
昨日はレクサスブランドの新型車である「HS250h」の発表会でした。HS250hは年頭のデトロイトモーターショーにもプロトタイプが出展されていましたが、欧州風に言うとDセグメント、日本車だとレクサスISやスカイラインと同じ車格になるFFベースのハイブリッド専用車となります。「HS」の意味はHybrid Sedanかと思いきや、Harmonious Sedanの略で地球、人、上質との調和がコンセプトになります。
サイズは4700mm×1785mm×1505mm(全長×全幅×全高)と、幅がもう少し狭かったら日本の道路事情にドンピシャという気もしますが、車格を考えれば日本でもまずまず使いやすいところなのではないでしょうか。
スタイル自体はコンセプトカー的な新しさをグリルやテールランプに感じさせながらも、気になるクセのような部分もなく、なかなかよくまとまっているように思います。

リアスポイラーの設定もあり
また、ハイブリッド専用車ということで空気抵抗の低減にも力が入っており、Cd値は0.27と優秀です。さらに空気をスムースに後ろに流すための若干角が角張ったフロントバンパー、写真では見にくいですがルーフの少し凹んだような形状、フロアアンダーカバーの採用など、空気抵抗低減のための工夫やデバイスも盛り沢山です。
レクサスらしくというか、質感の高いインテリアもスタイルと同様にシフトバイワイヤーを使った小さなシフトノブやナビ画面の操作などに使うリモートタッチを採用するなど、未来的な印象です。1つ気になるといえば気になるのは、モニターが固定式ではなくポップアップ式となる点が、今になると良くない意味で珍しいというかちょっと古く見えることでしょうか。

プリウスのようなアーチ型のセンターコンソールではありませんが、左右のウォークスルーは難しそう

レクサスRXに続いて採用されたリモートタッチ

先代プリウスを思い出させるシフトノブ
インテリアで1つ「いいな」と思ったのが、インテリアの細かな部分の選択の多さです。写真に写っている本革シートの付く上級グレードで明るい色の部類になるキャメルイエローやサドルタンのシートカラーを選ぶと、インパネに張られる皮(正確には合皮)の色もアクセント部分がシートカラーと統一されます。こういった気配りというか演出は、高級車らしいものと言えます。
リアシートは全高の高いFF車だけあって、広大とまではいえないものの大人2人が正しい姿勢で長時間快適に過ごせる空間が確保されています。

ラゲッジスペースは、駆動用のバッテリーが後席後方の床下に入っているため若干奥行きがスポイルされている感もあるものの、メーカー発表ではゴルフバッグ4つが入るそうで、十分な広さと言えるのではないでしょうか。

ゴルフ場エキスプレスにもバッチリ
しかし、今回のHS250hは、個性は勿論、外観のラインの取り方や細部の質感など、およそレクサスの品格を持ち合わせていないデザインだと思ったのが率直なところです。特にフロントマスクやリアクォターはあまり見たくない部分です。
内装は、コメントされてます様に、まぁトヨタの範疇ではあるけれども良さげですので、余計にエクステリアとのチグハグ感が惜しい気がします。
この時代、どんなに優れたメカニズムを持っていても、デザインが醜ければ、その時点でOUTだと思います。もっと憧れを感じさせないとダメですね。
あくまで主観ですが.....
残るはシャーシー、パワートレーンの挙動に見られる未消化な部分を徹底的に煮詰め、完成された商品にしていくことがトヨタ技術陣に求められる点ではないでしょうか。目下のグリーン減税も2010年秋までには撤廃されるという情報が流れており、ハイブリッドだから何でも売れるというほど世の中は甘くないからには、このHSを料理して「レクサスならでは」のものを確立していくことこそレクサスブランドに求められる課題であるのは言うを待たないです。
このHS250h、欧州市場への投入の可能性も有力視されており、そうである以上は完成された商品にしてシトロエンC5 HDi(2.2と3.0がある)やBMW320d、アウディA4 2.0HDIらの鼻を開かす意気込みが必要だと思います。一方で既存のISシリーズには新たに北米で売られている350をユーロの新排ガス基準にミートさせて新投入し、「対3シリーズ/Cクラス包囲網」を形成することが求められるのではないでしょうか。
もっとも現実には欧州でのISは250がメインで、その上は一気にIS-Fまで行ってしまういびつなラインナップで、350投入のニュースが全く流れてこないのは当地の並行輸入業者(カナダ等からIS350を一定台数仕入れているという)への兼ね合いという「政治的駆け引き」でもあるのでしょうか。
もちろん最近ではインフィニティG37(日産スカイラインの3.7/V6)の販売も始まりましたし、スバルもレガシイに2.5GT(ターボ265ps)を追加してEUでの「オリエント・エキスプレス」の競争も本格化し、対3シリーズ/A4/Cクラス戦略に日本メーカーも本腰を入れつつあることが伺えます。
こうした情勢を踏まえて、日本の旗を掲げて本場欧州に殴りこむ尖兵としてのプレミアム・ブランド「レクサス」に求められることはHS250hをスペース重視、経済性重視のハイブリッドセダンとして徹底的に煮詰めてシトロエンC5やVWパサートらのコモンレール・ディーゼル軍団に真っ向対決させ、それと対照的にISシリーズは走りと環境性能の高度な両立を武器にBMW3シリーズからアウディA5/S5スポーツバック、さらには新型サーブ9-5(この他アルファロメオ169の投入も噂されている)に至る強豪をリードしようという戦略があってこそ同ブランドのDセグメント戦略は質的に厚みを増すのではないでしょうか。