めればセンターコンソール付近に走行関係のスイッチ類は何もつけられなくなります。

エンジンボタンが右側なのでその動作と同じようにすればいいのでしょうが、やはり左手で一連の動作ができるようにするべきなのでは。スイッチの場所も奥のほうで微妙に分かりにくく、慣れるまではブラインドタッチがしづらそうな点も気になります。せっかくの便利な機能ですが、インターフェイスの点で少し損をしているように感じました。

インテリアについて、他には以前お伝えした通り。視覚面での質感はなかなかなものの、ソフトパッドが使われている部分がほとんどなく、触れてしまうと質感は「並」。今度のレガシィとしてのクラスアップを考えれば、少し厳しいライン、といったところでしょうか。このあたり、追々に新型の立ち位置の難しさを表していくポイントの1つとなります。

本題に戻ってエンジンスタート。まず実感するのは、音振性の向上。クレードルフレームの採用が大きく効いているのか、アイドリング時の静寂さと振動の少なさは明らかに向上しています。水平対向エンジンの独特のビート感も、いまや昔。もっとも、例のドコドコ音については、先代から「らしさ」は失われてはいますが。それは別として、このあたりの動きだしからの滑らかさと高級感は、完全にプレミアムセグメントの領域を彷彿とさせます。

好印象だったのは、初期の加速でのスロットルレスポンスがジェントルになった事。もちろんこれは、SI−DRIVEがデフォルトで「I」状態になったのも関係しているでしょう。むやみにスロットル早開きで唐突に発進時の勢いだけを強調しない、大人なセッティングは○。かったるさを感じる人もいるかもしれませんが、しっかり踏めばそれなりの反応は示してくれます。

縦置きエンジンのAWD車では初となるチェーン式のCVTですが、動き出しはいたってスムーズ。ギクシャク感はほとんどありません。エンジンは基本的に、先代の2.5Lと同じ印象。パワー、トルクともに平均値。しかしながら初速からしっかりとした加速感が得られるのは、やはりCVTの効果が大。アクセルにしっかりとダイレクトに反応し、CVTの違和感はほとんどありません。

これならCVT嫌いな方でも、それほど拒絶反応はでないでしょう。エンジンブレーキの感覚の違いや、フル加速時に高回転をキープしてしまう特性は、パドルでの6速マニュアル操作を上手く使っていけば問題なし。Dレンジでもパドル操作を優先させ反応するロジックは○。ただ、運転中は少しパドルの形状が小さく感じました。

CVTが、限られたエンジンパワーを最大限に使ってくれている印象です。絶対的なパワー伝達効率ではATよりも劣るCVTですが、特に「S♯」での俊敏なレスポンスとパワー感はなかなか。CVT+SI−DRIVEによって、NAモデルの存在感は大きく増したと言っていいでしょう。NA車でのSI−DRIVEは初めてだったのですが、1つ1つのモードの差は少し分かりづらいものの、「I」と「S♯」での違いはハッキリと体感できます。

人によってはリアルトロニックCVTの「ヒューン」という音が耳につくかもしれません。また、耐久性うんぬんに関して、まだ少し初物の不安があるのも事実。アクセルを多めに開けている状態からパッと足を戻した時に、エンジン回転をキープするのか落とすのか、少し制御が迷う仕草もみられました。しかし、このあたりは「重箱の隅を…」の領域の話。普通の人が普通に乗れば、違和感はほとんどないと思われます。

足周りは、18インチ+ビルシュタインダンパーのSパッケージ。タイアはBSポテンザRE050Aを装着していました。いわゆる「A型」ということで、先代登場時のA型スペックBの強烈な乗り味に慄いたのは記憶に新しいところですが、今回の新型はそういった印象はさほどありません。

まだほぼ新車状態だったので、低速でのアタリがまたついていない感じもあり、基本「硬め」のセッティングではあります。しかし、速度を上げていくにつれてピタっと路面に対してフラットな姿勢を保っていき、ステアリングのフィールや座り、落ち着き感も問題なし。NAモデルだと18インチのタイアのキャパシティでは少し持て余し気味な印象もありますが、これなら見た目の良さでSパッケージを選んでもほとんど問題ないでしょう。

少しペースを上げていっても、バネ下の重さをほとんど感じず。またこのサイズを履きながらもロードノイズは比較的抑えられており、ここでもレガシィの車格感の向上を実感。また特筆すべきはリアの落ち着き感で、このロードホールディングの良さとリアのスタビリディの高さは、スバルAWDの真骨頂。

天候など悪条件になればなるほど、その効果を実感できることでしょう。マルチリンクからダブルウィッシュボーンとなり、リアサスのキャパシティが向上している事がよく伺えます。また、速度を上げていくほど、乗り味自体もむしろ向上していくように感じられるこの感覚は、ビル足ならでは。

ブレーキについては、従来からのレガシィ乗りの方からすれば、少し違いを感じるかもしれません。いままでが踏力に対して制動力が比例し、奥に従ってリニアに効くタイプだったのが、新型では踏みはじめからの制動力の立ち上がりが素早く、よりブレーキの効きを強調させるセッティング。

人によっては少しコントロールしにくいと感じる人もいるかもしれませんが、歴代レガシィのウィークポイントだった、どこかブレーキが頼りないという印象はなくなりました。ノーズダイブも極端に大きくはないものの、新型のブレーキは「とても良く効いていい」「唐突に効きすぎる」と意見が分かれるかもしれません。

続いて試乗したのは、ツーリングワゴンの2.5GT・Lパッケージ。ターボエンジン+17インチのコンビです。こちらはエンジンをかけた瞬間から、さきほどのNAとの違いを実感。このあたりはツーリングワゴンとB4、またLパッケージとSパッケージの違いもあるのではっきりと断言はできませんが、感覚的には同じ排気量同じ4気筒ながら、ターボモデルのほうがさらに高級感が感じられました。

そう思う原因は、主にステアリングへの振動の違いの低周波ノイズ。もう1度NAのB4に乗り込みアイドリング状態で比較すると、NAだけに乗っていれば全く気にはならないのですが、直近ですぐにターボモデルと比較すると、その差は僅かながら、感じ取る事ができます。これはCVTとATの違いによるものなのか、ボディの違いによるものなのか、サスの違いによるものなのか、はたまた個体差か…。現時点ではハッキリと特定はできないのですが、ターボモデルはさらにもう半回り高級さと静粛性の高さを実感できた事をお伝えしておきます。

走りだしてみると、タウンユースでの速度域での扱いやすさを実感。先ほどのNAモデルと同じく発進時のスロットルレスポンスはジェントルながら、しっかりとアクセルに対する反応のツキの良さ。2.0Lターボ時では、どうしても極低速時の過給の立ち上がりに気を遣う場面がありましたが、新型は排気量を生かして、アクセルに対する反応が実にナチュラル。

そこからアクセルを多めに開けていくと、その力強さがキレイにスロットルに比例してスムーズに加速していきます。街中での絶対的パワー感は、思ったよりもNAとの違いを感じません。もちろん実際の速度の伸びは大きく違うのは当然ですが、そう感じてしまうほど今度の2.5Lターボは大人な仕上がり。新型の全体のキャラクターにとてもマッチしています。

今回NA+CVTの仕上がりの良さも印象的ですが、やはり魅力的なのは個人的にはターボモデル。ターボとは思えない素直なトルクの立ち上がりがもたらす、3.0L超級エンジンのようなフィーリング面の違いのほうが、絶対的な加速感の違いよりも、むしろNAとの差を感じました。NAのCVTの仕上がりの良さも印象的ながら、5速ATのスムーズさも上々。

反面、SI−DRIVEを「S♯」にしても、レスポンスは良くなるものの、加速自体の刺激は控え目。ターボらしいメリハリや高回転での伸び、スポーティさなどを期待してしまうと大きく裏切られますが、それらを意識しなければ、実に高級感のある素晴らしいパワートレーンです。

その印象をさらに強めるのは、足周り。さすがワゴンボディのノウハウについては手慣れているもので、路面の舗装状態が悪い所でのロードノイズの侵入量の違いなどを除ければ、街乗り領域でB4・ツーリングワゴンの違いはほとんど分かりません。おそらくサーキットレベルまで追い込まなければ、ほとんど実感できないでしょう。

それよりも違いを感じたのが、先ほど乗ったB4に対する、ノーマルサス+17インチサスの滑らかさ。ビルシュタインサス+18インチでも個人的にさほど大きな不満は感じませんでしたが、そのSパッケージからこの17インチ仕様に乗り換えると、こちらの足周りの仕上がりの良さはさらに上。Sパッケージで感じた低速での硬さはほとんどなく、荒れた路面でもスムーズにしっかりとストロークし、履きこなし感はさらに上。

かといってペースを少し上げても、舵に対しての反応も実にしっかりしており、スポーティさが削がれる印象はありません。確かに見た目の部分では18インチを履くSパッケージ有利なものの、シャシーとのマッチングと走り・乗り心地のバランスを考えれば、現時点でのベストは17インチ+ノーマルサスだと感じました。

もう1つ注目なのが、ターボ勢には初登場となる電動パワステ。NAモデルではすでに他のスバル車でも採用されていますが、新型からは関係なくすべて電動パワステに統一されています。直進時からわずかに舵を入れた際に、若干クルマ自体のイナーシャの出方とステア舵角との間にズレを感じる場面もありましたが、ステアリングへのキックバックの少なさは17・18インチともに好印象。

燃費などの事も考慮すれば当然の採用ではありますが、フィーリング面でもう少し熟成が進めば、さらに全体の完成度が増すと思います。適度にクイックになったステアリングギアレシオのバランスの良さは、○。

実際に乗ってみると、クルマ自体の走りの実力の高さはさすが。今回様々なコンポーネンツが新しくなったことで、少し熟成不足な点も散見できましたが、基本的なポテンシャルの高さについて、その完成度の高さ、そしてグランドツーリングカーとしての実力は、十分以上でしょう。

しかし、そのポテンシャルの高さを実感しつつも、やはり個人的には、どこか心に今回の新型についての疑問符が残り続けます。いい車であることは間違いありません。スバル自身が目指した新しいレガシィのコンセプトは、おそらくしっかりと目標達成できていることでしょう。

問題なのは、そこに分かりやすい個性が存在せず、ただの「優等生クルマ」になった点。「クルマ」としての魅力は向上したものの、「レガシィ」としての魅力が感じられないのです。確かに、このサイズの水平対向+AWDの実用セダン・ワゴンとしてのコストパフォーマンスは抜群ですし、いままでスバルが他の車に劣っていた部分について、その多くが改善され、一部大きく凌駕する部分もあります。悪天候での走りの良さには、真髄はしっかりと染みついているのでしょう。

しかしそれは、個性を保ったまま進化したのではなく、存在そのものの変化。しかもそれはドラスティックなものではなく、まだまだ既存の独自性を見す見す手放せない、未練たらたらのイノベーションなのです。

つまり、いいクルマになったことは間違いないものの、これならあえてレガシィを選ばなくてもいい、積極的に選ぶ理由がどうも希薄になったような、そんな中途半端な印象を感じずにはいられません。

もちろん、それがさらなる多くのユーザーを獲得するために、スバルが今度のレガシィに対して込められたコンセプトならば、この新型は大成功と言っていいでしょう。しかしながら、どうしても開発陣が口で言うコンセプトと、実際に仕上がった車との間に、大きな隔たりを感じます。

今回日本のユーザーが求めるレガシィ像、今まで築き上げてきた個性とフィロソフィーを多く削ぎ落しながら、「あくまでもレガシィらしさを強調した」と胸を張る開発陣。言葉ではイノベーションを唱えながら、レガシィの名前に対してからの依存から、まだまだ脱却できていない証拠です。

また、決してプレミアムブランドになろうとは思っていないという開発陣の思惑と、しきりにマークXやスカイラインの名前を出し、高級感を前面に打ち出しつつ、どうやって今度のレガシィを売っていこうか困惑気味なディーラー側の思惑との不一致。

良い「製品」であることには間違いないものの、それを買おうと思わせる、手に入れようと思わせる「商品」としての魅力の欠如。もちろんクルマの最大の魅力である「走り」の部分についての魅力が損なわれていれば元も子もないものの、ただそれが良ければいいという問題でもありません。

変わろうとしていながら、実は変わっていない。変えていないと言いながら、すでに捨て去っている。変化への違和感ではなく、変化の内容についての違和感。イノベーションでもなんでもない。変わろうとしつつ、どこかで捨てきれない部分も多くある、そんな中途半端さ、思い切りのなさ、新たな提案性のなさ、これが今回の新型レガシィの最大の問題なのでは。それは、走りに関しても、エクステリアやインテリアに関しても、サイズに関しても、コンセプトに関しても。

今回新型を見て乗って、変える事への異議はなくなりました。スバルがそう判断したのです。時代を読みつつ、変えていく事も必要だと感じます。

しかし、変えるなら変えるで、そこに真剣さと本気さを、さらに強く出していかなければならないのでは。


もちろん、アメリカ市場が無視できないマーケットである事は周知の事実。レガシィがコケればスバルもコケる、そんなメーカーの大黒柱としての責務を担っているレガシィの立場を考えれば、ある程度致し方ないのかもしれません。これでアメリカで新型がヒットを飛ばせば、それはそれで万々歳。メーカーとしてもひとまず安泰でしょう。

しかし、いくら日本のマーケットが縮小気味だからといっても、多くのスバルのディーラー、そこに勤める従業員の存在から目をそらす事もできません。レガシィがこのような潔さを感じない上級化に踏み切り、軽自動車からは撤退、ダイハツからのOEM化。デックスをのぞき、インプレッサもフォレスターも3ナンバー。スバルがこれから日本で置かれる立場は、これまでにない、ある意味「異常事態」とも言えます。

今後スバルがどうなるか、それは今回のレガシィにかかっている、と言っても過言ではありません。果たしてどうなるのか。小さな極東の島国に住む人間の声が、今後いずれ至らぬ心配だったと笑い話で流して済まされたならば、それは結果的に全く問題ないのではありますが…。


レポート:岩田 和馬

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2009年05月22日

新型レガシィ詳細レビュー

5代目となった新型レガシィがデビューしました。デビューは5月20日、しかしこの日は水曜日でスバルのディーラーは全国的にお休み。ということで、すでに先週末から展示してしたディーラーも多かったようです。

NYショー直前、ある意味「衝撃的」な形で我々の前に披露された新型レガシィ。そこで公開された北米仕様とは若干細部が異なる日本専用スペック・デザインでの登場となりました。当初の評判は賛否で言うと主に「否」。明らかに不格好なエクステリアには唖然としたとしか言いようがありませんでした。

そして、今回正式に日本での発売。すでに最初が最初だけに「思っていたより悪くなかった」「実際見てみるとなかなかカッコいい」と言うような意見を持たれた方がいるかもしれません。
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しかし、個人的には、実際に近くで細かく見た上でも、はっきり言って最初の印象はほとんど変わりません。もともとスバルのデザイン力のなさは理解していたつもりなのですが、今回のこの新型レガシィを見て、その事を頭で分かっていたようで、実は全然まだまだ理解していない事に気付きました。

レガシィのポリシーや立ち位置、拡大されたボディサイズなどの事などを考えずとも、これを見て「カッコイイ」などとは、残念ながら一切一瞬たりとも思いませんでした。

フロントマスクは、切れ長なヘッドライトが特徴的。先代インプレッサ登場時にように、ライト形状だけに特徴を与えて、ボディラインとの調合や一体感は求めていないようです。ブラックベゼル調のヘッドライトが装着されるSパッケージは、精悍さが増し凛々しい顔付きとなるので若干マシ。しかし、このセグメントに求められる上質感やプレミアム感が圧倒的に乏しい事に大きな変わりはありません。

全幅1780mmという日本専用サイズが与えられたのが、唯一まだレガシィが日本市場に気を使っている証拠とも言えるでしょうか。しかしながら、ボディサイズ拡大はそのほとんどが居住スペース拡大に充てられたようで、サイドのボディラインはまさに「ぺっちゃんこ」。

ホイールアーチのフェンダー形状でなんとかごまかそうとはしていますが、実際に見ると見事なほどの断崖絶壁。かつての税制改革前の、5ナンバーサイズでいかに大きくクルマを見せるかが勝負となっていた80年代後半の角型セダンのようです。よくなったなと思えるのは、フラップ式からグリップ式へとようやく変更されたドアグリップと、サッシュドアの採用くらい。
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リアデザインも、全くどこのクルマが分からない無国籍風デザイン。ツーリングワゴン・アウトバックは、先代の日産ADバンにソックリで、まさに商用車のようだった貧弱さからは解放されたものの、B4の出来にいたっては絶句。
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せっかくのヨーロピアンなダックテール風の処理は影を潜め、このデザインにターボ車のツインマフラーがさらに皮肉さを強調しています。思えばインプレッサアネシスもまるで韓国車のようなデザインでしたが、今度のB4は韓国車のそれ以下。まだまだ「パクリ」が横行する中国車のほうがマシかもしれません。

もうすこしスポーティさというか、プレミアム感というか、どうにか造形をキチンと考える人がいなかったのでしょうか。唯一褒められると言えば、まだキチンとリアワイパーを設定していることくらい。昨今はセダンで装着できるクルマはほとんどなくなってきているので(個人的には雨の日の必需だと思います)、このあたりはスバルの良心が感じられます。

全長はツーリングワゴン/B4で95mm、アウトバックで45mm延長。全幅の拡大も昨今の情勢を考えれば十分許容範囲でしょう。問題は全高。B4で先代比+80mmの1505mm、ツーリングワゴンは+65mmの1535mm。背のの高さが、新型レガシィのプロポーションの鈍重ささを決定付けています。

先代までツーリングワゴンはツインルーフなどを採用し、低いプロポーションと室内空間拡大のバランスよくとろうとしていた努力が垣間見ることができましたが、そのような工夫一切なし。1535mmという全高は、いまや3列シートミニバンのオデッセイとほとんど変わらない数値。室内スペースを広げたい→やみくもにボディサイズを拡大する、という安直的すぎる考えには心底失望を覚えます。

プロポーションで言えば、B4は最悪かもしれません。現在全高が1500mmを超える日本のセダンは、フーガくらい。かつてはトヨタビスタがアップライトなデザインを採用して大失敗しましたが、今度のB4にもそれと同じ雰囲気を感じます。この車をスポーツセダンと思うか? と聞かれれば、答えは完全にNO。実用セダンとして見てもこんな鈍重な見た目の車に魅力など感じません。

見慣れてくるとカッコ良くなるかも、と精一杯考えてもみましたが、このプロポーションはマイナーチェンジなどでは改善できない諸悪の根源。もう現行モデルのスタイルは諦めた方がいいのかもしれません。ツーリングワゴン/B4ともにテレビCMは凝った演出で非常にカッコいいのですが、肝心のテレビ画面上に映るクルマがこれでは、まさに本末転倒です。

随分と個人的に厳しくなってしまいましたが、自分は猛烈なスバリストでもなければ、レガシィの大ファンというわけでもありません。一応公平なクルマ好きとして、このスタイリングはレガシィらしくないどうこうというより、純粋な1台のクルマとしてスタイルのレベルの低さが露呈していると感じます。

よく「トヨタ車のようだ」「トヨタと提携したからこうなった」とも言われますが、今のトヨタラインナップの中でもこれほどガッカリさせられるデザインの車はありませんし、仮に提携したから結果このレガシィの形となったのなら、それはスバル自身の問題。

ましてや損することに人一倍敏感なトヨタですから、せっかくのブランド性を持つクルマをこんなスタイルで出せとは言わないでしょう。ボディサイズの拡大も致し方なし、コンセプトやターゲットユーザーを変えるとスバルが主張するならそれも渋々納得。しかしその結果のデザインがこうなってしまっては、スバル自身のレガシィへの冒涜、ユーザーへの裏切り、と言われてしまっても全くその通りだと思います。
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続いてドアを開けインテリアを覗いてみます。ボディサイズの拡大もあって、室内のゆとりの拡大は顕著。シートサイズもたっぷりで、クッションも幾分ソフトになった印象。ラグジュアリー性という点では大きく魅力が増したものの、先代までのレガシィで感じられた「適度に低く、適度にタイト」といったスポーティな印象は影を潜めました。

しかし、着座位置・アイポイントともに大きく高くなりながらも、シートに収まればそういった印象があまり感じられないのは、空間設計が巧みな証拠。高速クルーズでの快適性は乗員性の良さを考えると、これはこれで新たな魅力です。

インテリアの質感は、「目で見る限りは」かなり上質でしっかりと作り込んでいる印象。注釈をつけたのは、実際に手で触れる領域になると、その印象がなくなりチープさが目立ってしまうため。メタル調のシフトパネル付近の処理は見た目・質感ともにかなり雰囲気の良さが感じられますが、全体的にソフトパッドの使用面積が減り、インパネ上は触れば硬くてカチカチ、標準のオーディオレス車で装着される小物入れのフタの作動感などは、少し情けなくなるほど安っぽい出来。

今回からDINサイズとなり後付けで好みのオーディオ・ナビを装着できるようになりましたが、ここは見た目や質感なども含めて、純正のオーディオ・ナビを装着したほうがいいかもしれません。マッキントッシュオーディオは、その素晴らしい音質を提供してくれるだけでなく、ピアノブラック調の操作パネルが非常に質感・見た目ともにハイレベルで、インパネ上の見栄えも飛躍的に向上させてくれる一品。

インパネを横切るラインパネルは、標準系がメタル、Lパッケージが木目調、Sパッケージがカーボン調。インテリアの雰囲気の統一という点では、標準のメタル系の方が一番ですが、実際は少し安っぽさが目につくかもしれません。Lパッケージの木目調のラインは、インパネ付近の印象とマッチしていない印象。Sパッケージのカーボン調パネルは、かつてのトヨタツアラーV系の車を彷彿とさせます。

エアコン吹き出し口、ナビ・オーディオ操作系、エアコン操作パネル、ハザードスイッチなど、このあたりの操作性も分かりやすさとバランスの良さは○。タッチパネル式の純正ナビはトヨタ方式で、新たなインターフェイスのロジックはありませんが、使い勝手の高さに関して不満ナシ。

インパネ最上部に設置されるインフォメーションディスプレイですが、もう少し表示部分の面積・文字を大きくしたほうがよかったかもしれません。場所的にも同乗者にも認識できやすい一等地なので、少しもったいないような気がします。

調整幅の大きいシート、チルト・テレスコ調整付のステアリングによって、ドラポジの自由度・収まりの良さは○。残念に思うのがステアリングの質感で、ベースモデル以外は当然のように本革巻きなのですが、ステッチが荒く革の質感も「並」。またグリップがやや細い印象で、女性などは運転がしやすいかもしれませんが、個人的にはもう少し握りの良さを追及して欲しかったところです。ここはやはり、長年関係のあった「MOMOステアリング」に慣れたユーザーが、インテリアでまず気になる部分ではないのでしょうか。

ステアリングは運転する時に必ず触れる必要がある、車の中でも優先順位の高いパーツの1つ。そこへしっかりとコストをかけていないクルマは、たとえ走りの性能と質感が素晴らしくても、肝心のドライバーインターフェイスの部分で大きく損をする事になります。事情によりMOMOが採用できなかったのなら、それに負けないくらいのしっかりとしたステアリングを与えるべき。インテリアの印象はなかなかよかったのですが、ここが数少ない、しかし割合としては大きく、惜しいと感じた部分。

やや金属的で冷たい印象のATのシフトノブですが、新型はシフト側の+−のマニュアルモードが廃止され、操作はパドルシフトに統一されたので、個人的にはさほど不満にはならず。ベースモデルを含めて全車に装着されるパドルシフトは、ステアリングポスト固定式だった先代から、ステアリング一体式へと変更を受けました。

どちらにするかは色々と個人差があると思いますが、先代はパドルのサイズは大きいものの、やや剛性不足を感じ少し操作感が安っぽかったので、やや小さくなったもののカチカチっと小気味よく操作できる新型のほうが、個人的には好印象。

また、ターボモデルのSパッケージのみとなったものの、まだキチンと6速MTを設定しているのはレガシィならでは。新型はケーブル方式へと改められており、操作性を考えてアームレストも専用設計。ATだけでなく、MT車でもメーター内のディスプレイにギアポジションを表示し(シフトアップインジケーターも装着)、リバース時にも同じAT車と同じようにバックブザーがなるようになっているので、久々MTに戻ってみようかなと考えるユーザーにも親切な設計となっています。

今回ターボモデルだけでなく、NAユニットも含めてこちらも全車標準となるSI−DRIVEは、すっかりスバル車でお馴染みのロジックとなりました。エクシーガのターボではその装着位置に不満を覚えたものの、レガシィは先代と同じく操作しやすいシフト後方に設置されており、左に回せば「S」、右に回せば「S♯」、押せば「I」、という分かりやすい操作性も含めて、使い勝手は良好。

変更点と言えば、先代は基本モードが「S」でしたが、新型のデフォルト状態は「I」。こういった点も、今回の新型レガシィのキャラクターの違いを表している1つと言えそうです。

新型レガシィの注目点の1つとして挙げられるのが、レクサスLSやエリシオンプレステージ、VWパサートなどで装着されている電気式パーキングブレーキ。サイドブレーキがなくなった事でコンソール付近はスッキリとし、また発進の際はアクセルを踏めば自動解除。

最初のうちは少し違和感があるかもしれませんが、ヒルスタートアシストもセットで装着されているので、慣れれば便利な事間違いなし。アクセルに反応する自動解除機能が、シートベルトをしている状態のみで作動するというシステムも良心的。

ただ、このパーキングブレーキスイッチが配置されるのが、ステアリング右側。個人的にはこの設置場所に違和感を覚えました。発進時には自動解除してくれるので問題はありませんが、基本はやはりシフトノブを操作する手、つまり左手で一連の操作可能な場所にスイッチが配置されるべきでは?

せっかくならLSのようにステアリングだったり、エリシオンプレステージのようにシフト付近だったり、そういった場所のほうが分かりやすく、より実用的で慣れ易い気がします。

先ほど酷評したスタイリングとデザインですが、それらを決定付けたディメンジョョンの要因である居住スペースについて、リアシートに座るとその効果がありありと実感できます。

まずワゴン/B4問わずドアの開口部が大きく広がって、乗員性の向上を実感。実際リアシートに収まってみても、頭上空間・足元スペース・左右横幅いずれについてもとにかく広々ゆったり。特に足元スペースの拡大には著しいものがあります。

178cmの自分が運転席で適正なポジションを取り、そのままリアシートに座っても、余裕しゃくしゃく。これなら今回新型レガシィが掲げた目標はキチンと達成されたと言っていいでしょう。もっとも、その掲げた目標が正しいか否かについては、大きな疑問が残りますが。

ラゲッジスペースについては、B4はまずリアエンドの短さが印象的。おそらく空力性能を考えてのことなのでしょうが、オプションのリアスポイラーを装着すると、もうほとんど余分な面積がなくなってしまうほどです。

そのために、ラゲッジスペース自体は奥行きも横幅も深さも大きく拡大しているのですが、開口部が小さいためにその広さを実感しにくいかもしれません。しかし、このスペースならゴルフバック4つは楽勝、実用性も十分以上です。またようやく新型となって、トランクヒンジが内部に干渉されなくなったのも朗報です。

ワゴンに関しては、高さ方向のゆとりを実感。特にトノカバーをした状態での容量拡大は、先代を大きく上回っています。スクエアで扱いやすいスペースですが、リアサスペンションがマルチリンク→ダブルウィッシュボーンと変更になったためか、サスペンションタワーの張り出し量は若干大きくなっています。

リアシートがラゲッジ側のレバーによって格納できるのは先代と同じ。ノブ形状が操作しやすくなっているのは嬉しい点。相変わらず大きくフロアとフラットに開くリアゲートも使い勝手はいいものの、先代ようにアルミ式のゲートではなくなってしまったので、リアゲートは若干重くなってしまったのが少し残念。軽量化とコストのバランスの問題なのでしょうが、新型ではボンネットもアルミではなくなってしまいました。

エンジンは、長年レガシィのメインであった2.0Lを廃止。ターボ・NAともに2.5Lへと移行しました。確かにクラスを考えればこの排気量アップは当然なのでしょうが、「これで大きければインプレッサをどうぞ」とはすんなりいかないような気もします。両ユニットともに燃費も大きく変わらず、価格も大きく変わらず、とのことですが。確か、ボクサーディーゼルは2.0L。この先のエンジンラインナップはどうするのでしょうか?

今回メインに置かれるのは2.5LNAには、ベルト式の縦置きエンジン用CVTのリニアトロニックを採用。6速のマニュアルモード付で、ベルト式ならではのレスポンスの良さと燃費の良さをアピール。エンジンは先代から若干パワーが落とされていますが、旧式の4速ATから比べれば、走りの洗練度は大きく向上していることでしょう。

ターボの排気量アップには納得。2.0Lで闇雲に280paを狙うのはすでに時代遅れ。しかし、今流行りの「排気量を下げてターボをつけて性能と燃費を両立」というのを、この2.0Lターボで追及する可能性もあったとは思います。

しかし、低〜中回転でフラットなトルクを発するこの2.5Lターボは、新型レガシィのキャラクターにマッチしたエンジンと言えそうです。ATが従来の5速ATのままで、その分のトルク制限も変わっていないのが少し惜しいところ。

さらにアウトバックには、3.6Lのボクサー6も用意。先代レガシィの3.0Lモデルも、非常に通好みな仕上がりをもった完成度の高いモデルでしたが、ここまで排気量がアップしてしまうと、さすがに少し躊躇してしまいます。

興味深いのは、レギュラーガソリン対応だということ。この排気量にするなら、レギュラー対応にする前にもっと進むべき方向性はたくさんあるはずですが、燃費面に不利なデメリットを少しでも解消しようとする傾向は評価できます。こちらに組み合わされるのも5速AT。

サスペンションはフロントが形式はストラットのままながら、今回新設計。リアサスペンションは先述したように、マルチリンクからダブルウィッシュボーンへと変更されました。エンジンマウントもスバル1000時代から受け継ぐボディ直付から、ゆりかご式と言われるクレードルフレームへの変更など、見えない部分にも大きく改革のメスが入っています。

タイアサイズはNAのベース・Lパッケージが16インチ、Sパッケージが18インチ、その他は17インチを採用。17・18インチはBSのポテンザRE050A、またアウトバックは60扁平の17インチで、タイアはオールシーズン用が装着されます。

そして価格。ボディサイズ拡大、排気量アップ、しかしながらスタート価格はB4で約220万円、ツーリングワゴンで約236万円、アウトバックが約268万円。もちろん「大きくて広くて安いから、レガシィにする!」というようなユーザーは、そういないとは思いますが…。

ラインナップは非常に分かりやすい体系となりました。B4/ツーリングワゴンは、NA・ターボともに標準系、Lパッケージ、Sパッケージ、そしてGT系にレーダークルコンを装着したSIクルーズがラインナップされます。上級エンジン=装備充実、ではなく、NAでもターボと同じ選択肢を与えられたのは○。

価格面でバリューな標準系ですが、装備内容はこれでも十分。NAの標準系はウレタンステアリングだったりアルミホイールではなかったりしますが、ターボであるGTの標準系には装着。他にはハロゲンヘッドライトや4スピーカー、パワーシートレス(逆に言えば、標準系以外はすべてパワーシートが標準装備)、サイドエアバックレスなどの差がありますが、実用的にはほとんど不満はないでしょう。VDCが全車標準になっているのも嬉しいところ。

25〜30万円高となるLパッケージは、前席パワーシート・スマートキーシステム・HID・左右独立エアコン・木目調パネルなどが追加装備。内装カラーをアイボリーにできるのも、このLパッケージの強みです(本革シートを選択すれば、SIクルーズでも選択可)。

売れ筋となるであろう40〜45万円高となるSパッケージでは、HID&フロントブラックベゼルヘッドライト、エアロバンパー&グリル、サイドシル、アルミペダル、18インチタイア&ホイール、ピルシュタインダンパーなどが装着されます。内容を考えれば、どちらのパッケージも充実度満点。

グレードの選びやすさは向上したものの、相変わらずなのは悪評高き「抱き合わせセットオプション」の制度が残ってしまったこと。少しでも生産するべき種類を減らしたい、スバルの悲しい性の表れなのかもしれませんが、本来オプションを自由に選ぶ権利は、実際にクルマを購入するユーザーにあるべき。このあたりはもう少しユーザーの立場になった方式を選んでもらいたいです。

国産で言うと、ライバルとなるのはホンダアコード・マツダアテンザあたりでしょうか。アコードは今やもう日本市場は完全無視、かろうじてワゴンが存在感を示す程度で、セダンにいたっては存在価値はほぼ皆無。

アテンザは国内市場では苦戦中なものの、走りの良さと質感・装備の充実と価格・そして何よりヨーロピアンで魅力的なデザインが武器。とりわけスポーツワゴンは、新型レガシィと比べると、その佇まいの違いは明白。

水平対向エンジン+AWDという非常に強力な武器をもちつつ、室内空間を大きく拡大し魅力を増した新型レガシィですが、どうしてもスタイリングやコンセプトが足を引っ張っているような気がしてなりません。

それぞれ個人的な好みや解釈の仕方がある「スタイリング」という観点で今回は酷評する結果になりましたが、これが紛れもない率直な感想。評論レビューに関しては個人の価値観を取り込まずに書くというのはほぼ不可能と考えるので、あえて感じたままの事を少し厳しく記しました。

スバルの屋台骨であるレガシィ。その存在は本当に大きく、ある意味スバルはこのレガシィと「運命共同体」と言ってもいいでしょう。レガシィがコケるということは、スバルという会社自体がコケる、というのは過言ではないはず。

それだけに、スバルの中でも相当この新型レガシィの開発については、様々な意見があったと思います。それらを含めて、今回こういう形での登場となったわけですが、個人的にはやはりどうもスッキリしないというのが改めての感想です。全く新しいスバルブランドのブランニューカーとして見る方がいいかもしれません。もっとも、例えそう見たとしても、デザイン上の印象は変わりませんが。

レガシィがもつその独特のブランドイメージ、レガシィが抱える多くのユーザー、それらは他社の車とは少し違った、ある意味特殊なものでした。それが時にレガシィの進化自体を自ら雁字搦めにしてしまう時もあったのでしょうが、「国産の中で圧倒的な『ブランド』を確立した数少ない1台」という存在のレガシィは、他のメーカーからすれば、羨ましい存在だったかもしれません。

それら築き上げてきた事を、今回の新型レガシィでは多く捨て去ってしまったような気がします。もちろんそれは時代の流れもあるので仕方ないのかもしれませんが、捨てたら捨てっ放し、その後のフォロー(歴代レガシィユーザーへの気配り)や、新たなユーザー獲得へ向けての明確なフィロソフィーが、ほとんど感じられませんでした。
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今回このレガシィが捨てたものは、かなりかなり大きなもの。捨てるなら捨てるなりに、それなりの覚悟と勢いが必要。それらが、5代目レガシィから発せられているとは思えないのです。今までスバルを、レガシィを選んでいた人々とその理由を、スバル自身は改めて考える必要があるのでは?

「開発の最中には、目標とする車はありませんでした。あくまでも我々の考える理想のワゴン像を追い求めて常に開発してきました」

3代目レガシィが登場した際に「ミスターレガシィ」と言ってもいい、開発主査の桂田勝さんが残した言葉。これこそがレガシィの本髄であり、そこが一番の魅力だったのでは。

見た目、形だけでなく、中身に精神が宿っていればそれはそれでいいのかもしれません。車は走ってナンボ、スバルの技術とポテンシャルの高さはまだまだ顕在。

「我々がレガシィを作っているというのは、自分たちが作りたいレガシィを作っているというよりは、皆がこうあって欲しいというレガシィをいかに実現するかが重要…」

これは、5代目新型レガシィのプロジェクトゼネラルマネージャーである、日月丈史さんの言葉。果たして、レガシィは今後どのような運命を辿っていくのか?楽しみでもあり不安でもありますが、それをしっかりと見届けていきたいと思います。




レポート:岩田 和馬
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2009年05月19日

新型プリウス詳細レポート!

ついに新型プリウスが登場しました。昨今の取り巻く環境・経済問題盛り上がる中、本年最大の注目車といっても過言ではないでしょう。早速レポートをお届けします。

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まずスタイル。プリウスとしては初めてキープコンセプトのフルモデルチェンジが行われたわけですが、パッと見プリウスとすぐ認識できつつ、そのデザイン自体は随分とエモーショナルかつシャープに進化しました。ボンネット中央のエンブレムからボンネットへと流れる膨らみはより明確化され、フェンダーが食い込むヘッドライトの形状もかなりスポーティ。

サイドビューもプレスラインがグッと強調されて、全体的なボディシルエットもより前傾方向へ。空力などを考え、ボディサイドが平板な印象だった先代プリウスと比べると、随分と抑揚的です。

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いかにもエコカーというような優しいイメージか漂っていたプリウスですが、今回の新型ではそういった少し弱々しい印象が上手く払拭されているというのが率直な感想。またルーフのアーチの部分の頂点をややリア寄りにすることで、後席の頭上高拡大に加えて、それを上手くデザイン上の利点につなげている点も○。

新型プリウスに負けず劣らずカッコ良いものの、実用性との融合が一切できてないインサイトと大きく違う点です。全長で15mm、全幅で20mm拡大され、全高は変更なしというディメンジョンですが、実際のサイズアップ以上にクルマが立派に見え、低重心に感じられるようになったのは、デザイン力の勝利。

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しかしながら、リアビューに関してはいささか「空力実験車」的要素が強まりすぎているように思えます。リアバンパーを途中でスパッと切り落とし、後ろから平べったく押し潰したようにリアを絞りこんでいるのは、間違いなく空力性能を上げるためのもの。

リアビューだけでなく、フロア下やルーフ・ピラーの角度、フロントバンパーのコーナー付近の彫刻的なラインなど、新型プリウスは空力を計算し尽くした上で構築されていますが、フロント・サイドビューではそれら2つのバランスが非常に高度です。

それだけに、フロント・サイドから見ると立派にスポーティに変わったという印象が、リアから見ると鈍臭く貧弱に見えてしまうのが、他の部分のスタイリングがエレガントに進化しただけに、より惜しく感じる点です。

これはトヨタ車だけでなく他メーカーの車にも言える事ですが、リアのクリアテールの処理はいかがなものか? 個人的にはLEDライトであっても、夕暮れ時の後方側からの視認性についていまだに疑問が残り続けています。

先代はリアのサブウィンドーとまとまるように上手くデザインされ、またブレーキとポジション点灯部分が別体になっていましたが、新型はそういう配慮もありません。濃いボディーカラーではリアライト自体がテカテカと目立ってしまう嫌いもあり、個人的にはリアビューの見栄えに関しては「?」。何度も言うようですが、フロントやサイドからの見た目がグッとよくなっただけに、より気になってしまうのかもしれません。

もっとも、Cd値は驚異の0.25。先日発表されたEクラスクーペはさらに上を行きますが、現時点ではトップレベルの性能と言っていいでしょう。ただ単に「カッコ良さ」だけを追及することが必ずしも直接魅力につながらない、こと空力(燃費性能)に関して超デリケートとも言えるこのプリウスの特異性を考えれば、これも1つの「らしさ」でしょうか。

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個人的に気になった点をもう1つ。このサイドミラーの付け根、なぜ無塗装ブラックアウトなのか。過去では先代エスティマが、浮遊感が出てしまうということでミラー全体をブラックアウトしましたが、ユーザー側の声から新型はボディ同色に。そういったデザイン上の意図があれば別ですが、この部分に関してはそういった印象は一切感じません。何か意図が? それとも単なるコストダウン? 薄いボディーカラーだと余計に目立って、どうしても目につきます。

同じくブラックアウトされたリアスポイラーにも個人的には少し違和感があったのですが、こちらはオプションでボディ同色のスポイラーにすることが可能です。

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続いてはインテリア。シートに座ってドアを閉めた際の音で、新型の気密性の高さを実感。ドアを閉めると、外の音が遠くに感じられます。そもそもプリウスはエンジンがかかっている時間が短く、静かに感じられるクルマでしたが、新型ではさらにクルマ本体の静粛性のアップにも余念がないようです。

座ってみると、やはりAピラーの角度が随分と寝ているのを実感。インサイトほどではありませんが、先代から比べると少し気になれるレベルでしょうか。また若干改善されている跡は見えますが、ピラーの太さによる死角の多さも少し気になりました。

先代ではどうしてもルーミーさが残ってしまうポジションが、ステアリングにテレスコピック機能が追加されたこともあり、随分自然に調整できるようになったのは○。すっかりお馴染みとなった異形ステアリングもほとんど違和感なく手になじみ、小径かつグリップが太くスポーティな印象も感じられます。

材質がウレタンでは少し硬さが目立ちやすいので、安っぽく感じられた方は革巻きステアリングを選択したほうがいいでしょう。G以上に標準装備という事になっていますが、SやLでもディーラーオプションにて約26,000円で装着が可能です。

先代はナビの有無に限らず液晶モニターが標準装着されていましたが、新型はセンターメーター左側のモニター内で、ハイブリッドインジケーター・エネルギーモニター・分毎の燃費表示・履歴が表示されることとなっているので、オーディオレスを選択すればDIN企画の好きなナビ・オーディオを組み合わせることができようになりました。

そしてもう1つの注目は、タッチトレーサーディスプレイ。これはエアコン・オーディオのコントロールをステアリングスイッチにて行う際に、今指でスイッチのどの部分を触っているかをボタン上で感知し、その部分をメーター上でオレンジに発色させ、最小限の視線の動きで操作できるというもの。スイッチ部分のタッチは通常のものと少し異なりますが、この分かりやすさと操作性の良さは◎。

センターメーターを用いるクルマならではの装備ですが、このインターフェイスとしての取っ付きやすさ・分かりやすさ・便利さには目を見張るものがあります。はっきり言って、ハリアーやレクサスHSなどで採用されるリモートコントロールより説得力アリ。今のところ純正HDDナビとセットということで、Gツーリングセレクション・レザーパッケージ以外ではオプションなのが唯一残念な点です。

ただ多くの”お楽しみ”があるおかげで、これ以上賑やかにするとセンターメーター付近がやや乱雑に見えてしまう事を考えれば、それも仕方ないところでしょうか。タコメーターはなくスピードメーターだけなのでまだマシですが、メーター内の表示色が全て淡いグリーンに統一されているのも、表示のメリハリのなさを助長しています。

このあたりはタコメーター、アンビエントメーター、パワーメーターを備え、より多彩なアウトプットを楽しませてくれるインサイトの方が一枚上手。絶対的な性能はともかく、こういった「ドライバーへの演出」というインターフェイスは、もう少しがんばって欲しいというのが正直なところです。

またもう1つ気になるのは、前席を大きく分断するセンタークラスター。オーリス・ブレイドでも用いられているこの方式ですが、この部分に関しては先代のようにサイドウォークスルーができる方がよかったのでは。もっとも、これによってポジションのルーミーさが若干解消されたとも言えるのですが、このような大きいセンタークラスターに加え、そこのせっかくの一等地に小型シフトノブをドンと配置してしまった点については、いささか疑問です。

新型もシフトノブはバイワイヤで、いまやスイッチのような扱い。せっかくの自由度の高さを全く生かせていないと言っていいでしょう。先代と同じように小さくまとめることもできれば、アストンマーティンDB9のようにボタン形状にしてインパネに設置する事や、ジャガーXFのようにオシャレなダイアル式ギミックを用いたり、もっと様々な提案方法があったはず。

もっとも、これもより幅広いユーザーに受け入れてもらうために、他車ユーザーから乗り換える際の違和感をできるだけ減らそうとした結果、なのかもしれませんが。厳しいコスト管理の中で開発された事は分かりますが、こういった運転するまでのプロセスの違いは、プリウスの弱点でもあり、大きな個性でもあります。そこは没個性にするのではなく、プリウス自ら新たなインターフェイスの提案をどんどんと増やして欲しかった、またそういう挑戦がしやすい車種だけに、少し残念です。

操作の分かりやすさに関して言えば、全く問題なし。それよりもむしろ、いったいどういう時に使えばいいのか分からない、センタークラスター下に設けられた場所も容量も中途半端な収納スペースのほうが、実用性に関して言えば問題かもしれません。

下手にいろんなものを入れると、走行中に足元に落ちて、思わぬトラブルを引き起こすかもしれません。以前クルーガーVが登場した時も同じ事を思ったのですが、ここを収納スペースとするならば、ディーラーオプションで装着できるコンソールリッドを最初から標準にすべきです。

インサイトでは大変厳しかったリアシートのスペースですが、新型プリウスはさすがの車格の違いを実感。乗り降りの際にも何も不自由なく、後席のスペース自体もキチンと大人2人が快適に過ごせるスペースが確保されています。

178cmの自分の場合、頭上高は先代よりも拡大されたとのことですが、やはりまだ若干髪の毛がルーフに触れてしまいます。しかしそれも、ほぼ気にならないレベル。前席シートバックの薄型化によって足元・膝周りのスペースもゆったりしています。唯一気になった点は、S以上に装備されるリアアームレストの安っぽさくらい。ちなみにカップホルダーはここに装着されています。

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ラゲッジスペースについては、横幅がグッと拡大された印象。先代まではゴルフバックがギリギリ頑張って2セットだったのが、新型では楽に3セット収納が可能になっています。しかし、ボディサイズがほぼ変わらない事もあって、全体的にはさほど広くなった印象はありません。バッテリー搭載によってフロアは相変わらず高め、床下のサブトランクの形状もさほど使いやすいとは思えず。絶対的容量では結構違うのですが、ゴルフバックを積まないというのであれば、正直インサイトとあまり変わらない印象です。

パワートレーンでの大きな注目点は、やはり排気量がアップされた点。1.8Lのアトキンソンサイクル化されたエンジンに、これまた90%以上見直されたというTHSシステム。モーターは600V、さらにはリダクションギアが搭載されており、性能の磨き込みに余念がありません。

その他にもクールEGR、電動コンプレッサーエアコン、ロッカローラーアーム、電動ウォーターポンプ、さらに排気熱の再循環システムなど、これでもかと言わんばかりの効率化と意欲的な技術の数々。後々に記しますが、この内容でこの価格で出されるのははっきり言って驚異以外何物でもありません。

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先ほどの空力性能のさらなるアップに加えて、排気量アップ・リダクションギアの搭載は、高速走行時のさらなる性能アップ&燃費向上を図るため。絶対的な性能では先代プリウスでも十分な内容でしたが、新型プリウスはまさに「格上げ」な印象。絶対的なセグメントも1つ上に上がったような気がします。

モーター容量アップによって、低速走行時のモーター走行領域も広がって、「半EV化」はさらに進んでいます。燃費自体も改善されているのは当然として、このあたりの実際の走りのポテンシャルの向上がどのようなものかは、また後日じっくり走り込んでまたお伝えしたいと思います。

シャシーは今回オーリスがベース。ツーリングセレクションでは専用チューンのサスペンションが奢られます。ブレーキは先ほどの高速走行性能のアップと約100kg弱増加した重量に対応して、4輪ディスクブレーキに。これは見栄えという面も含めて○。また、緊急時のフルブレーキング時に、全てのランプが点滅して後続車への非常事態を知らせる緊急ブレーキシグナルも今回装着されました。

タイヤはLが185/65R15のグッドイヤー、SとGが195/65R15のBSエコピア、ツーリングセレクションが215/45R17のミシュランが装着されていました。全車アルミホイールは標準。15インチ仕様はアルミ+ホイールキャップのコンビホイール。キャップを外せば、軽量化された事が目に見えて分かる、結構スポーティなデザインのホイールが隠れています。

見た目で言えばやはりツーリングセレクションの17インチが魅力的。ホイールデザインもよく、ボディサイズに対して足元の踏ん張り感が全く違います。ボリュームが増したボディスタイルなので、同じ15インチでも先代と比べて随分タイヤだけが小さいイメージが強くなっているようにも感じるのも気になる点。

しかし、燃費の事を考えれば、当然15インチ有利。ここのバランスが難しいところです。個人的にはその間を取って、見た目と性能と燃費のバランスがとれた、205/55R16サイズのサイズチョイスがあってもよかったのでは?と思います。

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ちなみにこの画像は、その16インチサイズのアルミホイールをセットしたモデリスタ仕様のプリウスなのですが、エアロや専用のホイールデザインの効果もあるものの、このサイズチョイスはなかなかのバランスだと思います。ちなみに、モデリスタでは18インチサイズも用意。見た目だけで言えば、オーバーサイズ感は全くなく、素直にカッコいいの一言。スタイル最優先で言えばこのチョイスもアリかもしれません。

さて、お気づきの方もいるかもしれませんが、Lに装着されるタイヤである185幅のグッドイヤー。実はこれ、先代プリウス、つまり併売されるプリウスEXと全く同じタイヤをそのまま流用しています。先代モデルでの15インチのタイヤのキャパシティは、転がり抵抗の少なさという燃費を考えた上でも、性能的にギリギリという印象。性能アップ、それに伴う車重増加、それらを考えた時に、それをそのままそっくり新型につけてしまうのは、正直言って少し不安。

カタログ上での燃費スペックは、当然このグッドイヤーを履いたLが最高値を叩き出しているわけですが(もちろんSに比べて40kg軽い事も影響しています)、ここは実際195幅のBSエコピアを履いたS・Gとの走りの印象の違い・燃費の違いを考えて判断をしたいところ。個人的には先代プリウスの走りを考えると、Lはあまり選択したくありません。

205万円という衝撃の価格、グレード中最高燃費を叩き出すグレード、ということで注目を集めがちなLグレードですが、実車を見ると1つ上のSとの見逃せない違いが様々な点で見られます。フォグランプが装着されなかったり、オーディオレスが標準である点は十分価格を考えれば納得。リアワイパーが付かないのは個人的には痛いですが、必要性を感じない人には全然気にならないでしょう。実際雨の日にはワイパーなしでも十分視界が確保されており、欲しいと思うのは雪の日くらい?

また、ツーリングセレクションに標準され、標準グレードにオプションのフロアアンダーカバーが、Lにはなぜか標準装備されているのは不思議。このあたり、Lの燃費数値達成とCd値0.25がこのグレードで達成されているヒントとカラクリが隠れていそうです。

しかし、室内側の装備省略には結構痛いものがあります。まずはシートリフターが装着されないこと。S−VSCとサイドエアバックをLから標準にしたのは大拍手ですが、これくらいは全グレードに装着してもいいのでは。実際Lでは自分にしっくりくるドライビングポジションを取る事ができませんでした。

また、新型プリウスはカップホルダーの配置がセンタークラスター上に1つ、コンソール内に1つという変則的な配置になっているのですが、Lではコンソール内が簡略化されるため、1つだけになっています。同様にリアアームレストも装着されないので、それに伴ってアームレストに装着されるカップホルダーもなし。つまり室内には1つしかカップホルダーがありません。常に1名乗車であるなら問題はないのでしょうが、これまた少し痛い点。

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そして影響はこんなところにも。S以上には当然のように装着されるボンネット裏の防音材が、なんとLの場合は省略されています。エンジンのかかっている時間が絶対的に短いプリウスではありますが、正直ここまでするか? という削減内容。無論タイヤサイズも含めて、これらは乗り比べれば分からない点、もしくは実際になくても全く気付かないのかもしれませんが、それなら全グレードに装着しなければいいわけで、少なくとも何らかの体感できる影響があるはずです。

205万円という価格は大変衝撃的であり、基本グレードからS−VSCやサイドエアバックを標準装着した点は賛辞に値します。しかしながら、実車を見なければ分からないカット部分も多く見られる事も事実。

SはLよりも15万円高い220万円。それでも最新ハイブリッドシステムを搭載するクルマとしては驚異的安さであり、競争力もインパクトも十分。自分の場合なら、プリウスを買うならばLは選びません。通勤で使用し、ほぼ1名乗車の機会のみ、もしくはビジネスユースで使用するならばLで十分ですが、ファミリーユースで使うならば絶対にSにしておいた方がいいでしょう。

SとGの価格差は25万円。内容の違いはクルーズコントロール、上級タイプのシート表皮、本革巻きステアリング、スマートエントリーの範囲拡大、フットライト程度。本革巻きステアリングはディーラーオプションでも装着可能なので、クルーズコントロールの有無がSかGかを選ぶポイントでしょう。

街乗りメインなのであれば、Sの内容で十分。25万円の価格差があれば、もう少し何かコレ! といった装備の違いが欲しかったところです。しかし逆に言えば、Gの245万円はそもそも新型プリウスの価格予想されていた値とほぼ同値。この価格で上級グレードが手に入るのには素直に驚きです。

SからGにする時に悩ますもう1つのポイントが、ツーリングセレクションの存在。SとGとの価格は25万円ということで、なんとSツーリングセレクションとGは全くの同価格。ツーリングセレクションになると専用サスペンション、17インチタイヤ&アルミホイール、フロアアンダーカバー・リアバンパースポイラー(この2つはSとGでもオプション装着可)、LEDヘッドランプが装着されます。25万円の価格差は、先代モデルの標準仕様ツーリングセレクションよりも広がっていますが、おそらくこれは大変高価と言われるLEDヘッドランプの分が反映しているのでしょう。

LEDヘッドランプをこのクラス・この価格のクルマに搭載したトヨタには恐れ入りますが、標準仕様のヘッドランプはなんとハロゲン。オプションでもLEDヘッドライトはもちろんのこと、HIDも用意されません。もちろん今では社外パーツでHIDを装着することは可能ですが、このような安全性能や快適性に直結するライト関係の装備を、スポーティグレードに標準装着するという考えは安易すぎなのでは。

先代プリウス登場時もこのような体系が取られていました。17インチはいらないけどもLEDヘッドライトは欲しいというユーザーは、たくさんいると思います。もしそれが都合上ダメだというのなら、HIDくらいはオプションで用意しておくべきです。こういった装備は、単なる見た目の問題などという事で片付けるわけにはいきません。

もちろんこれはいずれ、時間が経てば特別仕様車などの設定で解決されるかもしれません。いずれにせよ、ただ安いからいいじゃないか! というような姿勢は腑に落ちません。ユーザーへのより幅広い選択肢の展開を望みます。

最上級グレードであるGツーリングセレクション・レザーパッケージは、Gツーリングセレクションから57万円高の327万円。もっとも内容はHDDナビ・タッチトレーサーディスプレイ・インテリジェントパーキングアシストが標準になり、前席ヒーター付本革シート、プリクラッシュシステム、レーダークルーズコントロール、レザー仕様のセンターコンソールなどが装着されます。

ちなみに、EGA高精細ディスプレイ、エコアシスト機能、ヘッドアップディスプレイ、地デジチューナーなどが装着される上級ナビシステム&スーパーライブサウンドシステムを装着すると、それよりさらに約22万円高。他の装備はともかく、エコアシスト機能くらいは通常のHDDナビを装着すればセットで付いてきて欲しいものです。この上級システムはこのグレードのみにオプション選択可能であり、なんでもフル装備!のこのグレードなら、オプション装着する価値ありでしょう。

逆に言えば、自動バック機能などに興味がなければ、それ以外のグレードでは純正HDDナビでなくても十分。オーディオレスを選びお好みのナビを組み込むのもよし、標準の純正CDプレーヤーをそのまま装着して、後々PNDを自分で装着するのもよし。

個人的にはタッチトレーサーシステムに心惹かれるものがあるのですが、そういう風にどんどん考えていくと、プリウスはあっという間に400万円台の高級車になってしまいます。このあたりが戦略的価格を打ち出しながらも、実際買おうとなると消費者の心を上手く誘導していく、トヨタの商売の上手さでしょう。

その他の注目オプションと言えば、ソーラーパネル付ムーンパネル。駐車中にソーラーパネルで充電、その動力をエアコンに使用して、夏場の炎天下の車内気温上昇を抑えるというもの。ソーラーパネルで充電した分が走行時のバッテリーに使われるということではありません。エアコンの作動はスマートキーのボタンにて可能。これは実際夏場では大きく効果を発揮することでしょう。

オプション価格はグレードによって異なりますが、20万円強。正直高いですが、見た目的な部分とプリウスというクルマの独自性を考えると、こういう装備もアリとは思います。またサンルーフとセットということで、サンルーフが欲しいというならこれを装着せざるを得ません。もしくは、サンルーフには興味がないからソーラーパネルだけ欲しい!という自分のような考えも考慮されません。

また、これはSとGのみに装着可能で、ツーリングセレクションを選ぶとこのオプションは選択できません。このような装備は、いわゆる「全部付け」するユーザーさんが欲しがるオプションであり、最上級のGツーリングセレクション・レザーパッケージで選べないのは痛いところ。むしろ17インチタイヤとサスは別にして、単なるG・レザーパッケージというグレードが用意されてもいいかもしれません。

ボディーカラーは9色。パールホワイトやアイスバーグ、アクアブルーなどのプリウスらしい淡い色も、レッドやブラックなどの精悍な色もよく似合います。内装色はアクアとミディアムグレー。個人的にはどちらもパッとしないので、清くブラックに統一するか、アメリカ仕様に設定される予定のブラウンカラーがあればよかったのですが。特に本革シートの場合はその思いをより強くします。

かなりの長文での紹介になりましたが、それだけこのプリウスは内容盛りだくさん。実際に見ると色々分からなかった部分も多く見られましたが、やはりこの内容でこの価格は驚異的としか言いようがありません。全く価値がなくなったとは言いませんが、ちょっとインサイトは厳しい立場に置かれたかもしれません。むしろ今楽しみなのは、i−stopを搭載する新型アクセラ。サイズ的にもこちらがバッティングしそうです。

8万台の注文、納車5か月待ち、ということで、いつしっかりと乗って試乗レポートできるかは分からない状態ですが、いずれにしても走りの方もしっかりとチェックしたいと思います。




レポート:<岩田 和馬>
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2009年05月15日

トヨタIQスポーツ&マツダアクセラの衝撃!

トヨタが、IQをベースにスポーツモデルを開発していることが報道されました。トヨタとしては、約10年ぶりのスポーツモデル。エンジンは1.3〜1.5Lで、6速MTを搭載。これが、単なるIQの1グレードになるのか、専用ボディをもつ超コンパクトスポーツになるのか、現状ではまだはっきりとは分かりません。また、この車を「スポーツカー」と呼ぶのか「スポーティーカーなのか、マイクロスポーツなのか」といった議論も当然あることでしょう。

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しかしながら、アルファロメオミトやフィアット500アバルトなどの欧州ホットハッチモデルが出る中、こういったニュースは素直に嬉しく思います。国内にも評判のいいスイフトスポーツが存在するので、できればそれ以下の価格で実現してもらいたいところです。参考までに、画像は先日のNYショーに出品された、ワイドボディをもつサイオンIQコンセプト。
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そして、来週18日はプリウスの発表日。すでに7万台規模の受注を受けており、そろそろ年内納車も厳しい、といった声が聞こえるほどの過熱した人気ぶりを博しているようです。また、GWには各地の高速道路のSAなどで、プロトタイプを展示。GWの旅行や帰省された時に、実際見かけた方も多いのでは。

実は、すでに自分も実車は軽くチェック済み。発表前ですが、各ディーラーにはドンドンと実車が運ばれている模様です。話をお聴きしたディーラーでは、発表当日から全カラーラインナップの展示車(全8色。つまり、1色1台で計8台!)を用意するという気合いの入りっぷりでした。18日に正式に発表されたのち、また詳しくこの場でレポートしたいと思います。


そんな中、来月11日登場のマツダの新型アクセラの正式予約がスタートされました。話題がプリウスばかりでいささか形見が狭そうなアクセラですが、もうすでにマツダのHPではプレサイトが立ち上がり、価格や燃費、税制優遇額の表示などを行っています。

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ラインナップは先代と同じく、スポーツと呼ばれる5ドアハッチバックと、4ドアのセダン。欧州やアメリカでは2.5Lモデルも用意されていますが、日本では1.5L、2.0L直噴、そしてマツダスピードアクセラに搭載される2.3L直噴ターボ。1.5Lには7速CVT、2.0Lには5速AT、MSアクセラには6速MTがそれぞれ組み合わされています。1.5LにMTがなくなってしまったのは、少し残念。

そして注目のアイドリングストップ機能である「i−stop」は、2,0LのFFモデル全てに標準採用。レス仕様など専用グレードを設けることなく、採用車種を多く広げた点には拍手!燃費も2.0LFFモデルは10・15モードで16.4km/Lと大幅に改善。エコ減税75%免除に当てはまり(i−stopがない1.5Lでも50%免除)、10〜11万円減税されます。

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そして注目の価格。セダン・スポーツともに共通で1.5Lモデルの15Cは166万円、i−stopが採用される20Cは、なんと189万円!!セダンの20Eが205万円、スポーツの20Cで214万円。詳しい装備内容はまだ分かりませんが、このタイミングで登場するということで、大変強くインサイトやプリウスを意識した価格設定となっています。

コンベンショナルな純ガソリンエンジン車ながら、この直噴エンジンならすぐに採用でるアイドルストップシステムは、他車種への派生を考えればかなり画期的。個人的に若干アクが強めなスタイリングはとても好みで、走りの方も現行モデルのポテンシャルの高さを考えれば、なかなか期待できそうです。


世間は完全にハイブリッドの流れ。インサイト189万円に続き、プリウス205万円ショックで、この価格で実用的な最新ハイブリッドモデルを出されたら、もう同クラスのライバルは完全に敵わないのでは、と少し思っていました。

しかしながらそんな風潮を打開してくれそうな可能性が、この新型アクセラに少し見えたような気がします。ハイブリッドにはハイブリッドの魅力や楽しさがたくさんありますが、やはり「自動車」としての本来の魅力もやはり捨て難いところ。そう考えると、俄然このアクセラは自分にとって魅力的に映ります。全てがハイブリッドなんていう流れは、面白みが足りない!

来月の正式発表が是非とも楽しみな1台です。


<レポート:岩田和馬>
posted by 親方 at 00:02| Comment(3) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月10日

レクサスIS250C登場

レクサスISに、メタルルーフを持つコンバーティブルのIS250Cが追加されました。IS−Fに続いて、今回はオープンモデル。しかしながら実質的にはメタルルーフということで、この1台でクーペ・オープンの両方の役割を受け持つ存在だと言えるでしょう。

まずはスタイリングから。基本的にはISセダンに準ずるモチーフながら、共通部品はヘッドライト・ボンネット・ドアミラー・ドアノブくらいで、その他はこのISC専用設計。サイズはセダンに比べ全長で+50mm、全高で−10mm。50mmの全長延長分はリアのオーバーハングに使われています。

フロントバンパーは少しばかりIS−F風? リアテールのLEDテールの点灯パターンは視認性もよくオシャレで、ここはマイナーチェンジで変更を受けたセダンも、このISCのようなシンプルなデザインに戻して統一すべきでは?

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注目のルーフは当然最近の例にしたがって3分割方式で、開閉時間は20秒。このルーフの大きさと収納の複雑さを考えればトップレベルと言っても良いでしょう。スタイリングに関しては、オープンの時の佇まいの良さはもちろんの事、ややトランクリッドが平板な印象に見えるものの、ルーフを閉じても十分魅力的。メタルトップの車にありがちな野暮ったさは上手く払拭されています。

個人的に4シーターメタルトップオープンのクローズド状態のスタイリングが一番上手いと思うのはボルボC30。ISCも若干ルーフ接合部分のチリの大きさが目立つものの(濃いボディカラーを選べば問題なし)、十分クーペとして映えるまとまりです。

Cピラー形状にこだわったために、ルーフからトランクリッドへのラインの流れが途中でプツンと途切れてしまう3シリーズカブリオレより、ISCのほうがラインの構成は○。もっとも、C70とISCがオープンモデルとクーペを両立するモデルであるのに対し、3シリーズにはクーペも存在するので一概にまとめては言えませんが。

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インテリアは基本的にセダンと共通。見えない部分で言うと、HDDナビが最新モデルへとグレードアップされています。ルーフ開閉ボタンは運転席右のコインポケットの横。後席へのアクセスを容易にするために、シートにはウォークイン機能が内蔵されており、シート背面の薄型化など、足元スペース拡大にも余念がありません。

実際に座ってみると、足元スペースのゆとりはさすがに広いとは言えず、シートバックも立ち気味、シート幅も狭め。しかしながらこれくらいなら数時間のドライブ程度は楽勝に耐え得るので、4シータークーペ&オープンとして十分実用的。「豪華な荷物置き」程度のSCのリアシートを考えれば、比べものにならない広さです。

注目はトランクスペース。ルーフを開けるとさすがに手前部分にわずかなスペースしか残らないものの(それでもゴルフバックが1つ入るのは立派)、クーペ状態だとかなりのスペースを確保。むしろオーバーハングの延長などによって、容量自体はISセダンよりも確実に広く感じられます。

また、メタルトップ車の多くは、ラゲッジスペースが機械的な印象が強くやや乱雑な雰囲気がするのですが、このISCはその中でもキレイかつスマートなトランクルーム内の処理がなされているのもポイントです。

搭載されるエンジンは、その車名の通り2.5LのV6。6速ATが組み合わされる点もセダンとなんら変わりありません。車重はセダン比+160kgとなって1700kgをオーバー。4座オープンというキャラクターを考えれば、それでも必要十分以上の性能は確保している事でしょう。3.5Lエンジン搭載モデルも気になるところですが、オープンとしてのボディキャパシティを考えると、現状の2.5Lがおそらくベターな選択なのでは。

サスペンションはISC専用にセッティングされており、タイアサイズは17インチ、18インチともにセダンと共通サイズ。アルミホイールのデザインも専用となっており、見た目だけで言えばやはり18インチのまとまりの良さに惹かれます。

ブレーキもIS250と共通。しかしここは大幅に重量増をした事を考えると、2.5Lでも350用のフロント4ポットキャリパーを備えるブレーキを奢るくらいのこだわりが欲しかったところ。

ボディカラーは新色のレッドを含めて9色。IS−F専用のブルーを選べるのもポイント。そして注目は内装色。ヌバックファブリックのシートの標準仕様はホワイト・ブラックの2種類からの選択になるのに対し、本革シートが標準となるバージョンLでは、なんとシート色だけでも5種類。ブラック・ホワイトに加え、ホワイト×ブルー、ホワイト×レッド、ホワイト×シルバーという、国産車のこのクラスではなかなか見られない大胆な配色の数々。

これも、オープンモデルだからこそ。内装を「魅せる」という点ではアピール度の高さは抜群。また、ブラック・ホワイトのシートカラ―を選んだ場合は、オプションでステッチのカラーをブルー・キャメル・レッドの3色から選べるこだわりも。

レッドやブルーはさすがにちょっと恥ずかしい、と抵抗のある方は、オプションでステッチカラーを選択して、さりげないこだわりを見せるというのもオシャレなチョイスです。また本木のオーナメントパネルもシート色ごとに3種類選択でき、内装の基本的な選択種類だけでもバージョンLは28種類!の中から、自分の好きなコーディネートを選ぶ事ができます。

価格は標準仕様が495万円、バージョンLが+40万円の535万円。装備の差はほとんどなく、言うならば40万円のほとんどがセミアリニン製の本革シート代。しかしながら、先述した多彩な内装色の選択範囲の広さは、こういったオープンモデルを買うユーザーにはとても魅力的なはず。ここはやはり断然バージョンLがお勧め、となるでしょう。

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ライバルとなるであろうBMW3シリーズカブリオレは、3Lターボモデルのみの設定なので、価格はほぼ倍。同価格帯ならボルボC70、フォルクスワーゲンEOSあたりがライバルでしょうか。スカイラインクーペのコンバーティブルモデルが入るまでは、国内には4シーターオープンの競合車は不在。いやむしろ、最大のライバルは、もう8年選手となる身内のSCかもしれません。

時代に合う合わないは別として、こういったプレミアム感漂うオープンカーは大変魅力的。ISのセダンが実用性に乏しいので、ここはクーペとして割り切ってこのISCを選ぶユーザーも出てくることでしょう。レクサスには今こういったラインナップの充実が何よりも急務。そして次はハイブリッドモデル専用となるHSの登場、今後もレクサスにさらに注目していきたいと思います。



<レポート:岩田 和馬>
posted by 親方 at 17:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月07日

ホンダインサイト 再インプレッション

前回のレガシィの時も書いたように、今年最大の注目モデルとも言っていい3代目新型プリウスにとって”唯一”と言えるライバルは、間違いなくホンダインサイトです。価格面や性能面も加えてハイブリッド競争はますます熾烈化しそうです。

インサイトについては登場直後、実車チェックと簡単な試乗インプレッションをレポートさせて頂きましたが、注目度が高いモデルの上、前回のレポートでも現ハイブリッドオーナーの方々からも様々な貴重なご意見をコメントで頂きました。

その際に指摘があった、まだまだ自分の見識と感受性の未熟さの意味を込めて、今回は短時間では見えないインサイトの素性を見るため、1日しっかりと様々なシチュエーションで走る機会を設け、改めてレポートしたいと思います。

約500kmを走る事で、前回では見えなかった様々な部分が垣間見ることができ、以前レポートした際とは真逆に感じた点も見受けられました。

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画像の通り、乗ったのはベースモデルのG。アラバスタシルバーメタリックは、個性的なインサイトを少し地味な印象に埋没してしまう感じでしょうか。シートカラ―はブルー。カラーによってシート色の組み合わせが限定されるので、購入検討される方は注意です。

まず乗りこんで感じるのは、やはりヒップポイントの低さ。Aピラーもグッと寝ていて開放感や広々感は皆無ですが、これをスポーティと取るか、ただ狭いと感じるかで評価は分かれそうです。リアシートの狭さは問題だと思いますが、最近の車ではあまり見られなくなった、足を前に投げだす格好となるポジショニングに好印象を覚えました。

Aピラーの形状も十分に考えられ、視界の広さも問題ありません。縦2段重ねのマルチスプレックスメーターは、人によってはステアリングとの位置関係で干渉する可能性もあるようですが、自分の場合は問題なし。テレスコピック機能がベースモデルから標準で装着されるのは大変評価したい部分で、ホンダ車に多く見られる「足の長さをペダルに合わせると、ステアリングが遠い」感覚は感じられません。ただステアリングのグリップの太さ・握りの良さは非常にいいのですが、やはりデザインはいつまでたっても慣れませんでした。

さて、まず最初は一般道をメインに、ECONモードはON、アクセルワークに気を遣いながら走り始めます。メーター内にあるマルチインフォメーションディスプレイには、コーチング・ティーチング機能の様々な表示が可能。運転中の凝視は厳しいものがあるものの、ディスプレイの切り替えはステアリング右側のスイッチで操作でき、利便性は○。

これなら純正HDDナビを装着せずに簡易ナビを装着したとしても、インサイトのエコドライブの楽しさは十分味わえるでしょう。以前気になったややオフセットしたナビ位置ですが、やはり少し操作の際には若干ドライバー側からは遠い印象があります。純正ナビが、ホンダお得意のジョイスティックを用いた操作系を採用していえば、さらなるインターフェイス面での優位性を見出せたのですが、やはりコスト面で難しかったのでしょうか。

走りの方ですが、動き出しはスムーズかつ軽やか。旧型フィットと同じトルコンを内蔵しないタイプCVTは、いまやそのクラッチの断続の際に感じるギクシャクさを感じる事は全くなし。また低速時に急に重くなる傾向があった電動パワステの違和感も減少しています。ただそのフィーリングはやはりまだどこか人工的で、路面とのコンタクト性に関してはまだまださらなる熟成を望みたいところ。

ECONモードONの状態だと、始動後しばらく走って停車すると、時速10km/hを切るあたりでエンジンがストップ。しかし以前ご指摘のあった通り、エアコンON状態だとアイドルストップ時間はやはり短くなっているようです。この時期なのでまだ影響は少ないものの、真夏の炎天下ではやはりベルト駆動のエアコンを採用する限り、影響は避けられないでしょう。

また、これは長時間乗っていて気がついた事なのですが、停車時にアイドリングストップをさせるためには、ブレーキをある一定力以上踏み続ける事が必要。「アクセルを踏む事」ではなく「ブレーキを離す事」によってエンジンが始動するホンダ方式のハイブリッドの特徴なのですが、信号待ちなどで少しでもブレーキを緩めてしまうと(それでも発進はせず、ブレーキランプもついている状態)、すぐにエンジンが始動してしまいます。

ブレーキをなるべく一定力以上で踏む事が、結構な足への負担となって後々に響いてきました。個人的な癖で、普段停車時にはニュートラル&サイドブレーキを使用して停車時間を過ごす事が多い事もあり、エコランのための丁寧なアクセルワークをする事よりもよっぽど疲れてしまいました。もちろん、ある程度止まる時間が見込まれるなら、キーでエンジンを止めればいいのですが……

ホンダ方式のハイブリッドは、低速時でもエンジンが始動しており、トヨタ方式のハイブリッドで問題となっている「低速走行時のモーター走行領域で、静かすぎて周りの歩行者が車の存在に気付かない」という事はありませんが、やはり動いたり止まったりする渋滞などでは、エンジンがついたり消えたりと非常にせわしなくなります。

ここはあくまでも「モーターがついたガソリン自動車」であり、プリウスのような「エンジン付電気自動車」のようにならない最大の違い。個人的には、ホンダ方式でせめて動き出し10km/h程度までモーターのみの走行ができれば、随分と心理的にも燃費的にも変わってくると思うのですが、難しいところです。

とは言うものの、いつもより少しアクセルワークに気を遣い、上手くエンジンブレーキを多用して、加速時にはメーター左側のモーターアシストの状況を気にしながら運転していると、燃費はグングンと伸びていきます。

葉っぱの数で運転の状況を診断してくれますが、5枚満点状態にするのはそう難しい事ではありません。エアコンON、3名乗車、天候は雨とコンディションは良い方ではありませんでしたが、メーター上の燃費系の数値は、走り始めから23km/L付近で落ち着いていました。

さて、ここからステージを高速道路へ。本線合流への加速は、バッテリーの状態を確認した上で、ECONモードを解除しシフトをSレンジへ。アクセル全開でエンジン回転数は6000回転キープ、モーターのアシスト全開という状況も試しましたが、ここまですればインサイトは高速道路でも十分に流れをリードできる動力性能を持ち合わせています。3名乗車ながら、この状態だととても1.3Lのクルマに乗っているようには思えません。

しかしながら、ここまですれば当然燃費は急降下。アンビエントメーターは真っ青に。もうこの時点ですっかりアンビエントメーターの色変化によるコーチング機能にドライバーは洗脳されています。メーターがブルーになる=悪。すぐにDレンジ、ECONモードをONにして、エコラン走行を再開。

先ほどのようにフル加速体制を整えなくても、通常域であれば必要十分の加速は披露してくれます。加速の際は、できるだけメーター色を「ブルーグリーン」に保ちつつ、じわじわと速度を上げていくのが燃費上で有利なように思えました。

クルマの流れは比較的スムーズで、80〜90km/hとちょうど燃費に一番良さそうな状態でエコラン。アクセルは常にほぼ一定なものの、アシストメーターを見ると、じわりとモーターアシストをしたり、じわりとバッテリー内へ回生をしていたりと、かなり細かく頻繁に制御しているようです。

少しアクセルを踏み足すと、モーターがしっかりとアシスト。しかしながらバッテリー内へ回生しながら加速を試みても、アクセル開度が少なければ、さほど大きな体感差はありません。ここはやはりエンジンの存在が大きいホンダ方式のハイブリッドシステムらしいところでしょう。

一度、長く続く急傾斜の際に、モーターが空になりアシスト切れになる状況にも遭遇。キツイ登りでアシストが切れ、強制充電が始まってしまうと、さすがに力不足感は否めませんが、アクセルをグッと踏み込めばそれなりに十分な加速をしてくれます。

また、エンジン音についてもプリウスのそれと比べれば、「音量」自体はインサイトも結構賑やかなものの、「音質」に関しては幾分サウンドとして聞こえる部分もあり、このあたりエンジンがかかると途端にガサツに感じられる現行プリウスと比較すれば、若干スポーティな印象がインサイトからは感じられます。

先ほどの制御カットのフル加速状態が追い越しをする際に数回、登りでのアシスト切れが1回あったものの、それ以外は走行車線で落ち着いて走った結果、燃費計で今回ベストの24.9km/Lを記録。3名乗車でエアコンON状態なら、なかなかの数値でしょうか。もっと真剣に走れば、30km/Lもそう難しくはないのでは?と思います。この時点でも当然葉っぱは5枚状態。

ここで気になるのは、そのハイブリッドに関するパワートレーンではなく、肝心のシャシーの方。タイヤサイズは純正15インチタイヤ+ホイールキャップというスタンダード仕様。それでもやはり乗り心地は硬め。

それ以上に、高速道路走行中、とにかく直進性を保つのに神経を使わされました。前後のサスの動きが一定ではなく、車線変更時にもステアリングの操作に対して、リアがワンテンポ遅れて追従してくる印象。加え、とにかく横風に対して進路が乱され易い。こんなに車高が低いのになぜ?

おそらくは複合要因なのでしょうが、まずは足周り。前後でプラットフォームが違うクルマは最近珍しくないので原因ではないでしょうが、このインサイトの車重に対して、シャシー自体のキャパシティがギリギリな印象があります。

ギャップなどで進路を乱され易いのは、バネレートやダンパーなどの種類やセッティングの影響ではなく、おそらくブッシュ類で無理やり動きをしっかりさせようとする弊害が、この速度域に出ているような印象。

タウンスピードでは気づかなかったものの、リアハッチの開口部が大きい分のボディ剛性の不足感も、ちょうど100km/以下付近の領域あたりから感じ始めます。空力に関して気を使ってはいるのでしょうが、意外と横風に関してはハッキリと弱いと言えます。

その証拠に、スピードをもう一段階上げて、追い越し車線の流れをリードするペースで走ると、途端に不思議とピタッとクルマの挙動が落ち着いてきます。足の動きやダンピングも一定になり、ステアリングの座りもドシっと安定。

風切り音も一定になり、加速がスムーズになったような気さえします。しかしながら、当然この速度域で走り続けるとオービスや覆面パトカーへの心配も増しますし、何より燃費にモロに影響してきます。

ハイスピード領域での操安性はなかなかのものが見られ、1.3Lハイブリッドでも十分なハイスピードクルージングが可能な事が確認できましたが、インサイトの性能やキャラクターを考えても、本来もっとも燃費に効く領域で走りやすく安定したセッティングをセットアップするべきだったのでは。今回乗った限りでは、エコラン速度域がもっとも運転で神径を使ってしまうという、本末転倒な印象を率直に受けました。

街乗り領域だけなら問題ないものの、3時間を超え始めると途端に体に痛みが。ホールド性はそこそこなものの、シート自体もやはり長時間乗ると△。また、途中30分ほど後席にも座りましたが、絶対的なスペース不足はもちろん、シートサイズも178cmの自分には、特に座面長は明らかに不足気味。

後席からだとさらにクルーズ状態の直進時の車自体の特異な動きがより感じられ、全く落ち着きませんでした。一応リアドアはあるものの、基本的な大人が後部座席をよく使うというのであれば、その乗員性やヘッドクリアランスも含めて、インサイトはお勧めできません。

高速走行が終わり、再び一般道へ。ここでは少し軽いワインディングなども含まれたコースなので、積極的にアクセルを踏む運転スタイルへと変更。先ほどはほぼ常時ECONボタンON状態でしたが、今回は加速したい状況では積極的にスイッチを切るようにして走りました。

ON状態でも一般的な加速には十分でしたが、やはりスイッチを切った方が3割増しくらいのイメージで加速がより俊敏に。とくに30〜60km/hの加速区間などは、アクセルに対するレスポンスが見違えて良くなります。

この変化はメーター上でもはっきりと分かり、ON状態だとメーター色はグリーン→ブルーグリーン→ブルーと変化していきますが、OFF状態だとグリーンからすぐに濃いブルーへと変化。中間のブルーグリーンの状態がほとんどなくなる事が分かります。

その代償として、当然燃費は悪化傾向。しかしながら落差はわずかなもので、これならこの動力性能を引き換えにしてもいいかも、と思うレベルです。しかしながらバッテリーの残量への影響はハッキリと出ていて、アイドルストップの時間・回数ともに大きく減ります。

やはり本来は、ECONモードONがデフォルトなのでしょう。それならばむしろ最初からこの領域を標準とし、OFF状態をスポーツモードなどのようにした方が分かりやすかったのでは?実際走り始めると、スイッチの使い方をそういった感覚でON・OFF操作していました。

スイッチ自体は大きく分かりやすい場所にあるものの、本来はわざわざドンとかまえなくても、ステアリングやシフトノブにスイッチは配置されたほうが、操作性はより良い気がします。

さて、高速走行時では辛口になってしまいましたが、ワインディングになるとこのインサイトは俄然魅力を増してきます。リアにバッテリーを搭載することで、ノーズの反応はFFとは思えないほど軽やか。フットワークも軽く、こういった場面ではキチンと足がストロークしつつロールを抑え、動きが一段とシャキッとします。

一方、停車中や交差点での違和感はほとんどなくなった電動パワステの違和感はこういった場面で顔を出すのが残念。例えば右コーナー旋回中に障害物を発見、左へステアを切って回避、そしてまた右へ素早くステアし車線に戻る、といったダブルレーンチェンジのような時、素早い動きに対して電動パワステのアシストが追いつかなくなり、一瞬不自然なほどステアが重くなったりする現象が起こります。

ここはまだ容量自体が足りていない証拠でしょう。もっとも、ここまで求めるのは酷かもしれませんが、インサイトはそういった動きを軽やかにこなしてしまうポテンシャルの持ち主。ここは甘く見ず、いずれしっかりと対策をしてくれれば、ただ単にエコである事だけがインサイトの持ち味でないと、よりアピールできるはずです。

また同時に、ここまで身のこなしが良いとなると、今度はバッテリーの重量分が悪さをしてリアのスタビリティが心配に。いざという事を考えても、VSAの装着は是非マストでお勧めしておきたいところ。またこういった場面でもブレーキ時の違和感はほとんどなし。バッテリーがフル充電して、回生力がなくなる瞬間にブレーキのタッチが変化するのは少し慣れが必要かもしれませんが、プリウスのブレーキよりは格段に違和感なく扱えます。

そして再びノロノロ運転の市街地走行へ。狭い道に出くわすと、このインサイトの5ナンバーにこだわったボディサイズが威力を発揮。やはりすれ違いや細い路地など、このインサイトのサイズ(特に全幅)は日本で乗るにはベストサイズ。それだけに、リア斜め後方の大きな死角は非常に残念。インサイトではデザイン的なバランスが難しいのでしょうが、ここはクォーターガラスを設置するプリウスのほうが一枚上手のようです。

今回のGタイプはHID未装着車。プロジェクター方式のハロゲンヘッドライトは久々だったのですが、お世辞にも明るいとは言えず。ここは先述したように、GにはHIDとVSAがセットでオプション。価格がポイントのインサイトながら、この2点は是非一緒に装着しておきたい装備だと個人的には思います。

最後に、燃費報告。計測は満タン法。出発前にセルフスタンドにて、給油口ギリギリまで満タンに。計測時も一気にガソリンを入れるのではなく、セルフスタンドにてチョロチョロ入れ、再び給油口付近まで満タン。誤差が多い計測法ではありますが、できる範囲で正確な数値を出そうとした点はご理解願いたいと思います。

乗車人数は3名、平均時速は時速59km、一般道が3割、高速道路が7割。またそのうち全体の2割程度でECONモードをOFFにして、積極的にアクセルを踏み走ったとお考えください。なおエアコンは、全行程時間の30%程度使用しました。

結果は、走行距離483kmで、ちょうど22.00L給油。単純に割ると、21.95km/Lとなります。この時点でのインサイトの車内燃費計の値は22.3km/L。コーチング機能の葉っぱの数は、ワインディングを少し活発に走った結果1枚なくなり、その後の市街地走行で半分復活、給油時点で4.5枚の成績でした。

同条件でプリウスと走り比べていないので比較はできませんが、個人的には予想よりもいい数値だったのではないかと思います。1名乗車で常時エコランを意識し続けていれば、今回の数値よりもはるかに上回る事は可能でしょう。今回はやや高速道路部分が多く平均時速も高めですが、ほぼ日常的な使い方ならば、おそらく20km/L弱程度の実用燃費は確保できそうです。

51_BARKS1000048798.jpg

今回約500km弱インサイトに乗ってみる事で、短時間で見えない部分も多く見られました。しかし、基本思っていたよりも「運転が楽しい」と感じる事が多かったような気もします。セッティング不足が露呈した部分があったり、思わぬ加速性を堪能したり、ワインディングの動きは予想以上によかったり、色々感じる部分はありました。燃費性能に限っていえば、十分素晴らしいものの、やはりプリウスと比較してしまうと、とくに市街地燃費ではやはり厳しいハンデがあるのも事実でしょう。

「楽しい」と感じる部分は、プリウスよりも多かったのでは。制御自体はプリウスも未来感たっぷりですが、インサイトのアンビエントメーターによるコーチング機能は、思っていた以上に分かりやすく、楽しく、そして癖になってしまうものでした。

フィットワークの良さを堪能しつつも、ブルーに輝くメーターを見れば完全に罪悪感に苛まれるばかり。VTECをガンガンに効かせて楽しむ方向もあれば、アクセルを踏まない事を楽しく考えながら挑戦できるこの新たなインターフェイスの考えは、全く違った新たなドライビングの楽しさの意欲的な提案の1つなのでは。ハイブリッドであるなしに関わらず、是非インサイト以外のホンダ車にも広めていって欲しいと思います。


<レポート:岩田 和馬>
posted by 親方 at 04:11| Comment(13) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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