前回の東京モーターショウで華々しく登場してから、ちょうど2年。この2年で大きく自動車を取り巻く環境は変わったものの、日本自動車界のヒーローとしていまだに注目度は抜群に高い…最初の日産の方のコメントや、一般公開初日には展示車の運転席に座るべく長蛇の列ができ、1日分の試乗枠がわずか数分で埋まってしまったように、改めてこのGT−Rというクルマの注目度がまだまだ色褪せていない事を実感しました。
ずっと自分も一度試したかったものの、これまでそのような機会はなく、今回がR35GT−R初試乗となります。試乗車両はイメージカラーのアルティメイトメタルシルバーに塗られた最上級モデルのプレミアムエディション。
空力の事も考えられた少し操作しづらい、しかしこの車に乗るための普通とは異なる特別な儀式的行為としてのプロセスと考えれば、ちょっと変わったドアノブの実用性も気になりません。アイポイントは思ったより高め。1つのダイヤルでシート調整を全てまかなえるこの電動シートの操作ロジックは、GT−R以外の日産車にも是非広めていって欲しい逸品。
インパネはやはり見た目上はゴチャついている印象は拭えませんが、質感は上々。メーターの視認性は抜群で、中央のシフトスピード、サスの硬さ、VDCのモード変更を行えるタブ状のスイッチの操作性も分かりやすいものでした。ちなみに今回は限られた時間と距離の中だったので、終始ノーマルのデフォルト状態で試乗しました。
エンジンスタート。一瞬間を置いてから、図太いエキゾーストが車内に響き渡ります。決して透き通ったサウンド…という分類ではありませんが、この迫力ある重低音はそれはそれで雰囲気満点。GT−Rのキャラクターを考えてもちょうどマッチしています。試乗待ちの間に道路を通るGT−Rのその音は、他の車種とまるっきり異なり、はっきりと耳に残るだけでも、圧倒度でいえば十分に合格点。
さて、Dレンジをセレクトして、ゆっくりと発進。こういった極低速時はツインクラッチ車の苦手とするところですが、さほど違和感もなくスムーズにスタート。1〜2速での変速にややもたつきが感じられましたが、これは今回のエンジンON・OFFを頻繁に繰り返す特殊なシチュエーションによる影響かもしれません。
足周りはハッキリ言ってかなり硬め。しかしながらごくごく低速で走っていても、ボディ剛性の驚異的な高さのおかげか、決して安っぽいガタピシするようなものではなく、何か硬いシェルの中に密閉されているような感覚。個人的には不快ではないどころか、むしろ心地いいほどでした。ブレーキも癖さえつかめば問題なし。
街中を流していると、すぐさまポンポンとシフトアップして気がつけばもう6速に。街乗りでも特別な事を意識することなくスッとラクチンに乗れます。しかしながら決して退屈なわけではなく、ステアリングから伝わる豊かなインフォメーション性や、微動だにもしなさそうなボディ剛性の高さ、リアから聞こえてくるギアボックスの音(こちらもむしろ好意的に受け取れます)…。普通に乗れるは乗れますが、「ただものではない」感も十分に伝わってきます。
さて、少しこのGT−Rの本性を覗いてみよう…ということで、パドルシフトを弾いて一気に2速へ。右ウインカーを出して前方の車を抜くためにフルスロットル!その瞬間、タコメーターが3500回転を超えたあたりから猛烈な加速Gが体を襲い、そこからはもうまさにワープ感覚。今そこへ行きたい!と思った瞬間もうその場を通り過ぎるような、そして気がつけばあっという間に制限速度オーバー。09モデルはローンチコントロールがなくなったとはいえ、0−100km/hを3秒台でこなすこのGT−Rのフルスロットルを合法的に楽しめるのは、時間にしておよそ1〜2秒…というところでしょうか。
485psを誇る3.8Lツインターボとアテーサが生み出すこの爆発的な加速は、追い越しの時でさえ、強烈なグリップをもつフロント255リア285の20インチタイヤを一瞬空転させトラクションを失わせるほど。アクセルやブレーキを踏まずに、ただアクセルを抜いただけで、それまでの強烈な加速Gが途切れて首がつんのめる車は、このGT−Rが初めてです。
パワーフィールについては、3500回転から強烈に…というところまでしか感覚的に追いつけず。1速ではレッドまでなんとかブン回してみたもののメーターの動きに目が追いつかず、2速ではその強烈な加速感に先に人間の性能が追いつかなくなりそうになり、5000回転そこそこがやっと。当然この加速に対応する旋回性能や制動性能をこの一般道の短時間で試せるはずがなく、自分のような素人がどう頑張ってみたところでひたすらオン・ザ・レール。しかしながら、決して全開で走らずとも…ゆっくり流している状態でも積極的にワクワクできる、いわゆる「低速官能」をこのGT−Rがキチンと兼ね揃えている事は実感できました。
とにかく常に冷静さを持とうと思いつつ、結局圧倒されっぱなしで終わってしまった15分間。おそらくGT−Rの本来の性能のたった数%、それもたった数秒しか自分の能力では味わえませんでしたが、そのたった数%、数秒は、自分の中でこのR35GT−Rがいかに凄いのか…それをまざまざと記憶に刻まれるだけのインパクトを感じるには十分でした。
試乗後日産の方に、「いい音出して踏んでられましたね」と笑顔で話しかけられ、それに対して心の底から同じように満面の笑みで答えた自分。
このような時代の中でこんな「スーパーカー」を作った事だけでも、かなりの評価に値するでしょう。個人的には好き嫌いという次元を超えて、とにかくまず存在することだけで愛でたい1台。このGT−Rというクルマがまさに今存在している事実を、日本人として純粋に喜ばしく、そして誇りに思えます。
<レポート:岩田 和馬>


