2009年02月09日

インサイトを見てきました 2

注目のパワートレーンですが、エンジンはシビックHVと同じ1.3L。ツインプラグのi―DSIと可変バルブタイミングのVTECを融合させたi−VTECユニットで、DBWを採用し、走行状況に応じて4気筒とも気筒休止を行いポンピングロスを低減させるVCM機能をもつ点も同じ。シビックHVと異なるのは、VTECの制御を3ステージから2ステージへと変更している点。高回転域の6psを捨てて、より実用域重視のセッティングがなされている事が伺えます。

ちなみに余談ですが、すでにご存じの通り、いわゆるトヨタ方式のハイブリッドシステムとは違って、ホンダ方式のハイブリッドの考えは、あくまでエンジンが主体。基本的にはモーターはエンジンの動力源の補助という形であり、アイドルストップが行われるものの、プリウスのようにモーターのみで発進するEV走行は行われないというのはインサイトも同じ。低速クルーズ状態の時に限ってモーターのみの走行が行われます。

そのハイブリッドの肝となるIMAのニッケル水素のバッテリーは、よりコンパクト可が図られ、大量生産されるように生産性も考慮に入れるため、そのほとんどを一新。その性能は単体で16ps/8.0kgm。これは先代インサイトとシビックHVのほぼ中間。同じ排気量ながら、エンジン+モーターで発揮する性能が、シビックHVが1.8L級と謳っているのに対し、新型インサイトは1.5L級。この表現の違いが、シビックHVとインサイトの性能差を表していると言えるでしょう。

少し残念なのは、エアコンの制御。シビックHVは状況に応じて、エアコンの駆動力元をエンジンだけでなく専用のモーターを備える事で、アイドルストップ時のエアコン制御を行うデュアルスクロールコンプレッサーを採用していましたが、新型インサイトのエアコン制御は通常のベルト駆動のみ。もちろんある程度冷媒に熱容量があるため、エンジンが止まってもしばらくの間エアコンは作動しますが、夏場の渋滞路でのアイドルストップの時間には影響が出そうです。もちろんこの制御があったことに越したことはありませんが、おそらくこれも目的はコストダウン。本当に必要な部分以外は削り取って、よりコストパフォーマンスを重視したハイブリッドシステム構築を掲げた、新型インサイトの姿勢が表れている一部分と言えそうです。

組み合わされるギアボックスは当然CVT。パワーユニットの出力差を考えて、若干のローギアードが図られています。また、エンジン・CVT・エアコンの制御までを統合制御して、よりエコドライブ志向へセッティングしてくれるECONボタンを、オデッセイに続いてこのインサイトにも採用。ボタンは運転席正面右側のミラー調整スイッチパネル付近に配置され、大きく目立つグリーンのボタンは非常に分かりやすく操作性も○。多少ラフなアクセルワークをしてもクルマの挙動に大きく表れないので、当然急発進につながるような極端な動作はしないという前提の上で、ノロノロ運転状態での足の疲労低減という意味でも、上手く使えそうな装置の1つです。

また、もう1つ注目したいのが、LSグレードに装着される7速マニュアルモードとパドルシフト。フィットRSなどでお馴染みですが、ハイブリッドモデルでパドルシフトを装着するというのは、かなり異端。これも、ハイブリッドであってもスポーティさは忘れない…というホンダの姿勢の表れでしょう。こういった所から、いずれ登場するであろう、ハイブリッドスポーツであるCR−Zの姿がチラリと感じられます。

もちろん、高回転域を犠牲にしたVTECエンジンを搭載するハイブリッドモデルにパドルシフトを装着するなんて無駄……などというのは極めて安直かつ軽率な考え。有効でおいしい回転域を積極的に使え、一定速では低い回転域を維持できるCVTはその反面、全開加速時ではエンジンが高回転を常に維持してしまい忙しなく、また細かく段階的なエンジンブレーキをかけるシチュレーションは苦手。しかし、擬似的に7速を区切ったマニュアルモードを使えば、アクセル開度が大きい場面でも中回転域を有効に使え、また下りのワインディングなどではパドルシフトも相まって、よりエンジンブレーキの強弱のコントロール幅が増えます。これらを効果的に使えば、場面によってはよりスムーズかつ燃費に有利な場合も。安易にスポーティさを付属した装飾品扱いにしてしまうのはもったいない、よりエコドライブを楽しくするための有効な装備の1つと言えるでしょう。

足周りはフロント・リアともにフィットと共通。約1200kgと比較的軽めの車重もあって、ブレーキはフロントがディスク式でリアはドラム。このインサイトは軽さも大きな武器で、シビックHVよりも約80kg、プリウスよりも約70kgと大人1人分程度軽量。次期プリウスはおそらくさらにもう1人分ほど重くなることは必須でしょう。

気になる燃費性能は、10モードで30km/L。インサイトは軽量ながら、現行プリウスはもちろん、シビックHVにも僅かながら及びません。しかしより実用的なJC08モードでは26.0km/LとシビックHVを逆転し、現行プリウスとの差も確実に縮まります。

ライバルと比較すればより軽量…しかしながら、量産性とコストパフォーマンスを優先したハイブリッドモデルなので、絶対的には抜群に優れている事には変わりないものの、燃費は若干劣る……しかし、これについてもう1つ忘れてはならないのが、タイヤの話。

G、Lグレードは175幅の15インチ、LSグレードには立派な185幅の16インチタイヤが奢られていますが、どちらのタイヤ銘柄も、フィットで通常装着されるいわゆる一般的なノーマルタイヤ。プリウスやシビックHVは転がり抵抗の少ない専用エコタイヤを装着していますが、インサイトは一般車に装着されるタイヤと何ら変わりありません。もちろん、コスト面という話も当然あるでしょうが、ここがこのインサイトが、ハイブリッドモデルだからといって特別なモデルではなく、あくまで一般のクルマと同じ土台での選択肢の1つである……インサイトの基本コンセプトを物語るパーツチョイスの1つであると言えます。


最後に、そのコンセプトを最大のインパクトをもってして示すのが、価格。すでに一般ニュースでも取り上げられるほど、Gグレードの189万円という価格は、ハイブリッド専用ボディをもつクルマとしてインパクトもアピール度も満点。

しかも装備内容を見ても、ドアミラーやドアハンドルがブラックだったり、いわゆる鉄ホイールむき出しだったり…といった、価格戦略のみのグレードではなく、1つ上のLグレードとの外見上の差といえばドアミラーウインカーが装着されない程度……アンテナ位置も同じで、比較的削られやすい装備であるプライバシーガラスも標準。他にも、マニュアル式ではなくフルオート式エアコンなので操作パネルももちろん同一、電動格納式ドアミラー、セキュリティアラーム、アクティブヘッドレストも標準装備……もちろん、テレスコ&チルトステアリングもラチェット式シートリフターも全グレード装備されているので、基本的な装備に関しては何ら不満なし…むしろ、通常の中間グレードくらい充実していると言ってもいいでしょう。これで189万円という価格は、はっきり言ってバーゲンプライス。落そうと思えば、さらに装備を削ってビジネスパッケージを設定してさらに価格を落とす事さえ可能!?

唯一気になる点と言えば、オーディオレス+2スピーカー状態が標準ということくらい。これも、仮にHDDナビシステムを組み込めば、自然に4スピーカーとなるので、こちらもあまり問題なし。ちなみにHDDナビを装着すると、クルマと連動してエコドライブをサポートしてくれるティーチング機能がさらに充実。リアバックモニターとETC車載器も付いてきて約25万円。もともと低価格が目玉なクルマなので難しいところですが、内容だけを考えればこの純正ナビはなかなかお勧めです。

また、複数装着状態では若干悪しき習慣が残るものの、「抱き合わせセットオプション」の制度が若干崩れ、単独で装着できるメーカーオプションが多くなったのも朗報。Gグレードでも、ディスチャージヘッドライトとセットで、車両安定装置であるVSAを装着できる点は◎。価格を抑えた低グレードでは、オプション装着する権限さえ奪ってしまうような事がよくありますが、このインサイトではそういった心配はいりません。

もっとも、Gに多くオプションを装着するよりも、いっそ1グレード上のLをチョイスしたほうが賢いかも?という考えもあるかもしれません。しかしこちらはGに加えて、ディスチャージヘッドライト、本革巻ステアリング、ラゲッジ&フットランプ、ドアミラーウインカー、前後シートアームレスト、間欠調節式ワイパー、4スピーカー…他、追加装備される程度。これで価格はGより16万円高い205万円。これを見ても分かる通り、いかにGグレードがお買い得な設定となっているかがよく分かります。ディスチャージヘッドライトはGにもオプション装着できるので、欲しい装備が数々!というわけでなければ、Gグレードで十分な内容かもしれません。

そのLの上に位置するのが、最上級モデルとなるLS。こちらは先ほどのLにさらに加えて、VSA、フロントフォグランプ、パドルシフト、16インチタイヤ&専用アルミホイール(G、Lは15インチのホイールキャップ。Lはメーカーオプションで15インチアルミホイール装着可)、フロントハーフシェイドウィンドー、パドルシフトが追加装備。価格は221万円とLより16万円高、つまりG→Lとの価格差と同一。16インチタイヤとホイールは、燃費性能を若干低下させてしまうものの、見た目のカッコよさはさらに引き立つ印象。パドルシフトは他グレードでは装着できないため、この少しスポーティな雰囲気に魅力を感じれば、このLSをチョイスするのがベストでしょう。Gより32万円高いとはいえ、それでも221万円。シビックHVやプリウスの入門グレードよりも価格面だけで言えば、まだお買い得。それだけ、このインサイトの価格設定は非常にユーザーの心をくすぐると言えるでしょう。

また、4月以降は新グリーン税制が適応となれば、自動車所得税と重量税が無料に…お買い得感はさらに増します。ライバルと目されるプリウスはもちろんの事、同じメーカー内のシビックHVも当然、またこの価格だと1つ下のフィットクラスのコンパクトカーを求めるユーザー層も十分範疇に入るのでは……新車不況と言われて久しいですが、そんな中このインサイトの登場は、現状の自動車マーケットに大きな風を吹かす可能性は十分アリ!と期待していいでしょう。

絶対的な性能だけを見れば、新型プリウスには当然として、現行型プリウスにも若干劣るであろうことは明白な事実。サイズの違いも影響し、特にリアシートのスペースは、最近の優れたユーティリティを備え持つコンパクトカーに慣れていると、若干厳しいと感じてしまうのも現実です。しかしながら、個人的には、現行型プリウスがインサイトに近い価格設定で勝負してきたとしても、現時点ではハッキリと新型インサイトの方に魅力を多く感じました。さらに言えば、やっぱり新しくいい方のものを…という観点からも、3代目の新型プリウスを実際見てしまえば、2代目はすでに過去のもの…という感覚になってしまいそうな気もします。

『世の中に役立つ技術は、誰もが手にできてこそ意味がある』。
インサイトのティザーCMで何度も流されていたこの言葉を、ホンダはこのクルマで見事具現化してくれました。その価格やハイブリッドどうこうという前に、まず1台のクルマとしての魅力の高さもなかなかのもの。もちろん、実際これからステアリングを握って運転するまでは全ての評価をすることはできませんが、久々にホンダらしい魅力的な1台に出会えた…そんな率直な印象をこのインサイトには抱きました。

F1からの撤退、NSX後継車の開発中止、欧州シビックタイプRの販売延期、度重なる業績下降修正と新車販売不振…もちろんホンダだけではなく、最近日本の自動車メーカーからは、溜め息が思わず漏れてしまいそうになるニュースばかり。そんな中、この激流とも言える移り変わりの速い時代の空気と流れをキチンと読んで登場した、新型インサイト。年内に登場するであろう新型プリウスと共に、自動車界を牽引してくれる1台となってくれる事を願って止みません。




岩田和馬(19歳 大学1年生 大阪府在住)
子供の頃から筋金入りのクルマ好きで、自動車メディアの仕事に就くことが夢です。自動車メディアは東京中心であり関西人には縁遠いものに感じていましたが、国沢学校での経験を通し夢実現に向け頑張って行きたいと思います。
posted by 親方 at 09:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今年、インサイトかプリウス買う事にしていますが大変参考になりました。新型プリウスが楽しみですね。この勝負、夏には決着するのかと。新・旧プリウス連合の圧勝のなる予感がするのですが。
Posted by 達川 健治 at 2009年02月10日 23:11
達川 健治さん>

ありがとうございます。

ホンダのほうは、このインサイトが001号。
2、3と続いていくので
その点ではこれからも発展的に戦いは続いていくのでは…と思います。
Posted by 岩田 at 2009年02月11日 19:33
私は初代型プリウスに乗ってます。
インサイトのエアコンエンジン駆動は最悪ですね。初代プリもエアコンはエンジン駆動なのですが、真夏の渋滞路は最悪。熱くてエンジンフル始動モードに切り替えてしまいます。ちょっと残念どころでは済みません。
値段の安さに釣られて買ってしまうと、今まで乗っていた車よりかなり我慢を強いられそうです。
パッケージングに至ってはハイブリッドカーで初代プリを超える居住性を実現している車が出ないことが苛立ちます。インサイトの後部座席は酷すぎます。
岩田さんは初代プリ(マイナーチェンジ後モデル)を一度乗られることをお勧めします。
Posted by 白いプリ乗り at 2009年02月12日 20:19
白いプリ乗りさん>
コメントありがとうございます。

エアコンに関してですが、
シビックHVでも採用されているように
技術的に採用する事は全く問題ありません。

しかし、重要な点は
コストと、買い替えユーザー対象。
今回の価格を設定できたのは、こういった割り切りの積み重ねであり
またインサイトは、今ハイブリッドカーに乗るユーザーを対象にしていないように思えます。
実際このあたりは、夏場の比較などもしてみないと分かりませんね。


パッケージングに関しては、全くその通りだと思います。
自分は初代プリウスは前期・後期・後期ツーリング仕様を既に体験済みですが
プリウスはハイブリッドカーであるという以前に
あの5ナンバーサイズ枠のセダンのパッケージング革命車でもありました。
現行プリウスも、正直リアスペースに関しては
初代から退歩していると言ってもいいでしょう。
とりわけ後期モデルなら、ラゲッジスペース拡大も図られていますからね。
リアの死角の多さも含めて、初代プリウスのパッケージング能力は
今改めて考え直してもいいかもしれません。
Posted by 岩田 at 2009年02月13日 02:16
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