2009年08月15日

新型メルセデスEクラスレビュー

今回は新型メルセデスEクラスの試乗レポートをお届けします。すでに6月からこちらへ導入が開始されてはいますが、日本のマーケットで中心となる右ハンドルモデルは今月からデリバリー開始。これから日本で見かける機会がますます増えるでしょう。

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まずはスタイリング。以前からすでに2回に分けてレポートした通り、新しいメルセデスのデザイントレンドを受け持つ、シャープかつエッジを効かせたデザインへと変貌。4灯式のヘッドライトは継承されましたが、その形状は丸目から角目へ。フロントはマーク2ブリッド、キラキラとしたリアのLEDテールもどこかトヨタ・レクサスっぽいと感じる人もいるかもしれません。

とはいえ、グッとサイズも大きく角度も起こされたフロントグリルを始めとして、威厳を前面に押し出すスタイルの流れは、かつてのW124時代を彷彿とさせる印象も抱かせます。リアフェンダーの盛り上がりは、かつてのW120型をモチーフとした造形だそうですが、あえて今なぜこのボディスタイルにそのファクターを持ち出したのかは少し疑問。またラインの切り方と歩行者保護の観点からポップアップ式を採用している影響か、ボンネットとフロントフェンダーのチリの大きさがサイドからかなり目立ってしまうのは残念な点です。

ちなみに試乗したのはカルサイトホワイトのE350アヴァンギャルド。後々にラインナップの追加などもされるでしょうが、おそらくここ日本ではこのグレードがメインとなるでしょう。ブラックの1台はE550アヴァンギャルドで、こちらはAMGスポーツパッケージが標準状態で装着されています。

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ちなみにこのAMGスポーツパッケージは、E350にも45万円で装着可能。AMGのスタイリングエアロに前後異径18インチタイア&アルミ、シートもステアリングもブレーキも専用品になり、かなり魅力的。特に専用の3本グリップのステアリングホイールは握りの良さ・質感も含めて特筆すべきものがあり、ノーマルのアヴァンギャルド仕様との差は歴然。「レクサスもどき」の安っぽいバンパー一体式マフラーと35扁平という強烈なタイアにさえ抵抗がなければ、お勧めのパッケージオプションと言えます。

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開け閉めするだけでもその堅牢感を十分に伝えるドアを開け、シートへ。やたらとブカブカ大きく日本人の体形にイマイチ合わなかったシートは、最近のメルセデスの流儀に漏れず劇的に改善。W211時代の大きな弱点であったナビ位置の低さも、新型ではようやく現代的なポジションへと収まりました。HDDナビは全グレード標準。SやCでも採用されたお馴染みとなりつつある遠隔インターフェイスのCOMMANDシステムは、最初はなかなか取っ付きにくく、少し慣れを必要とします。

日本車から欧州車へ乗り換えると必ずやってしまう「ウインカーレバーとワイパーレバー」の混同問題ですが、Cクラスと同様にこの新型Eクラスでもそれは問題にならず。ワイパーとウインカー操作が左側レバー1本に統一されており、間違えて車線変更をする度にワイパーが駆け足する心配はありません。

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そのかわりに右側コラムに大きめのレバーで配置されているのが、ATのセレクターレバー。最初に採用したBMW7シリーズは新型となってコンベンショナルな位置へと戻されましたが、一方メルセデスではこの主力のEクラスにも採用し、その規模をどんどんと拡大しています。これにより、副産物的にパドルシフトが全グレードに装着される事になったのは嬉しいポイント。

若干のボディサイズの変更、それに伴って室内寸法も変わっているのですが、ピラーが立ち気味となってウインドー面積が少し広くなったか?と感じる程度で、実際体感できるほど劇的な改善・改悪された印象はありません。

それより印象的だったのが、エクステリアにしろインテリアにしろ、いわゆる「初期ロット」っぽさをほとんど感じられなかった点。組み付け精度、と言ってもいいかもしれませんが、W203にしろW211にしろ、登場直後のモデルはお世辞にも褒められたものではないレベルでした。それが「欧州車はモデル末期が一番」という定説を生み出す所存でもあるのですが、今回の新型はシートの動作感にしろ、部品1つ1つのフィッティングにしても、そういった点をほとんど感じる事がありませんでした。これも3600万kmという桁違いのテストを重ねた結果が少なからず現れているのでしょう。これなら初モノで飛びついても心配はありません。

もちろん、それはあくまで「組み付け精度」から感じる質感であり、根本的にもつ絶対レベルでの質感は「並」。もちろんメルセデスの本質はそこではない、とは頭で理解しつつ、特にアウディやレクサスと同列に比較してしまうと、はっきりと無骨で安っぽい部分が散見されるのも事実。800万円を超えるクルマとしての「見て、触れて」という段階では、メルセデスのアドバンテージはいまやもうほとんどありません。


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しかしそんな事も、いざステアリングを握って走り始めると、どうでもよくなってしまうほど、思わず唸らざるを得ない、卓越した乗り味の持ち主である事をすぐに実感します。プッシュ式ボタンでエンジンをスタートさせ、セレクトレバーをDへ。ブレーキから足を放し、タイアがひと転がりし始める瞬間から、そして車道へと出るために、歩道の段差を、それこそ歩くようなスピードで超えただけでも、圧倒的なボディ剛性の高さと魔法のように滑らかに動くサスペンション。そして道路へと出、スピードを上げていってもその印象は変わらず、否むしろどんどんと良くなっていき、路面へピタッと張り付きながら、矢のようにズバッと走る直進性の良さ、インフォメーション性豊かなステアフィール。E550のエアサスとは違ってこのE350はバネサスですが、ダンパーに「ダイレクトコントロールサスペンション」という可変式ダンパーを採用しており、こちらの効果も大きく出ていると思われます。

よくBMWのエンジンフィールを表す言葉で、「シルキー」という言葉が使われます。間違ってもメルセデスのエンジンを「シルキー」と表現することはありませんが、この足の滑らかさは明らかに「スムーズ、かつシルキー」。試乗車のタイアは245幅の17インチのグッドイヤー。他にもBSトゥランザが装着される事を確認しています。

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前述したように、素晴らしく滑らかな足に比べれば、絶対的なパワーは必要十分以上なもののエンジンの存在感はさほどなく、「シャシーはエンジンより速く」というポリシーをまざまざと実感。もちろん、一時期のSOHCにこだわりを見せた迷走時代と比べれば、このDOHCの3.5Lは遥かにシャキッと回り、トルコンの滑りを意識させずにスパスパっとシフトアップする7G−トロニックとの組み合わせも好印象。通常は2速発進となり発進時は少しダルい印象ですが、ATの制御をスポーツモードにすれば1速発進となり、かったるい印象はなくなります。

ブレーキは大リコールを生み出したブレーキバイワイヤのSBCをモデル途中で廃止、新型もコンベンショナルなタイプが採用されています。そのブレーキにしろ、アクセルにしろ、可変式ギアレシオとなるステアリングにしろ、いずれも操作系は軽くスムーズ。それでも剛性感は抜群に高くインフォメーション性も理想的なのですが、欧州車らしい重めのフィーリングを期待する方にとっては、少し物足りなさを感じる部分でしょうか。もっとも、日本のタウンユースでの扱いやすさは間違いなく向上しており、速度を上げていっても頼りなさや不安感は微塵も感じられません。

デザインに関しては少し「?」な部分や迷いも感じられるものの、実際にステアリングを握ればさすが圧倒的な出来の良さとレベルの高さ。あくまでもこのミドルクラスサルーンのベンチマーク的存在である事を自負するその仕上がりは、「さすがメルセデス」とひれ伏す他ありません。趣味性や楽しさという部分で言えば真面目すぎる感もありますが、ここまでのレベルともなるとそれは贅沢すぎる要求であり、そんな意見にこのEクラスも耳を傾ける必要はないでしょう。そこは少しコンパクトなEクラスクーペや、いずれ登場するであろう2代目CLSがカバーしてくれるのでしょうから。



<レポート:岩田 和馬>


posted by 親方 at 17:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
カッコ悪いにもほどがある
ベンツだか便座だか知らないがこんな変な車はいらん。

Posted by 焼肉店まん at 2009年08月23日 18:31
Cd値0.25はトヨタ・プリウスと並び現行生産車第二位(一位は同じメルセデスのEクラスクーペ)、室内空間の取り方や油圧式ワイヤブレーキの熟成など、メルセデスならではの老舗のノウハウには一目置かざるを得ない。
それゆえ、日本仕様のバランスこそ取れているがある意味古色蒼然たるdohc/24バルブの3500ccエンジン(272ps)が悔やまれるのと同時に、フロントマスクの合体ロボ的賑々しい処理やボディデザイン全体の造形にも率直に言ってついて行けない部分がある。
その点、久々にエキサイティングなニュースが本国のメルセデスから流れてきた、老舗自動車雑誌M誌の今月号によれば、同社は3500ccのV6に新設計直噴エンジンを完成させ、向こう数年をかけてEクラスを筆頭にCクラスからSクラスに至る各モデルに搭載するという!306psの自然吸気で、燃費は12-13km/l付近を容易にマークするそうだ。また、V8分野においても4.5L級の過給機付きユニットを新開発、最大出力は430ps程度、こちらも無理なく二桁燃費を実現可能らしい。
いわば、「眠れる獅子が目覚め、メルセデスの覇権が再び確立する」風雲急を迎えた格好ですが、一旦はリードしたかに見えたBMW/アウディからレクサスに至る各社は再び強烈なカウンターパンチを受ける格好になり、モーターファンとしては実に目が離せない混戦に入ったと思います。
元メルセデス・オーナー(1992年式260E)の一人としては、個人的に最も応援しているブランドであるメルセデスの巻き返しに非常に心強いものを感じますが、逆に数年前260Eからの買い替えに際して諸般の事情からメルセデス製品を買うことができず、2009年式レクサスIS350を選んだ際、新鮮味がないエンジニアリングで過渡期にあるメルセデス車を選ばずに「熱効率では世界トップクラス、メルセデスで言う5.5のV8並みの動力性能と二桁燃費を両立」というレクサスならではの魅力に病みつけになってしまい、「メルセデス以外にも魅力的な選択肢がある」と身を持って感じている一方で、こうして他ブランドに流れたユーザー群に再び巨人の張り手で衝撃を与える辺り、老舗の底力がいかに並大抵でないかをまざまざと思い知らされる次第です!
PS
上の方のように、洗練された見識を持った第一線の自動車評論家である国沢光宏氏と、その弟子である永田さん他が展開する健全なるホームページ「国沢学校」に、品性を欠く表現の落書きに近いコメントが出ているのは個人的に非常に気がかりで、ページの良質さに背くものと思いますので判断の上適切に処理していただけたら宜しいかと思います。
Posted by 真鍋清 at 2010年06月03日 03:21
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