2009年11月09日

三菱・スバル 2ペダルホットハッチ試乗レビュー

再びTMS試乗特集です。
長年バトルを繰り広げてきた三菱・スバルから、エボVSインプ…ではなく、それとは少し趣が異なる「2ペダル実用ホットハッチ」対決と評して、2台それぞれのインプレッションをお届けします。


○ギャランフォルティススポーツバックラリーアート
車名の長さに定評のある三菱からは、このプチ・ランエボとも言えるギャランフォルティスSB・RA。はっきり言って地味な存在ではあるものの、ターボエンジン+AWD+ツインクラッチを新車約300万円で味わえると考えると、なかなか見るべきポイントが多い1台です。

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スタイリングがボディ自体はフォルティスと同じナロー仕様で、ボンネットはエボ用、バンパーはそれぞれの特徴をもった専用品。バッテリー移設などでトランクスペースが削られてしまうエボとは違い、RAはあくまでベースモデルと全く同じスペースを確保。加えてこのSBならさらに実用度が増します。ただこちらのSBはRAでもリアスポイラーがオプション。レスだとかなり貧弱さが感じられるので、ここは是非とも装着しておきたいところです。

インテリアも基本はフォルティスの延長線上。北米仕様はステアリングもエボと共通となるのに、日本仕様だけそうではないのは不思議な点。シートもRECAROではなく、メーター付近も大人しいもの。しかしスピードメーターはフルスケール品を奢っているあたり、羊皮狼の要素が。フォルティス自体が戦略的な価格設定をしているだけに、質感の面では300万円級という事を考えれば少し物足りなさを感じてしまうのは仕方ないところであり、特にウインカーレバーの悲しくなるほどの安っぽさなどは、ある程度覚悟が必要です。

エンジンは4B11ターボで240ps。AWDシステムはAYCがなくACDのみセッティング可能で、TC−SSTの切り替えも「ノーマル」「スポーツ」の2種類のみ。エボにある「S−スポーツ」モードはありません。

しかし、街乗り領域ではこれでも十二分の性能。エンジンは官能性という部分ではイマイチながら、抜群のトルク感とここ一番のパンチ力など、三菱らしい骨太さを感じさせてくれる加速感。SSTもパドルを弾けば間髪入れずにシフトアップ、ダウンを繰り返し、スポーツモードでは街中を走るだけでは全くシフトアップを受け入れずにエンジンぶん回しモード。

またそういった場面だけでなく、このSSTはツインクラッチ車が苦手とする街乗り領域…特に発進直後や微低速でのスロットル開閉に対してもクラッチ制御が実にナチュラルかつスムーズで、トルコン式AT車と比べてもなんら違和感なし。この部分ではVWのDSG・アウディのSトロニックに対しても全くヒケをとらないどころか、マナーの良さでいえば一枚上手。この完成度の高さには正直言って驚きました。

唯一物足りないとするならば、ブレーキ。エボより車重は上回るものの、エンジンやタイアサイズと共にブレーキもノーマル2ポッドキャリパーへとグレードダウン。よってペースを上げると常にストッピングパワーが不足気味なのが顕著に感じられてしまうのが少々残念な点。

同乗して頂いたラリーアートの社員さんの方も同意見で、このRA専用のブレーキのポテンシャルアップのために、ラリーアートから専用のパッドを販売するまで1年、開発とテストの時間を注ぎ込んだとの事でした。ちなみにこのパッドはフロント・リアセットで約43.000円。ブレンボ移植は無理でも、もう少しブレーキを…と思うRAオーナーの方にはお勧めのアイテムと言えるでしょう。

ランエボとギャランフォルティスの狭間で中途半端感は少し否めないものの、考え方を変えればスポーツ度と実用性のバランスの高さで言えばある意味かなりおいしいとも言えそう…?羊皮狼的な要素がより強いのも、やや偏屈な趣向がある自分としてはなかなかそそる1台でした。


○インプレッサSTI A−Line
「新型レガシィが登場して以来、やはりうちの他の車種は軒並み前年割れしているんですが、このクルマだけが逆に販売台数を伸ばしているんですよ。笑」

同乗したスバルの方から教えてもらった、今密かに(?)かなりの人気を集めつつある、このインプレッサSTIA−Line。5代目となった新型レガシィはいろんな意味で賛否両論、新型を見に来て少し戸惑いを覚えた従来のレガシィユーザーが、ついでの気持ちでこのA−Lineに試乗、そして思わぬ出来の良さにこちらの商談へ…という流れが、どうやら全国のスバルでちょくちょく見られているようです。

登場時にもここでかなり注目していたこの1台。軽くこのモデルを振り返っておくと、見た目はブレンボキャリパーが装着されない以外は通常のSTIと全く同じ。エンジンは300psの2.5Lターボに5速ATが組み合わされ、LSDの変更やDCCDが装着されないなどの差別化がなされています。そして価格が驚きの315万円。ホントは最近登場したスペックCに惹かれつつ、奥さんや家族が乗る事を考えると…と本音と建前の間で揺れるスバリストの心を上手くついた1台、それがこのA−Lineの特徴と言えるでしょう。

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乗ったのはオーディオレス仕様の「素」状態のA−Line。ちなみにブレンボキャリパーやBBSホイールもオプションで装着可能で、ATでもまだまだ走りを諦めたくない!というオトーサンにも選択肢が幅広く残されているのは嬉しいポイント。

オーディオはないものの、その他は全てフル装備状態。VDCにサイドエアバッグ、パワーシートも標準装備(年改で6MTのSTIにも標準となった)。レガシィ共々、スバルユーザーの年齢層向上を実感しつつ、シフトブーツの装着で上手くスポーティ感と高級感を演出したシフトノブをDレンジにして、試乗開始。

すっかりお馴染みとなったSI−DRIVEは、ベースのインプレッサには装着されていないので、ATのインプレッサに組み合わされるのはこのA−Lineが初めて。ちなみに新型レガシィはエンジンスタートで「I」モードがデフォルト設定されていますが、こちらは「S」がデフォルト。300psにアップされたエンジンといい、こういった部分にSTIらしさがまだにじみ出ています。

どっしりとした操舵感のステアリングを握って走りだすと、硬めではあるものの意外にも乗り心地は快適そのもの。タイアがBSポテンザのRE050であるのもその印象を強めているでしょう。SI−DRIVEをI状態にするとスロットルに対する反応はかなり穏やか、しかしむしろ街乗り領域ではこれくらいのほうが神経を遣わずに済むでしょう。

とはいってもSTI、試乗時間も短いのですぐにSモードへと戻し、再び発進加速。ターボラグは全く感じられず、特に低〜中速域でのピックアップの良さが印象的。これは新型レガシィも同じく、+500ccの排気量アップが大きな効果として表れています。また新型レガシィほど静粛性が高くないので、耳に心地よいエキゾーストサウンドが響いてくるのも「らしさ」でいえば○。それでもこの車単体で見れば十二分に静かで快適なGTカーです。

さて、そろそろSI−DRIVEのスイッチを右に回してS♯へ、パドルを弾いて2速で全開加速!すると抜群のトラクションの良さを感じながら、ボクサーサウンドを響かせてあっという間にレブリミット!車重は重めながら、300psのパワーはキチンと体にGとして実感できます。

こういった場面で残念なのは、6500回転とやや低めのレブリミットと、トルコン式の5速AT。エンジン回転もトルク許容も、おそらくこのATが対応できる限界の数値なのでしょう。ATの制御もトルコンとしては歯切れがよく、シフトダウン時のブリッピング機能もなかなかの雰囲気…ですが、やはり最新式のツインクラッチ式2ペダルの魅力を味わってしまうと、正直物足りなさが感じられるのは事実。5速ということで2〜3速のステップ比が広めな点など、スタイリングやエンジンの雰囲気が大変良いだけに、スバルのATの進化の遅れがこのA−Lineでは特に顕著に感じられてしまいます。かといってリアルトロニックCVTを積むわけにもいかず、難しいところです。

最初5ドアとなったインプレッサを見た時の抵抗感も相当なものがありましたが、新型レガシィを見てしまった今では、なかなかどうしてこのA−Lineの「いいとこ抑えてる」感には非常に心グッと掴まれるものがあります。そういえばショーで展示されていたカーボンルーフ仕様のSTIも、このA−Lineがベース。生粋のスバリストとしては名高いSTIブランドの投げ売りだと悲しくなるかもしれませんが、今の時代そんな綺麗事を言っている場合でもないのかもしれません。

個人的には変にWRXやSTIのイメージを拭い去ろうととはせず、こういったモデルで上手くスバルのブランドイメージを浸透させていく手法には、大いに賛同する部分があります。本音ではスペックCを試してみたかったものの、サーキットやダートだけがSTI活躍の場ではない…このA−Lineの魅力を改めて味わう事ができ、収穫が多いテストでした。


レポート 岩田和馬


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2009年11月07日

シビックタイプRユーロ登場!

ついに…ようやく…。様々な個人的想いが交錯する中、金融危機に端を発して以来、延期の連続となっていた欧州仕様のハッチバックのシビックが、「シビックタイプRユーロ(FN2)」としてついに日本導入されました。

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注目の価格は298万円。これでも4ドアタイプR(FD2)よりもやや高めではありますが、ホンダとしてもなんとか300を切るべく相当な努力がなされたことでしょう。2010台の限定販売で、売り切れ次第販売終了。ボディカラーはミラノレッド、アラバスターシルバーメタリック、そしてタイプRお馴染みのチャンピオンシップホワイトの3色のみ。そして、当然6速MTの設定なのは言わずもがな。

TMSの会場に展示されていたのは、チャンピオンシップホワイト。ちなみにこの色をチョイスするとホイールも同色に塗られるのは、歴代タイプRの公式通り。他2色はシルバー塗装となります。

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現行モデルのデビューは2005年。その前衛的かつシャープなスタイリングはまさに「新世代シビック」を名乗るに十分な魅力を備えていました。しかし…かつてのシビックのポジションは今ではすっかりフィットが担っており、その結果国内市場のシビックは4ドアセダンのみに。こちらもセダンとしては先進的なプロポーションを持ち合わせてはいましたが、いかんせんどう見てもオジサンくさい車となってしまった事は否めませんでした。

その後タイプRとハイブリッドの相反するキャラクターを1台のバリエーションで賄うという、世界的に見てもかなり貴重な存在となりましたが、シビックを名乗るのに相応しいかどうかと尋ねられると…。別に4ドアセダンに大きく抵抗があるわけではなく、純粋にそのセダンとしてのスタイリングにも大きく疑問が残っていました。アメリカ人好みに合わせたのかな、と思いきやあちらはあちらでもっとシャープなフロントフェイスを持つ専用デザイン。FD2型タイプRと圧倒的とも言える高い戦闘力をいくら持ち合わせているとは言え、どう考えてもそのスタイリングや「三角窓があるスポーツカー」などには、心惹かれる事はありませんでした。

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そんな中欧州仕様のハッチバックのシビックは、国内からも導入待望論が湧きあがっていたのはご存知の通り。そして今回、デビューから4年、タイプR登場からは2年の時間を経て、台数限定という形で日本での販売がついに実現。いかんせん「遅すぎるわ!」とも思ったりもしますが、クルマ自体の洗練度や斬新さは、すでにモデル末期に突入している事、日本の街中でまだ見慣れていない事を差し引いても、十分魅力的に映ります。

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すでに周知の事実ではありますが、この欧州シビックは先代フィットがベース。つまりセンタータンクレイアウトであり、リアサスはトーションビーム。「フィット・タイプR」だと揶揄する声もありますが、スポーツカーにはやはり色気や雰囲気、個性が大事。そういう事を考えても、また「シビックらしさ」ということを考えても、やはりこの欧州仕様ハッチバックのシビックこそが本流と考えて良いでしょう。

さて、実車に触れた印象を少しお伝えします。デザイン性と実用性のバランスに優れた特徴的なドアノブを握り、ドライバーズシートへ。いわゆる「RECAROシート」に「MOMOステアリング」というタイプRの代名詞とも言える逸品がすでに純正品へと変更を受けているのはセダンと同じ。シートは専用のバケットタイプで力は入れられていますが、せめてステアリングくらい専用品を奢ってもらいところですが、ここはコストの関係もあるのでしょう。

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インテリアの質感は並レベル。しかしメーターの視認性は良く、セダンほどキャブフォワードが強調されていないので、ダッシュボードの無理な奥行き感も気になりません。ただ後付けでカーナビを装着する際には難儀しそうなインパネデザインではあります。凄いのはエクステリアと同様に、登場から4年経過しているにも関わらず古臭さがまったくなく、むしろ今でも十分に斬新で未来的に感じられるデザイン力の高さが伺えます。

シートに座ると、ポジションは少し高め。これは「センタータンクレイアウト」であるが故の宿命的ポジションではありますが、本音を言えばもう10〜20mmシートポジションをおとしたい…という気持ちは、オーナー自らが手を加えて改善するしかなさそうです。

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そのかわりにフィットから譲り受けたのは、その実用性の高さ。リアシートはエマージェンシーではなく、むしろ積極的に広いと言える空間が確保されており、ヘッドレストも独立調整が可能。加えてラゲッジスペースは床下の容量を含めると485L!シートアレンジやフロアの低さ、開口部の大きさも文句なし。もちろん赤バッヂで実用性うんぬんを語るのは少しお門違いではありますが、これならばホットハッチとしてファミリーユースでの使用も全く不満なしでしょう。

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もう1つ、果たしてこのシビックが赤バッヂをつける資格があるのかどうか。それはFD2のセダンとのキャラクター分け、そしてRの後につく「EURO」という言葉が物語っています。

エンジンはお馴染みのK20Aですが、最大出力は201psと、225psの国内から比較すればかなり控えめ。Rユーロはバランサーシャフトを装着し、若干ながらVTECのカムの切り替えポイントも下がっており、ピークパワーよりもフィーリング面を重視したセッティングをしているようです。ちなみに「タイプRユーロはレギュラー対応だから」との噂もありましたが、実際はプレミアムガス対応となっています。クロスレシオが図られた6速MTは、ストロークは若干長めに感じるものの、カチカチっとしたシフトフィーリングは○。

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足回りは先述した通りフロントストラット・リアトーションビーム。注目したいのはこちらも「ユーロ」の名の目指すセッティングの狙いで、サーキットでは最高でも街中ではガッチガチなFD2の方向を目指してはいないということ。絶対的な戦闘力の高さではなく、いわば「ワインディングベスト」ともいうべきセッティングの方向性が見てとれます。タイプRシリーズで初めての事となるVSAの標準装備化もそれを物語る要因の1つ。

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ダンパーは定評のあるザックス製。タイアサイズは同じ225/40R18ながら、セミ・スリックとも言うべきBSポテンザRE070ではなく、より全天候型のバランスを重視したポテンザRE050A。ブレーキもブレンボではなく、通常のスチールブレーキであるのはDC5とEP3の差別化方程式にのっとったものです。時代を考えれば15→17→18と順当ではありますが、走り好きとしてはその後のランニングコストも考えると、16〜17インチ程度でもよかったのでは…と感じるのは正直なところではあります。

ボディサイズは4ドアセダンよりもやや短く、幅広く、背高。そしてポイントとなるのは車重。見た目はセダンよりも明らかに軽快な印象ですが、実際は1320kgとFD2タイプRよりも60kg重くなっています。徹底的に軽量化が図られたセダンとは違い、防音材やVSAの標準化など、キャラクターの違いが明確に現れています。価格は高く、パワーで劣り、足回りで劣り、車重は重め…。ホンダファン、タイプR愛好家は、この事実に少し首を傾げたくなるかもしれません。

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ようするにこれは、ホンダからのまた違ったタイプRの目指す方向性の提案が形になったものなのかもしれません。このRは「Racing」のRではなく、「Real」のR…今回あえてそう表現したくなる、それが今回のシビックタイプRユーロの新しさと魅力なのでは。

そういえば来年には、ハイブリッドスポーツのCR−Zが登場予定。しかしこちらがどうやら250万円近い価格になるとの噂。いくら燃費が良くても次世代の新たなるスポーツカーの提案だとしても、この魅力的なホットハッチが300万円以下だと考えると…?そういったことも含めて、CR−Zについては、また後々レポートしたいと思います。

正直な話、今回のTMSで個人的に「乗り逃げしたくなる!」と感じたのは、FT−86とロータスエリーゼ、そしてこのシビックタイプRユーロでした。すでに限定2010台が完売間近な事と、貧乏学生が今300万円を超える大金をすぐに用意できるわけない現実が、たまらなく悔しい…久々に喉から手が出るほど欲しい、そんな気持ちを抱いた1台でした。


レポート:岩田 和馬
posted by 親方 at 00:28| Comment(5) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月05日

TMS特集〜アイミーヴ試乗〜

09年TMSが11月4日で閉幕しました。入場者数は前回比で6割減、目標の100万にも大きく届かない約60万人…開催日の短縮や出展社数の激減を考えれば妥当な結果かもしれませんが、今後の経済状況によっては2年後に再び東京モーターショウが開催される事自体厳しくなっていくのかもしれません。

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しかしながらそんな寂しい寂しいと叫ばれる中でも、今回がTMS初参加だった自分としては、やはり楽しかったの一言に尽きます。見方を変えれば自分のような免許取って数年、ハタチ前後のクルマ好き、またはその予備軍はたくさんいる事は一般公開で数多く見られた風景。BSやトヨタのF1撤退など寂しいニュースが続きますが、ぜひまた2年後再び活力を取り戻してTMSが華々しく開催してもらえる事を願うばかりです。






GT−R、フェアレディZロードスター、そしてマークXとTMSでの試乗レポートをお届けしてきましたが、引き続き他にも味見したクルマの印象をレポートしたいと思います。


○三菱アイミーヴ
これも個人的にはかねてからずっと乗ってみたいと思っていた1台。ガソリンエンジンのiも個人的には登場以来チャンスがあれば何度も試乗するほど気に入っており、デビュー当時衝撃的だったスタイリングはいまでもまだまだ斬新かつ新鮮。スタイルはプリウスよりはるかに未来的…と思っていましたが、このアイミーヴは中身も含めてまさにこのi本来の持つべくコンセプトの良さをフルに発揮させていると言えるでしょう。

さて試乗開始。ベース車との違いと言えば、その特徴的なカラーリングを除けば、前後のLEDヘッドライト・テールランプ程度。MCによってフロントバンパーの塗装処理が格段に安っぽくなってしまった点も、このアイミーヴは引き継いでしまいました。フロントワイパーの形状変更や車重増に伴うブレーキ径の拡大など、細かい点も変更されています。

ドアを開けて乗り込んでも、メーターとシフトまわり以外はiと何も変わらず。パッケージング面で何も犠牲になっていない点も、このアイミーヴの魅力を際立てせるアドバンテージです。

エンジンに火を入れる…ではなく、スイッチをONにするかのようにノブを回すと、すでにプリウスなどで何度も味わっているこの儀式、静寂状態のままメーターパネル内に「READY」の表示。これで発進可能。当然動き出しは無音そのもので、強くアクセルを踏んでもずっとモーター駆動のまま。頭では分かっているものの、この感覚はやはり実際体感してみると、まさに「静かなる衝撃」。

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試乗時に充電が残り少なくなっていた事もあり、まず最初はシフト位置をECOにしてスタート。ややアクセルを閉じた時に回生による減速感が強めに感じるものの、日常域ではこのECOモードで十分な加速感。あえて発進時の急激なトルク感を抑えてあるようで動き出しはいたって普通ではありますが、一度動き出してしまえばその後の中間加速は非常に力強く感じます。

直線に入ったところで、「Dモードもぜひ一度試してください」ということで、シフトノブを動かしてアクセル全開。するとiのターボモデルでは絶対に味わえない、いやレシプロエンジンとは全く異なる加速感!電車のようというべきか、雲の上を滑っているというべきか、いやはやなんと表現すべきか。とにかくEVが今までの自動車とは少し異なるベクトル上にある乗り物だという事を実感しました。エコという言葉うんぬん関係なしに、純粋に気持ち良さを感じられる乗り物と言えます。

おそらく、シティユースならECOモードで十分な性能。こちらをデフォルトとして普段はできるだけ航続距離を伸ばし、Dレンジを多人数乗車時の山道や合流などで使用するスポーツモードのような形で考えて使用するのがベストでしょう。

バッテリーの搭載で車重はかなり増えていますが、その効果は乗り味に表れていました。床下が重い事で乗り心地は非常に落ち着いたしっとりしたものとなっており、ベースモデルから比べると確実に1ランク上。もちろん登場当初からパワステやサス、シートの見直しによりガソリンエンジンのiもキチンと進化しており、そちらの進化との相乗効果が出ているとも言えるでしょう。

ハンドリングもこれまた新鮮な感覚。ベースモデルのiはとにかくどこまで攻め込んでも軽快かつナチュラルな挙動が印象的でしたが、アイミーヴのほうはどっしりと安定して落ち着いた印象。機敏さは相殺されているものの、床下が重めのためにロールスピードが少し早めでも不安な印象は感じられず、旋回能力はなかなかのもの。素早い切り返しでも不自然にヨーが残るような事もなく、ビシッとしたスタビリティの高さを実感できます。

まだまだ足りない航続距離とインフラ、そしてまだまだ高価なプライス…まだまだ問題はたくさん残っています。クルマ自体の完成度も非常に素晴らしいものの、ブレーキ回生などができるようになるなど、まだまだ性能向上が見込まれる部分も。しかしながら現時点でこのクルマを形にして世に送り出した事について、厳しい状況が多かったにも関わらず諦めずに開発を着々と進めていた三菱の開発陣に拍手!よく言われる200・200・20の目標(価格200万円以下、航続距離200km以上、充電時間20分以内)がゆくゆく達成できれば、普及化は一気に進むことでしょう。

もちろん、個人的にはまだまだエンジン全開レブリミットまで踏みっぱでブン回して、CO2大放出でエキゾーストノートを楽しみたい…という種類の人間。しかしながらこのアイミーヴにも、またそれとは全く異なる自動車としての「ファン・トゥ・ドライブ」が感じられた事が、個人的には大変収穫になった試乗でした。



レポート:岩田和馬
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2009年10月29日

TMS特集〜新型マークX試乗〜

TMSの試乗コーナーで、デビュー直後のマークXの2.5&3.5Lを早速試す事ができましたのでレポートします。

新しいネーミングになってから2代目。初代モデルはなかなか斬新な試みがなされていましたが、販売自体は2Lを廃止した影響もあり、またゼロクラウンの大幅な若返りもあってか、販売的にはあまりいい結果を残せませんでした。

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スタイルを見ても分かる通り、新型は完全なるキープコンセプト。エンジン・シャシーもキャリーオーバーで、熟成のモデルチェンジと言えるでしょう。目新しい新機能も特になし。プリウスやレクサスHS、SAIなどでハイブリッド攻勢を強めつつ、このようなコンベンショナルなFRセダンもきっちり用意できるあたりがトヨタの強み。

かつての兄弟3車種のバブル月産4万台時代からすれば、月産目標3000台というのはいささか寂しいものがありますが、時代の流れを考えれば順当な流れなのでしょう。そうは言っても、エコエコと叫ぶ時代にとらわれないユーザーは確実にまだまだ多数存在します。

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フロントマスク、特にグリルのXのアピールポイントは相変わらず好みが大きく分かれそうではありますが、グッとエッジを強調したスタイリングはなかなかスポーティ。とりわけモデリスタの「ヴェルティガ」は、専用エアロやグリルなど純正よりハイレベルと言っても良さそうなまとまりを見せています。

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また「デザインのためのデザイン」のような消化不良気味であったバンパーと一体式のマフラーが通常のオーバル形状に戻されたのは個人的には大賛成。できれば他のトヨタ車種も「そのクルマのデザインに見合うかどうか(例:クラウンマジェスタ)」を考えてから今一度検討していただきたいと思います。

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インテリアの見栄えも上々。先代モデルは丸型のシフトパネルの形状や変な形のシフトノブ、助手席専用オーディオコントローラーなど、少し首を傾げる部分がありましたが、新型はオーソドックスにまとめられています。針がレッドで瞬時認識性の優れる自発光式メーターや、エアコン操作パネルのすっきりとしたまとまりなど良く出来ていますが、あえて最初に「見栄え」と書いたように、実際の質感はそこそこレベル。

確かにクラウンやレクサスと実際に直接比較すればところどころの安っぽさは否めませんが、ブーツ式で高級感たっぷりのシフトまわりの処理や、径やグリップの太さ、革の質やステッチなど大変良く気配りができている新形状のステアリングなど、直接手に触れる部分にしっかりと気を使っている印象で、この価格を考えれば期待十分以上でした。

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新型の特徴は、モデル展開を「スタンダード」「スポーツ」「プレミアム」の3種類用意している点。またスポーツの一部グレード・プレミアムはエンジンも3.5Lとなったので、価格設定範囲はかなり広がりました。ちなみにこの3.5Lエンジン、クラウンの315ps仕様ではなく、レクサスISの318ps仕様となっているのも開発陣が意識したキャラクターを物語っている点と言えるでしょう。

しかし今回はあえて、2.5Lモデルに注目。2Lモデルがなくなった事はやはりこのクルマにしてはハンディが多く、またライバルであるティアナも6気筒エンジンながらいち早くレギュラーガソリン対応にしたこともあり、今回新型も燃費やランニングコストを考えて追従してきました。数値上エンジンパワー・トルクともに若干のダウンしているものの、203psもあれは十分。おそらく売れ筋となるであろう、そしてお勧めなのも、絶対に2.5Lです。

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その印象は、実際に試乗してみるとさらに強くなります。今回試乗できたのは「減税特別仕様(?)」とも言える250Gリラックスエディションと、最上級の350Gプレミアム。パドルシフトや専用サスが組み合わされるSグレードは試す事ができませんでした。

まずは2.5Lから。タイアは16インチのヨコハマDNAdb。スタートしてまず感じるのは、その静粛性の高さ。マークXってこんなに静かやっけ?と改めて思うほど、これだけ乗っていれば「クラウンいらず」の印象を感じるほどでした。レギュラー対応化されたエンジンも街乗り領域では十分の性能で、アクセルをパッと開けば低速からレスポンス良く上までシュンと軽くスムーズに吹けてくれます。相変わらず抜群にスムーズな6速ATとのマッチングも極めて良好。

ハンドリングに関しては、まだ40kmほどしか走っていないド新車というハンデはあったものの、特にリアサスに起因する直進性とフラット感の欠如と電動パワステのフィーリングの2つが大幅に改善。電子制御も何もない素のサスペンションと16インチタイアの組み合わせは実にまとまりがよく、格段にナチュラルとなったステアフィールとも合わさって、走りのチグハグさが随分と解消された印象です。

この内容でVSCやサイドエアバックも標準となって、238万円スタート。装備充実で売れ筋となるであろうこのリラックスセレクションも269万円。いわゆる飛躍的改善が進んだ燃費性能や飛び道具的な装備は特に持ち合わせていませんが、これはこれでクルマの内容として考えれば実に魅力的。

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3.5Lのプレミアムのほうも試乗し、こちらはこちらでトヨタエンジンの中でも屈指の出来である素晴らしいフィーリングのD−4SのV6エンジンに18インチタイアのしっかり感が特徴的ですが、ここまで必要な性能か…と問われれば微妙なところ。見栄えはいい18インチタイアは今回235幅とクラウンよりも幅広くなり、絶対的レベルではこちらのサスとタイアの組み合わせの乗り味も相当に煮詰められた印象でしたが、「らしさ」と「充実度」でいえばお勧めしたいのはやはり2.5Lのほう。プレミアムはナビを装着すると400万円オーバーの価格帯となるので、そうすれば他の車種も気になるクルマが増えてきます。

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新型プリウスが衝撃的な価格で登場したのは記憶に新しいところですが、よくよく考えるとこのマークXの250G・FパッケージとプリウスのGはほぼ同価格帯。こうして見ると、トヨタの車種展開・価格戦略もなかなか面白く感じます。こちらは思いっきり20世紀的価値観に縛られたオーソドックスなセダンではありますが、今のエコエコな時代の雰囲気の中では、なかなかどうしてしっくりと落ち着く印象で、地味ながらもかなり実力派の1台でした。



レポート:岩田 和馬
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2009年10月26日

TMS特集〜Z34ロードスター試乗〜

続いてはフェアレディZロードスター。TMS会場では、GT−Rは試乗車がシルバーで展示車がホワイトとなりますが、こちらのZロードスターは両方ともかつての240ZGを思わせる、イメージカラーであるプレミアムディープマルーン。

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まずスタイリングは、Z33の時もそうだったように「あらかじめオープンモデルの設定も想定にいれつつ」設計されたおかげで、不自然なボディラインなどは皆無。また昨今流行りのメタルトップではない点も(北米に存在するメタルトップを採用するスカイラインコンバーティブルとの差別化の意味もあるでしょうが)優雅なスタイリングを崩さない1つの要因でしょう。

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オープン時はもちろん、パープルに塗られた幌を閉じクローズドにした状態でも十二分にカッコよさを醸しだしてくれます。アルミホイールは専用デザインの18インチ。ただクーペと差別化されているのは18インチだけで、オプションの19インチを選択するとクーペと共通のホイールになる事は事前にチェックが必要です。

新型の大きな特徴は「幌開閉のフルオート化」と「最小限に抑えられた車重増」の2つ。まず1つ目ですが、Z33のロードスターも幌の開閉はもちろん電動式。しかし、最初と最後のロック作業は手動で行わなければなりませんでした。そのロック作業を新型は電動化したことで、まさにスイッチ1つでオープン化が可能に。そのためZ34では室内のスイッチだけでなく、ドアハンドルに設けられるリクエストスイッチを長押しすることで、ドライバーは室内に座っている時だけではなく、車の外からでもオープン・クローズド作業ができるようになりました。

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2つ目ですが、先代のZ33のクーペボディとオープンボディとの重量差は110kg。対して新型の重量差はと言うと、なんと先代比−60kgの50kg増でオープンモデルを作り上げており、クーペモデル以上に新型のZ34ロードスターは「軽量化」が実行されています。ホイールベースもクーペと同じく新型はグッと短縮されているものの、むしろラゲッジスペースなどは拡大しており、オープン2シーターとしての実用性にも全く問題ありません。

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さて、この流れで早速試乗へ。試乗車は最上級モデルのバージョンSTの7速ATモデル。1度幌の開閉を確認したあとで、試乗時間も短いので早速フルオープンにしてスタート。余談ですが、幌を閉じた状態だとリアのガラス面積が大変小さく、後方側の視認性は絶望的。しかしオープンにすると当然障害物がなくなり視界も一気にひらけるため、気持ち良さだけでなく安全性という面でも是非この車はオープンをデフォルトとして乗ってもらいたいと思います。

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50kgに重量増は抑えられているものの、ボディ補強の対策は十分行われており、街乗り領域ではボディがワナワナ震えるようなだらしない印象は全くありません。ただクーペとの差を全く感じないと言うレベルまではさすがにいっておらず、特に今回の試乗車は18インチ仕様でしたが、より入力の激しくなるであろうオプションの19インチモデルとなると…もちろん単体で見る限り全くボディ剛性の不足は全く感じませんが、おそらくこのロードスターにはこの18インチがちょうどベストバランスのサイズでしょう。

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またクーペ登場時、シンクロレブ付の6MTは素晴らしいブリッピング機能を味わえますが、肝心のシフトフィールが少しゴリっとした無骨な印象。クーペならそういった雰囲気もアリではありますが、ここは個人的にMT派である自分も、このロードスターではATをチョイスしたほうがクルマ全体の雰囲気にマッチしているように感じました。このATもトルコンながら変速は無駄なく素早く、そしてパドルを弾いてシフトダウンをすれば、こちらも見事なブリッピングを披露。ギア比も7速でクロスな設定であり、かなりスポーティな走りの場面でも、十分に応えてくれる性能を秘めています。もちろん空調やシートはロードスター専用にキチンと対策されており、ちょっと飛ばしてみてもオープンエアの邪魔をしないのも好印象です。

おろしたての新車ということでエンジンは若干少し重たい印象。性能的には十二分ではあるものの、サウンド的にも回転フィール的にも、もう少しスッキリと軽やかなエンジンが欲しいなぁ…と思ってしまいます。そういった印象はやはりMTでより強く感じるので、これもこのZで積極的にATをお勧めしたい理由の1つです。

しかし、アクセルを積極的に踏み込めば245幅のタイヤが途端に悲鳴を上げてTRCが介入し、コーナー立ち上がりではやはりビスカスよりもトルセン式デフが欲しくなる…というようなクーペで感じたフィーリングの評価軸をそのままこのロードスターに当てはめるのは、少し愚問かもしれません。

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街中をスッと軽く流すだけでもこの気持ち良さと爽快さ。。これはオープンモデルならではの特権であり、またこの車ほど走っている姿が実に絵になる国産車はそうそうないでしょう。そしてZに共通する美点である、サイドミラーにチラリと映るボリューム感たっぷりのリアフェンダーも、所有感をくすぐります。

惜しいのは、性能や高級感(特にインテリアの質感アップは顕著!)の向上に伴って、価格もそれなりに上昇してしまっている事。このバージョンSTの7速ATモデルは500万円超え!標準モデルでも435万円スタートと、Z33最終モデルから約50万円、登場当初からだと約70万円ほど上昇しています。

もちろんメインマーケットは北米。初期モデルの質感不足が顕著に批判されたことも考えると、このクルマのキャラクターや性能としては正常進化なのかもしれません。本音を言えば、2.5Lモデルも設定してもっと手の届き易い範囲に…!と思ってしまうのですが、国内月産目標台数はわずか30台。考えてみれば、日本に導入してくれるだけでもありがたいのかもしれません。

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同乗していた日産の方に聞いたところによると、エルグランドやセドリックやセフィーロなどの日産車に乗りついでいるお客さんが、子供が独り立ちして、仕事も定年でリタイア…けど、まだまだ気持ちは若い。そんな自分へのご褒美として購入され、奥さんと2人でのんびり使われているユーザーの方が多いとのこと。そういった希望に適う国産車は、まさに今このZロードスターこそうってつけ。できれば目標よりもう少しこの車が売れてもらって、屋根をオープンにして走っているそのような微笑ましい風景を街中で見る機会が増えればいいのにな…と思います。


レポート:岩田 和馬
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TMS特集〜GT−R試乗〜

「今回、販売直後でデリバリーも試乗会もまだなので、Zロードスターが一番人気になると思ってたんですがねぇ…笑」。

前回の東京モーターショウで華々しく登場してから、ちょうど2年。この2年で大きく自動車を取り巻く環境は変わったものの、日本自動車界のヒーローとしていまだに注目度は抜群に高い…最初の日産の方のコメントや、一般公開初日には展示車の運転席に座るべく長蛇の列ができ、1日分の試乗枠がわずか数分で埋まってしまったように、改めてこのGT−Rというクルマの注目度がまだまだ色褪せていない事を実感しました。


ずっと自分も一度試したかったものの、これまでそのような機会はなく、今回がR35GT−R初試乗となります。試乗車両はイメージカラーのアルティメイトメタルシルバーに塗られた最上級モデルのプレミアムエディション。

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空力の事も考えられた少し操作しづらい、しかしこの車に乗るための普通とは異なる特別な儀式的行為としてのプロセスと考えれば、ちょっと変わったドアノブの実用性も気になりません。アイポイントは思ったより高め。1つのダイヤルでシート調整を全てまかなえるこの電動シートの操作ロジックは、GT−R以外の日産車にも是非広めていって欲しい逸品。

インパネはやはり見た目上はゴチャついている印象は拭えませんが、質感は上々。メーターの視認性は抜群で、中央のシフトスピード、サスの硬さ、VDCのモード変更を行えるタブ状のスイッチの操作性も分かりやすいものでした。ちなみに今回は限られた時間と距離の中だったので、終始ノーマルのデフォルト状態で試乗しました。

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エンジンスタート。一瞬間を置いてから、図太いエキゾーストが車内に響き渡ります。決して透き通ったサウンド…という分類ではありませんが、この迫力ある重低音はそれはそれで雰囲気満点。GT−Rのキャラクターを考えてもちょうどマッチしています。試乗待ちの間に道路を通るGT−Rのその音は、他の車種とまるっきり異なり、はっきりと耳に残るだけでも、圧倒度でいえば十分に合格点。

さて、Dレンジをセレクトして、ゆっくりと発進。こういった極低速時はツインクラッチ車の苦手とするところですが、さほど違和感もなくスムーズにスタート。1〜2速での変速にややもたつきが感じられましたが、これは今回のエンジンON・OFFを頻繁に繰り返す特殊なシチュエーションによる影響かもしれません。

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足周りはハッキリ言ってかなり硬め。しかしながらごくごく低速で走っていても、ボディ剛性の驚異的な高さのおかげか、決して安っぽいガタピシするようなものではなく、何か硬いシェルの中に密閉されているような感覚。個人的には不快ではないどころか、むしろ心地いいほどでした。ブレーキも癖さえつかめば問題なし。

街中を流していると、すぐさまポンポンとシフトアップして気がつけばもう6速に。街乗りでも特別な事を意識することなくスッとラクチンに乗れます。しかしながら決して退屈なわけではなく、ステアリングから伝わる豊かなインフォメーション性や、微動だにもしなさそうなボディ剛性の高さ、リアから聞こえてくるギアボックスの音(こちらもむしろ好意的に受け取れます)…。普通に乗れるは乗れますが、「ただものではない」感も十分に伝わってきます。


さて、少しこのGT−Rの本性を覗いてみよう…ということで、パドルシフトを弾いて一気に2速へ。右ウインカーを出して前方の車を抜くためにフルスロットル!その瞬間、タコメーターが3500回転を超えたあたりから猛烈な加速Gが体を襲い、そこからはもうまさにワープ感覚。今そこへ行きたい!と思った瞬間もうその場を通り過ぎるような、そして気がつけばあっという間に制限速度オーバー。09モデルはローンチコントロールがなくなったとはいえ、0−100km/hを3秒台でこなすこのGT−Rのフルスロットルを合法的に楽しめるのは、時間にしておよそ1〜2秒…というところでしょうか。

485psを誇る3.8Lツインターボとアテーサが生み出すこの爆発的な加速は、追い越しの時でさえ、強烈なグリップをもつフロント255リア285の20インチタイヤを一瞬空転させトラクションを失わせるほど。アクセルやブレーキを踏まずに、ただアクセルを抜いただけで、それまでの強烈な加速Gが途切れて首がつんのめる車は、このGT−Rが初めてです。

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パワーフィールについては、3500回転から強烈に…というところまでしか感覚的に追いつけず。1速ではレッドまでなんとかブン回してみたもののメーターの動きに目が追いつかず、2速ではその強烈な加速感に先に人間の性能が追いつかなくなりそうになり、5000回転そこそこがやっと。当然この加速に対応する旋回性能や制動性能をこの一般道の短時間で試せるはずがなく、自分のような素人がどう頑張ってみたところでひたすらオン・ザ・レール。しかしながら、決して全開で走らずとも…ゆっくり流している状態でも積極的にワクワクできる、いわゆる「低速官能」をこのGT−Rがキチンと兼ね揃えている事は実感できました。

とにかく常に冷静さを持とうと思いつつ、結局圧倒されっぱなしで終わってしまった15分間。おそらくGT−Rの本来の性能のたった数%、それもたった数秒しか自分の能力では味わえませんでしたが、そのたった数%、数秒は、自分の中でこのR35GT−Rがいかに凄いのか…それをまざまざと記憶に刻まれるだけのインパクトを感じるには十分でした。

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試乗後日産の方に、「いい音出して踏んでられましたね」と笑顔で話しかけられ、それに対して心の底から同じように満面の笑みで答えた自分。

このような時代の中でこんな「スーパーカー」を作った事だけでも、かなりの評価に値するでしょう。個人的には好き嫌いという次元を超えて、とにかくまず存在することだけで愛でたい1台。このGT−Rというクルマがまさに今存在している事実を、日本人として純粋に喜ばしく、そして誇りに思えます。




<レポート:岩田 和馬>
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2009年10月24日

東京モーターショウレポ その2

本日から一般公開となるTMS。前回のレポートでもお伝えしましたが、参加者にとって嬉しいのは、実際に見るだけでなく試乗体感ができるイベントが実施されている事です。

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2日目は朝一で参加し、なかなか素人では乗ることのできないGT−Rをようやく初めて試す事ができました。後日そのレポートは別途詳しくお伝えする予定ですが、とにかく圧巻の一言。

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巷では色々な意見があるようですが、個人的にはそのデザイン、性能、そして存在を含めて、すべてにおいて日本人として誇りを持てる愛でたい1台である思いをさらに強くしました。

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また、プレスも含めて「試乗会」には初めて登場するフェアレディZロードスター。天気に恵まれた際には、是非そのオープンエアの気持ち良さを味わって欲しいと思います。余談ながら、今年の日産ブースは寂しい印象ではありましたが、試乗会では断トツの1番人気。FT−86の熱狂ぶりも含めて、時代はエコとはいえ、やはり皆スポーツカーに対する憧れの気持ちは揺るぎない…そんな印象をより強くしました。

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スバルの注目はインプレッサSTI。A−LineということでATモデルではありますが、その性能の洗練度は十分に味わえる仕上がり。売れ行き好調な理由も今回の試乗でしっかりと把握できました。

いずれの3台も含めて、トヨタのマークXの2.5と3.5L、日産のエクストレイルディーゼル、三菱のアイミーヴ、ギャランフォルティスラリーアート、マツダのアクセラのミニ試乗レポートを随時これからアップしていく予定です。

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「おいしい市場」でなくなりつつある日本のマーケットの現状でいえばこういう状況になっても致し方ないのかもしれませんが、そんな向かい風の中出展を決めたロータス・アルピナ・ケーターハムには、日本人として敬意を払いたい気持ちです。

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アルピナは7シリーズベースのB7をワールドプレミアしましたが、個人的注目車は、3シリーズベースのD3、そうディーゼル搭載モデル。アルピナ・日本・ディーゼルという3つのワードには、今まで紆余曲折があり、今回こういった状況の中ディーゼルモデルを展示する意気込みには感慨深いものがあります。そしてロータスは抜群にカッコいい注目のエヴォーラ、加えて世界限定35台となる貴重モデルのエキシージステルスも注目した1台。

プレスディ初日と2日目は、少し会場も違った顔を見せます。

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今回一番の注目車でありながら、そんな見づらいところに置いとくの?と思ったトヨタのFT−86は、2日目には見やすい特等席へドーンと展示されており一安心。そのコンパクトさやプロポーション、ここでの盛り上がりが今後のこの車の市販化へ向けての方向性の鍵のうちの1つを握ると言っても過言でないのでは。LF−Aと同じくして、ぜひじっくりと見て欲しい1台。

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若干華やかさが欠け地味な印象だったマツダ。しかし技術的レベルは非常に高度かつ現実的な提案がなされており、それが良くも悪くもマツダ的。個人的にはそんな少し不器用なマツダが好きだったりするのですが…笑

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初日にはなぜか置いてなかったRX−8も、無事会場に発見。NCロードスターも含めて、今一番現実的にすぐ買えるこの2台の素晴らしいスポーツカー、改めて会場で直接触れて魅力を再認識するのもいいでしょう。

2年前は次期コンセプトモデルが具体的に披露されたものの、今年はエコ技術では躍進しつつ、このコペンの次世代提案はまったくナシ。いささかクルマ好きとっては寂しいものがありますが、この現行コペンも是非今一度魅力を見直すべき1台なのでは。

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現地にはレッドのボディとブラック塗装のBBSホイールが渋いアルティメットレザーエディションが展示されています。ダイハツさん、この火を絶対絶やしてはいけません!プレスディ初日に、豊田社長がこのコペンをまじまじと観察していた様子を見る事ができたのが、安心材料の1つでした。

以上、駆け足気味ではありましたがTMSプレスディ2日間の模様をお届けしました。また1台1台、個人的に気になる車種…とくに登場が具体的に予定されているモデルを中心に、これから随時詳しくレポートする予定です。この場をお借りして、今一度今回取材のチャンスを与えて頂いた国沢さんに心から感謝したいと思います。本当にありがとうございました。


レポート:岩田和馬
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2009年10月22日

東京モーターショウ速報!

本日は東京モーターショウのプレスディ初日ということで、簡単ではありますが現地からの即日レポートをお届けします。

まずはトヨタ・レクサスブース。お寒い東京モーターショウとは言われつつ、始まる前には人、人、人。そして豊田社長は「若者がクルマから離れていったのではなく、我々自身が若い世代から離れていったのかもしれません。」という非常に感慨深い、そして従来までのトヨタの方向性に一石を投じるような、そして今後のトヨタの方向性を大きく担うような言葉を残しながらカンファレンスは進み、注目の2台がアンベール。

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まずはトヨタで、いや今回のショー中でも国内外のメディアを通して間違いなく一番の注目を集めていた1台、「FT−86コンセプト」。ちなみにFTは「富士重工+トヨタ」…というわけではなく、「FutureTOYOTA」の略。

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実際に目にすると、とにかくそのコンパクト感・凝縮感が印象的。全幅はそこそこありますが、このプロポーションでこの全長の短さは現代版ハチロクを名乗るに相応しい出来と実感できました。エンジンはご存じの通り水平対向4気筒、ブレーキはアドヴィック製のフロント4ポッド・リア2ポッド、インテリアはTRC・VSCのカットスイッチに加えて、その横にはABSのカットスイッチが。

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まだ登場は2年後ということで、気になるエンジンパワーや車重、価格などはまだまだ霧の中。個人的にはプリウスを205万で出したトヨタなら、それ以下での登場も不可能ではないのではと勘繰りつつ、期待したいところ。とにかく登場が楽しみな1台!

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そしてもう1台、レクサスが長年開発を進め、市販前に24時間レースにも参戦していた「LF−A」のプロトタイプが初お目見え。メディア側はひっちゃかめっちゃかになる中、豊田社長が自ら運転席に座り、あえて「音色」と表現したくなる素晴らしいV10サウンドを響かせてアンベールの瞬間を迎えました。

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そのデザインに関しては個人的に「?」なものの、V10エンジン560ps、カーボンとアルミの混合ボディなどによって1480kgに抑えられた車重、トランクアクスル形式のフロントミッドエンジンのFRレイアウト、全世界限定500台、価格は3750万円(!)、内容はまさにスーパーカーに相応しい内容。

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そのいわゆるスーパーカーと呼ばれる領域に変化球で挑んだのがGT−R、それに対しこのLF−Aは真っ向勝負で挑んでいると言えるでしょう。内装もスパルタンかつゴージャス…と思いつつ、中央にリモートタッチが装着されているところなど、あくまでLF−Aはレクサスファミリーの一員であるという事を覗かせます。

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この内容でこの価格、日本に一体何台振りあてられるかは不明ですが、とにかく市販化に漕ぎつけたその熱意は、自動車に対する夢をもつ高い意識の表れの1つと言えるでしょう。もっともこのクルマの登場を傍目で一番悔しがっているのは、NSX後継車を頓挫させたホンダかもしれません。


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そんなホンダの注目の1台は、ハイブリッド・スポーツを提唱する1台である「CR−Z」。1.5LVTECにモーターを組み合わせ、それを6速MTで操る。コンセプトと名乗りつつすでに市販化間近の完成度を誇っているのはご覧のとおり。登場が待ち遠しい1台です。

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そしてもう1台、日本導入が待望されていた欧州シビックの赤バッチが、「シビックタイプRユーロ」として台数限定で登場。性能は折り紙付きなものの、シビックを名乗るにはいまだにどうしても違和感の残る現行セダンボディよりも、スタイルの「らしさ」はこちらのほうがはるかに上。

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フィットベースということで、センタータンクレイアウトやリアトレーディングアームのサスペンション、「ユーロ」の性格を物語るポテンザRE050の装着など戦闘力自体はセダンよりも劣る事が容易に想像できますが、それでも三角窓でバスのようなワイパーの車なんていくら速かろうがスポーツカーじゃない!と思っている人にはこちらのハッチ・モデルは打ってつけと言えるでしょう。ちょっとおデブに見えるボディのおかげで、実用性も十分以上。価格はどうやらセダンよりも高くなりそうですが、すでに完売間近との噂も。

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ここからはダイジェストで簡単に紹介。

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ホンダのEN−V。EVとのことですが、その現代版N360風のデザインに心惹かれた方も多いはず。ゼストとライフのキャラクターが被りつつある今、EVでなく既存コンポーネンツの転用でも良いので市販化希望!な1台。

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ホンダのスカイデッキ。サイズは少し小さく1.5LのIMAの搭載と言われているものの、おそらく次期オデッセイのデザインスタディモデル?ガバッと開くガルウィングドアは圧巻!

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スバル・ハイブリッドツアラーコンセプト。その意欲的なメカニズムを含めて、また後日じっくりと振り返ってみたい1台。しかし、コンセプトモデルとは言えこの美しくエレガントなスタイリングは一見の価値アリ!な素晴らしさ。是非最近迷いまくりなスバルデザインに何か変化を与えてくれる1台となる事を願わずにはいられません。

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スズキアルト。とらえどころのない現行モデルから大幅に進化。デザインはどこかミニ・スイフトチック。爬虫類系のフロントマスクが女性ユーザーにどう捉えられるか?

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スズキキザシ。今回のショーのある意味1番のサプライズ。市販中止の噂もあったものの、なんと現地当日に市販化のアナウンス!ボディは相当大きいものの、この顔で同セグメントのクラス感を追求できているのか…?2.4L直4にCVTが組み合わされて約278万円でスタート。果たしてスズキでこの価格帯のセダンか売れるかどうかは正直疑問。内装の質感は上々なものの、スズキ自身も消極的で、受注生産モデルでの登場という形に。

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日産フーガ。現地には標準系、スポーツ系、そしてハイブリッドの3台が展示。スポーツ系は大迫力の20インチを履いており、フロントマスクに若干癖があるもののグラマラスなボディは日本車離れした佇まい。こちらも来月登場予定!

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そして会場外では、今回は見るだけでなく実際に運転できる試乗会も実施。

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今回試乗したのは先日登場したばかりのマークXの2.5L&3.5L、エクストレイルディーゼル、モデューロ仕様のインサイト、アクセラ、アイミーヴなどなど。とくにアイミーヴはなかなか乗る機会がないのに加え、一般公開日には人気の為充電切れによる早期試乗打ち切りの可能性もアリなので、狙っている方は早めの申込みが吉。

他にもGT−RやフェアレディZロードスター、インプレッサSTIA−Lineが人気を集めていました。明日チェック予定のこの3台と本日試乗したクルマたちは、後日また改めてレポートする予定です。

ちなみに、FT−86やフェラーリ458イタリア、メルセデスSLSなんかにも乗りたい!という方は、グランツーリスモ5のブースへどうぞ。笑

輸入車勢がほぼ総スカン状態で、空きスペースも多く少し寂しい今年のモーターショウですが、いざ会場をまわってみれば注目するべきポイントはたくさん。明日も引き続き会場をまわって取材を続けたいと思います。

<レポート:岩田 和馬>
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2009年10月20日

夏場のインサイト試乗レビュー

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今回でインサイトのレポートをお届けするのはこれで3回目となります。少し季節的にズレてしまいましたが、インサイト登場時に指摘された「モーター駆動ではなくベルト駆動のエアコン」が夏場の燃費にどのような影響を与えるのか心配される声が聞こえました。そこで今回は再び前回の試乗レポートでの同程度の距離・コースを夏場に常時エアコンONで走行。加え2日目は雨にも見舞われるコンディションの中で約550km走った結果のレポートをお届けします。

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まずは軽くインサイトの印象について振り返ります。試乗車は奇しくも前回と同じく、「G」のアラバスターシルバーメタリック。ただし前回は走行1000km強のほぼ新車だったものの、今回は6000km程度の走行距離を重ねている個体でした。

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前回のレポートでは軽快なフィーリングは好印象だったものの、高速セクションでの直進性の悪さ・外乱の影響の受けやすさによる神経質な挙動が露呈。今回の個体は距離を重ねていたため、若干その傾向は少し抑えられている印象でしたが、やはり80〜100km/h付近ではどうしてもその症状が残ってしまいます。

一番高速道路での燃費良好な速度域での巡航時にこういった走り辛さが出てしまうのは返す返すも残念。サスペンションのジオメトリーやアライメント、ブッシュ類、ボディやフロア剛性など様々な要因が関連していると思いますが、質感的な問題も含めてマイナーチェンジなどで早めの改善を望みたいところです。

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インテリアのほうは質感は価格を考えれば必要十分程度に留まるものの、アンビエントメーターやエアコン操作パネルなど、視認性や使い勝手の面での取っ付き易さと分かりやすさは○。ただ後方視界や後席での居住性はハンディがあると言わざるを得ません。

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さて、肝心のエアコン&燃費報告です。当日の外気温は32度、エアコンの設定温度はAUTOで26度に固定してテストしました。ブレーキを踏んで減速していくと、10km/h付近でストンとエンジンがストップ。と同時に、エアコンが送風状態+風量1の状態で固定。これが30秒程度ならまだしも、信号の先頭などではじんわりと汗が出てくるような印象です。

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1人で高燃費を叩き出すためなら普通に我慢できますが、おそらく同乗者がいればアイドリングストップされる度に文句が出てしまうでしょう。ECONボタンをOFFにすれば、アイドルストップの時間が短くなりエアコン制御が優先。しかしそれに伴って燃費は悪化…一応5ドアでリアシートは物理的に存在するものの、やはり基本的には1〜2人で使うのがベストというコンセプトは、初代インサイトからさほど進化していないのかもしれません。加え、翌日は雨でワイパーON+ライトON。この状態でエアコンを使っていると、ECONボタンONの状態でも停車後10秒程度しかアイドルストップしませんでした。

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結果、燃費は市街地オンリーで14.7km/L。高速巡航セクションでは相変わらず22〜3km/Lの良好な値を叩き出しますが、一般道オンリーの使い方ではこのインサイトのハイブリッドらしい燃費の良さはほとんど実感できなかったというのが正直な印象でした。

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5ナンバーにこだわったボディサイズの利点が活きてくる速度域では、燃費で本領が発揮できず、良好な燃費を叩き出す速度域では、足周りのセッティングの甘さが顔を出しつつ、というように、やはり完成度不足が感じられてしまいます。せめて足周りとエアコンの改良は、次回マイナーチェンジでの必須改善項目でしょう。デビュー当初に初代シビックハイブリッドのオーナーの方に指摘され、そこからかなり時間がたってからの今回のテストとなりましたが、このテストを通じて自分自身の評価や認識の甘さを実感した次第です。

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そんなインサイトをベースに、1.5LVTEC+モーターに6速MTを搭載するCR−Zがもうすぐ登場予定。その付近でのタイミングでこのインサイトもなんらかの改良が加えられる事を期待したいと思います。

そのCR−Zも出展される東京モーターショウがいよいよ今週末スタート。ロータスとアルピナを除いて輸入車勢は完全市場無視なのが少し寂しげではありますが、その分国産勢の充実っぷりにはまだまだ注目したい部分が多数存在します。加えてCOTYのブースが設けられたり、試乗会やジャーナリストの皆さんのガイドツアーなども実施され、またいつもと違う楽しみ方ができるモーターショウとなりそうです。

そしてこの度自分も、国沢さんのご協力もあって、現地で今回の東京モーターショウを取材させてもらえる運びとなりました。次回からは東京モーターショウ現地レポートをアップする予定なので、その際はまた皆様ご観覧して頂ければ幸いです。



岩田 和馬
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2009年10月08日

人気欧州コンパクトモデル試乗その2〜FIAT500〜

先日、トヨタiQに1.3Lモデルが追加となりました。iQのウィークポイントの1つである「3気筒エンジンの振動・パワー&トルクのなさ」を根本的に解決してくれ、かつモード燃費は変化なし、の1.3L4気筒エンジンの追加。CVTだけの設定ではありますが、モデリスタから100台限定で販売した6速MTの特別仕様車は瞬く間に完売。COTY受賞から忘れ去られ気味な1台ですが、今改めて注目したい1台です。

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そんなiQの最大のライバルは、もちろんスマート…。ですが個人的には、この1台を挙げたいと思います。

フィアット500(チンクエチェント)。最近オープン(キャンパストップ)モデルが追加されたこのチンクの国内ベースモデルとなる1.2POPの価格は189万円。こちらも純粋なMTのラインナップはアバルトのみとなっており、2ペダルMTの5速デュアルロジックとの組み合わせとなります。

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テスト車両はメインカラーでもあるホワイト。廉価版のPOPはフォグランプやメッキパーツ、アルミホイールなどが省かれますが、可愛らしいシンプルなその佇まいに安っぽさは感じられません。

インテリアはヴィヴィッドなホワイト×レッドの組み合わせですが、これがPOPの標準のインテリアカラー。その室内の明るいセンスの良さ、ダッシュボードのパネル処理、かつてのホンダの集中ターゲットメーターを思い出させるメーターの処理など、遊び心とセンスあふれるこの空間はイタリア車ならではであり、今の国産車にはなかなか望めないものです。

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搭載される1.2Lエンジンのパワーはわずか69ps。980kgと軽量なボディながら、発進時のモタつき感と3000回転以下の瞬発力のなさは要注意。1.4Lエンジンよりも低速のパンチがある、とよく言われているものの、それはあくまで比較論であり、絶対的なレベルではこの1.2Lも、中高回転までブン回して味わうタイプです。

加えて、さらに一癖あるのがギアボックス。デュアルロジックと呼ばれるシングルクラッチ式の2ペダルMTは、5速ながらヨーロッパ車らしく1〜2速のステップ比がかなり開いており、また露骨にギコギコとクラッチ断続の音が聞こえ、街中や渋滞路では普通の感覚で乗るとギクシャクしがち。自動変速を行うAモードもありましたが、巡航時でもなかなかシフトアップせず、肝心なところでキックダウンしてくれないその変速プログラムは個人的にはまったく感覚に合わず、テスト中はほとんど手動変速のマニュアルモードにしっぱなしの状態でした。また、同じようにバックの際にも、クラッチの断続により挙動がギクシャクしがちなのも慣れが必要でしょう。

しかし、そういった癖を持ちながらもできるだけスムーズにコツを掴みながら走らせるのも、クルマ好きにとっては楽しみの1つ。発進時にタイアを転がす程度ですぐさま2速へシフトアップ、右足でのアクセル操作は繊細さが第一で、それこそMT以上の丁寧なアクセルワークが必要とされるかもしれません。その分徐々にスムーズに挙動乱れず操れていくようになってくるこの過程は、最新のツインクラッチ式ミッションから比べれば完成度は大きく劣るものの、通常のトルコン式ATやCVTのように機械にまかせっきりのクルマとは異なる、操る楽しさがこのチンクには感じられます。

もちろん、そこまでなら純粋なMTのほうが個人的には良いと思ってしまいますが…。とはいえこの見た目だけで指名買いしてしまう若い女性ユーザーも多いと考えれば、やはりこの苦し紛れの2ペダルミッションは日本市場には必須なのでしょう。2〜4速を積極的に使い分け、アクセルを遠慮なくバンバン踏んでエンジンをぶん回してちょこまか走るような乗り方が、このクルマのリズムに一番合っているようです。

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足回りはシリーズ中でも比較的ソフトなセッティングであり、またタイアの175/65R14と一般的(銘柄はコンチネンタル)。1.4POPは185/55R15のワンサイズ大きなタイアを履きますが、注意したいのが5.5mというボディサイズに対してかなり大きな最小回転半径(14インチモデルは4.9m)。見た目的にも14インチでとりたててバランスが悪いようには見えないので、やはりお勧めはプライス的にも「らしさ」的にも使い勝手的にも、この1.2POPがベストバイでしょう。

しかしこれもあくまで比較論であり、実際はこの14インチを履く1.2Lモデルでもかなり乗り味はハード。室内の小ささを感じさせないたっぷりとしたサイズのシートがせめてもの救いですが、路面からの突き上げやアンジュレーションでの挙動の変化はかなり大きめ。ガッチリとした足回りの剛性の高さやタイアによる影響もあるでしょうが、可愛い見た目とは裏腹に結構体にはキツい印象です。そのかわり、このコンパクトなサイズとしっかりとした足回りのおかげで、コーナリング性能のレベルの高さもかなりのもの。

比較的ロールも大きくとりたててクイックな操舵性でもありませんが、テンポよくワインディングを攻めていっても全く破綻する素振りを見せることなく、かなりのハイペースを保って駆け抜けるこの気持ちよさ。はっきり言って乗り味は薄っぺらく安っぽい印象ですが、それが楽しくないか?と言われればNO。地元話で恐縮ですが、ストレートで離されてもコーナーがくるたびにグングン追いつく、下りの阪奈峠でのこのチンクの振る舞いはなかなかのものでした。そういった場面でも、いかにも電動パワステです!というようなインフォメーション性の薄いステアフィールが、安っぽい乗り味と共々少々残念な点。

このポップこそ200万円を切る価格帯ですが、上級モデルや先日登場したキャンパストップモデルの価格帯は200万円中盤、またMTが組み合わされる魅力的なアバルトはもう300万円クラスに手が届きそうな勢い。1.4Lモデルは前回のMINIとバッティングするプライスである事を考えると、はっきり言って洒落っ気のある雰囲気で勝負!なモデルであることは否めません。

冷静にクルマ全体の完成度として見れば、この価格にはブランドと「フィアット500」というネームバリューが含まれていると考えたほうが妥当でしょう。しかしながら、洒落っ気と言いつつこのセンスと価値観は個性満点である事は変わりなく、このような感覚が例えばiQ、いやもっと大きくいえば国産車に欠けているエッセンスなのでは。そういった意味でも、素材や調理法ではなく、味付けと見た目でもう魅力満点、やられた!と感じさせてしまうのが、このクルマの最大の魅力点であるような気がします。




レポート:岩田 和馬
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