2010年04月16日

CR−Zロングラン試乗 その2

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そして今回、突然ですが、CR−Zのライバルとして登場願ったのは、開発陣が名指しでライバル視するMINI……を試したかったところですが、今回は「300万円以下で買える国産スポーツカー」の代表として、この日本が世界に誇るコンベンショナルなスポーツカーのメートル原器である、マツダのロードスターをピックアップ。

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画像は前回のコペンとの比較試乗で乗った「RS」の6MTですが、今回試したのはCR−Zとキャラクターを合わせるために、ベースモデルのSの6速ATモデル。今回はあえてFFとFR、排気量などの違いはありますが、コンベンショナルな形でスポーツカーを具現化しているこのロードスターをライバルとして試乗比較してみることにしました。

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さて一般道のインプレッションに続いて、今回は足を伸ばしていつものワインディングコースへ。もちろんメーター右側の1番上のスイッチを押して「スポーツモード」へ、メーターはそれに伴って真っ赤に光ります。ここではCR−Zをエコカーとしてではなく、純粋に走りを楽しむ1台としての実力を試すために、燃費を気にせず積極的にアクセルを踏み込む事にします。

こういった場面で感じるのは、一般道ではどうしてもデメリットが目立つIMAユニットが、ワインディングのようなステージでは俄然「エンジン主体」のIMAのメリットが際立つ事。間違ってもDOHCのVTECと比べてはいけませんが、なかなかのサウンドを響かせて6000回転オーバーまでスムーズに気持ち良く回るのは、さすがホンダ車!と感じさせてくれます。また、特に3〜5000回転付近で積極的にモーターアシストしてくれるおかげで、ゼロ発進時直後の瞬発力やコーナーでの立ち上がりの力強さは、確かに1.5Lという排気量以上のボリュームを感じさせてくれます。

ただ、あくまでモーターアシストの存在感は一瞬だけ。全開加速でのトップエンド付近では、バッテリー&モーターを搭載した「やや重い」車重を引っ張る、1.5LのSOHC・VTECエンジン単体の動力性能に留まり、中回転付近での力強さから対比してしまうと、上の回転のパンチ力不足を相対的に感じてしまうかもしれません。

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ここがこのCR−Zのキャラクターをどう受け入れるのか、個人差が現れる最大のポイントのように感じます。個人的には、スポーツカー=サーキットという公式に乗っ取りがちな国産スポーツカーの定義には少し疑問があるので、こういった車がホンダから出るとすぐに「タイプR!タイプR!」と叫ぶような傾向はあまりに安易で軽率。ここはあくまで背伸びをしない、「ほどほどの性能」を持つそのCR−Zの等身大なキャラクターに共感を覚えます。

そのキャラクターは、走りこんでみるとあらゆる面に見えてきます。例えばハンドリング。タイアが軽く鳴く程度の7〜8割のペースで走ると、ショートホイールベースと適度にクイックなステアレシオが合わさって、実に小気味よく軽快にコーナーを駆け抜けていきます。たださらにペースを上げて、VSAが介入してくるあたりになると、バッテリーを搭載でフロント:リアの6:4という重量配分の影響か、とくにS字などのヨーが残った状態で反対側へアクションを起こすような場合、リアがスムーズにスライド…ではなく、ズルズルと重くアウト側へ振られてしまうような挙動を見せる事も。もちろんそのような場合やアンダーステアが出た場合はVSAが介入して挙動を安定させてくれるのですが、限界付近に近づくと少しシャシーのアンバランスさが顔を覗かせます。

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同じ事にはブレーキにも。常用域や少しハイペースな領域では、短めのストロークでカチッと効くブレーキは大変好印象。FFにしてはリアヘビーなおかげでノーズダイブも少ないこともあってか、下りのブレーキングでもリアの接地性が高い事も手伝って、この踏力に対するコントロール性の高さとブレーキタッチの良さは、大変評価したいところです。しかしそのままペースを上げ続けていくと、その良好なフィーリングは次第に影を潜めて、効き自体の衰えはさほどないものの、ストロークが大きく増えてブレーキタッチが極端に悪化する傾向が。ペースを元に戻せばすぐにブレーキのタッチは回復するのですが、ある程度スポーティな走行シーンを考慮するならば、パッド交換などの初歩的なブレーキチューンの必要性はあるでしょう。悪くなるまでのブレーキタッチが非常に良い分だけに落差が大きく感じられるだけに、ちょっと惜しい部分です。

こういった場面で「さすが!」と膝を叩きたくなる実力を見せてくれるのがロードスター。今回は6速ATモデルながら、ゆっくり走っている時でも気持ち良く、そして少し気合いを入れてそれなりに走っても、FRのお手本のようなナチュラルな挙動を示してくれるなど、こういったワインディングステージではさすがロードスターの素性の良さを実感します。ノーマルサス+16インチも、挙動変化が穏やかで分かりやすく、むしろビル足+17インチ仕様よりも個人的には好印象。

ただ絶対的パワーの差やFFとFRのトラクションの違いがありながらも、効率よく回転を上げてくれるCVTと、結構強力に感じられるモーターアシストのおかげで、コーナー立ち上がりの俊敏さはCR−Zもなかなかいい勝負を繰り広げてくれます。確かに余裕は少なくなるものの、同じペースでコーナーでついていく事も不可能ではありません。またロードスターはこういった点で、せっかくのマニュアルモードでもレッドラインよりかなり手前で自動シフトアップしてしまったりと、ATでも十分にスポーティに走る事は可能ですが、やはりMTを選びたいなぁ、と思ってしまいます。

さてCR−Zのほうに話を戻すと、スポーツモードでパドルを1度弾けば、そのままマニュアルモード固定状態に。しかしながらレッド付近ではもちろん自動シフトアップしますが一応レッドまで回ってくれるのは○。コーナー進入時には回転をキチンと制限以下にしておかないとシフトダウンを拒否されることもしばしばありますが、しかし疑似7速クロスレシオで体感上のつながりの良さはなかなかのもので、CVTでも十分にスポーティさは感じる事ができます。現時点でまだMTモデルを試せておらず、直接比較した印象をお伝えできないのが返す返すも大変残念ですが…。効率の良さや速さだけで言えばDレンジ固定のほうがいいのでしょうが、雰囲気を楽しむという点ではこのパドルシフトを使ってのギアセレクト・コントロールは、ドライビングの楽しさを高めてくれる大切な要素の1つと言えるでしょう。

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さて、ワインディングから続いて高速セクションへ。以前インサイトのレポートで、80〜100km/h付近のアベレージを保つ時の、横風などの外乱影響を過大に受けてしまう点や、それによる直進性の悪化と安定性の欠如についてかなり厳しい意見を残す事となりましたが、果たしてCR−Zはというと、インサイトで感じられた欠点を見事に克服している印象でした。レポート前編でお伝えした乗り心地の印象も含め、真っすぐ走っている時に限ればインサイトの時からのシャシー性能の向上感には著しいものがあります。このCR−Zの出来や経験を含めて、インサイトはマイナーチェンジなどで走りの質感や完成度をしっかり煮詰めて登場してくる…?

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一応ハイブリッドという事で空力性能もスタイリングとの兼ね合いもありながらしっかりと考えられているようですが、風切り音は若干大きめに耳に届きます。しかしこれはエンジン自体の音の静かさと遮音性の高さを表していると言えるかもしれません。こういった点ではクローズド状態にしても、高速域でフロントが若干ピョコピョコし始めるロードスターよりも、高速セクションでのグランドツーリング性能はCR−Zの実力はなかなかのもの。ドシッとしたステアフィールに追い越し時のアクセルに対する反応の良さと力強さ、4輪の接地性の高さにノーズダイブの少ないカチッと効くブレーキ、静粛性の高さなど、さすがに超高速域…アクセル全開でモーターアシストが得られない領域では1.5Lのサイズを痛感する時もあるものの、そういった場合を除けば1、2クラス上のゆとりを感じさせてくれます。このサイズとセグメントの国産では望外とも言える高速域でのグランドツーリング性能の高さは、CR−Zの大きな魅力の1つと言っていいでしょう。

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そういった場面で、アイポイントが低くポジションも適正で、小径のステアリングも握りやすく、視界も良く2シーターとしては十二分に快適な空間と視界が得られる…しかし、178cmの自分としては、シートが長距離ドライビングの唯一と言っていい妨げになってしまったのは残念。あらゆる点でロードスターよりも長距離ドライブはCR−Zのほうが良いと感じていたのですが、ロードスターのシートに比べてCR−Zのほうは、特に腰付近の疲れ方に大きな違いが感じられました。短時間の印象はなかなかサポート性も高く悪い印象はなかったのですが、少し座面の角度を起こして太もも付近のサポート性を上げ、ランバーサポートの調整が効くように、もしくは腰付近のシート厚をもう少し上げてくれれば、改善されるように思います。

そして高速走行をしていて感じたもう1つの点。それは「ECON」「ノーマル」「スポーツ」のモード設定について。これは登場直後のCR−Z試乗速報でも書いた事なのですが、それぞれのモード推薦のスロットルレスポンス、CVTのマニュアルモード制御、電動パワステの操舵力の変化などが、それぞれ単独で選ぶ事ができればいいのに…ということ。

例えば現状ではECONモードだとパドルを弾いてもすぐにDレンジへ自動復帰してしまいますが、燃費を意識しつつパドルシフトでマニュアルモード状態のまま上手く回転をコントロールしながら走りたい時もあるはず。またスポーツモードだとスロットルレスポンスだけでなくステアリングもグッと重くなりますが、これが重すぎると感じるならステアの重さだけノーマルモードの時の操舵力に設定できたり、また逆にECONモードの時にスポーツモード時のドッシリとしたステアフィールを選べたり…。

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推薦モードをある程度絞り込んで用意しておく必要性は分かりますが、せめて純正ナビ装着車だけでも、こういったそれぞれの制御を1つずつアレンジして組み合わせていって、自分だけのCR−Zマイベストなセッティングで走らせる事ができる……そうすればより、スポーティとエコという相反するテーマを実現しようとする、CR−Zのコンセプトがより1人1人のユーザーに浸透していけるのではないか?そう感じる事が試乗中度々ありました。おそらく制御プログラムの問題だけだと思うので、なんらかの形で実現してくれれば…と思います。

さて最後に燃費報告。2名乗車、エアコンは使用せず走行約500km、そのうち高速4割、一般道4割、ワインディング2割とおおよその内訳で、トータル燃費は14.8km/Lという結果でした。途中高速での渋滞やハイペース走行、ワインディング路では7〜8km/L付近を前後していたので、通常よりは悪い値になっていると思います。燃費計を見ながら走っていると、高速や郊外道路巡航状態で22〜24、高速ハイペース走行で16〜18、一般道走行で12〜13、ワインディングを流す程度で10を少し切る程度、といったところでしょうか。ちなみにほぼ同じステージを走行したロードスターの結果は9.8km/L。こちらもハイオクながら、その性能とのバランスを考えれば良好な数字と言えるでしょう。CR−Zの値はハイブリッドとして考えれば少し物足りなくも感じますが、そのスポーティさとの兼ね合い、バランスを考えれば、やはり十二分に優れていると言っていいと思います。

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さてこのCR−Zの賛否を分ける話題として、「このクルマはスポーツカーなのかどうか?」という点だと思うのですが、今回ロードスターを引き合いに出して比べてみると、その走りの実力自体だけを見ると「スポーティカー」というレベルに留まっていると言えるでしょう。厳しい見方をする人は、実用車に毛の生えた、妥協の1台という認識をする方もいるかもしれません。

しかしながら、途中にも少し書いた通り、個人的にはこのCR−Zの、手に収まる範囲で扱える、背伸びをしていない等身大なキャラクターとその性能に、むしろ逆に新鮮味を感じる事ができました。これは今年の頭に書いたレポートでコペンとロードスターを比較試乗した際にも実感したことなのですが、スポーツカーに過剰性能は必要不可欠な事では決してありません。ある意味白物家電的な普通車か、それともレーシングカーの領域に片足を突っ込んでいるスポーツカーか、というニッチなマーケット化になりつつある現状の日本車…そんな中このCR−Zは、ハイブリッドという武器(もしくは荷物?)を得る事により、エポックメイキングな存在になりそうな期待を抱かせる人気の高さでそのモデルライフをスタートさせました。個人的には「ハイブリッドレス」であっても十分に魅力が残る1台だと試乗速報レポートでお伝えしましたが、今回のロングランで思わぬGT性能の高さや、ワインディング路での実用車ベースの欠点を露呈したりと、様々な部分を垣間見る事ができました。

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繰り返しになりますが、間違っても「CR−ZタイプR待望!」などとまた極端化を進めるような考えは持たないほうが良いと個人的には考えます。もしタイプRを望むにしても、それはSタイアに近いハイグリップ大径タイアを履き、ブレンボで武装し、K20Aエンジンを搭載した走り屋系カリカリチューンをするのではなく、もっと21世紀に向けて持続可能な、新たなホンダのスポーティシーン演出の可能性を感じさせるクルマであって欲しい。

良くも悪くも、新たな意味でも、このCR−Zは実にホンダらしい1台と言えるでしょう。世界初のハイブリッドスポーツ、それをさらに楽しむためにはまだまだやるべき事はたくさんあるはず。欧州勢が着々とハイブリッド攻勢を強める中、この元祖日本のハイブリッド技術の一躍を担うメーカーとして、そして何よりホンダの未来の可能性を感じさせてくれる希望として、このCR−Zにこれからも大きく期待を寄せつつ、このレポートを締めくくりたいと思います。



レポート:岩田 和馬


posted by 親方 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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