2009年02月08日

インサイトを見てきました

ホンダから、新型インサイトが登場しました。

以前パリサロンショーのレポートでも書いたとおり、「燃費実験車」的な軽量2シータークーペから、より実用的な5ドアモデルへと姿を変えて登場。コンセプトモデルからは、ライト部分やミラーなどの細部の変更と、タイヤ&ホイールがより現実的なサイズへと変わった程度。低めの全高と、5ナンバーサイズにこだわった全幅もそのままです。そして最大の注目の価格も、キッチリと公約を守って登場。順に細かく紹介していきたいと思います。

まず最初に、サイズや排気量や価格的に考えても、プリウスと直接比較しライバル視するのは少しピント外れ…そういった意見も聞かれます。排気量が1.8Lへと拡大される3代目の新型はもちろん、1.5Lの現行型と比較しても、新型プリウス>旧型プリウス>新型インサイトという図式が成り立つように、確実にインサイトは1クラス、2クラス下のポジション。しかしながら、「ハイブリッド専用乗用モデル」と考えれば、はっきり言ってプリウスの直接的ライバルはこれまでの間不在。そう考えれば、ハイブリッドのみの5人乗りハッチバックで登場したインサイトは、その分かりやすさも含めて、ここではハッキリと「プリウスの最大のライバルカー」として考えるのが自然……現行型を引き続き併売するという販売戦略を取る予定だというトヨタ側の動きを見ても、はっきりとこのインサイトを猛烈に意識している事は明白…ということで、やはりメインは現行型プリウスを意識して比べながら、さらに同じホンダのシビックハイブリッドも含めて、この新型インサイトを紹介していこうと思います。


話を戻して、まずはスタイリングから。全長×全幅×全高×ホイールベース(mm)は、

インサイト=4390×1695×1425×2550
現プリウス=4445×1725×1490×2700
シビック=4535×1750×1435×2700
フィット=3900×1695×1525×2500

プリウスと比較すれば全長は55mmほどしか変わりませんが、ホイールベースは150mmもの差があります。ちなみにこの数値、フィットより50mm長く、奇しくも初代プリウスと同値。最近の車としては、珍しくフロントオーバーハングが長めに感じる要因はここにありそうです。またプリウスよりも65mm、セダンのシビックよりさらに10mm低い全高も、インサイトのプロポーションを決定付けている1つのポイントと言えるでしょう。

また、今回5ナンバーというサイズ枠にこだわった点については、ホンダに拍手。もちろん、大きくなりすぎたシビックとのポジション分けの問題もあったでしょうが、最大のポイントは、ベースとなるフィットとの部品の共用化。これにより、間違いなくコストダウンが図られた事は明白です。またそれだけではなく、ホンダの実用的ハイブリッドオリジナルモデルとして、このディメッションを世界統一としてグローバル展開していくことは、当然欧米からの反発は相当なものだったとは思いますが、現在の世界の自動車情勢を見る限り、空気を確実に読めたサイズ感であると言えます。むやみやたらにブクブクと大きくなりたがる昨今の新型モデルに対して、このインサイトのディメッションが、これからの時代を見据えた、国内外メーカーへの大きな布石となって欲しいと切に願います。

市販型に近づくにつれ、やはりどうしてもプリウスに似た印象になるのは致し方ないところでしょうか。フロントの造形は、オデッセイやストリームでも見られる「ホンダ顔」、サイドやリアなどは「ミニFCXクラリティ」というイメージを上手く形にしています。しかし、FCXクラリティが世間的にまだまだ認知されていない事を考えれば、このプロポーションではプリウスの模倣というイメージをもたれる事はどう見たとしても避けられません。ホンダ側は「むしろ2代目プリウスが、初代インサイトやCR−Xのマネだ」と言ってはいますが、ウィッシュ→ストリームという一件があったように、ホンダも独自性うんぬんよりも、よりベストなパッケージングを追及した結果の現れ……。逆にこの事が、ホンダがこの2代目インサイトにかける意気込みを現しているのかもしれません。

その事を除けば、5ナンバー枠にこだわっていながら、サイドビューは平板な印象はなく、特にリアドアからリアクォーターピラーにかけての、FCXクラリティに通ずるサイド〜リアをギュッと絞り込むボディラインは、なかなか大胆かつ先進的な印象です。ドアカットを大胆にグッと回り込ませクォーターウインドーを廃止したのは、6ライト(フロントの三角窓を加えれば8ライト)をとるプリウスとは大きく違う点。

リアビューも、こちらもFCX似。全体的な印象はプリウスとも良く似たポジションですが、ディティールを変えることで上手く独自の印象を出そうとしています。ハイマウント部分をテールランプとつなげる処理がなされていますが、実際にブレーキを踏んだ際に点灯するのは、中央部分の範囲のみ。テールランプは一見シンプルなレイアウトにも見えますが、LEDを採用するブレーキランプの点灯パターンをライトON時には縁取り部分が、ブレーキング時には中央部分を含め全体が光るようになっていたりと、視認性を重視しつつ、さりげない演出を見せてくれるこだわりを見つけることができます。


個人的な印象としては、何度も言いますが、プリウスの模倣である事はどう考えても明白です。しかしそれを好意的に受け取るならば、直線的なラインでまとめられた「ホンダ的プリウス解釈」であるこのインサイトのスタイリングには、素直に好感がもてます。車高が低めなこともあり、プリウスよりもスポーティな印象は確実に上。またモデューロや無限のエアロを装着すれば、とてもハイブリッドモデルとは思えないほどカッコ良く決まります。このスタイリングだけで、例えハイブリッドモデルという点に興味がなくとも、購入意欲をそそられる人もいるのではないでしょうか。

もちろん、今となっては3ナンバーと肥大化してしまい、どう見てもカッコイイとは思えない理解不能なデザインの現行FD型シビックセダンの1ラインナップであるハイブリッドよりも、このインサイトのほうがはるかに先進的でスタイリッシュ、かつ魅力的。一応シビックハイブリッドも併売される…とのことですが、いずれ販売状況がどうなるかは、もうその結果は目に見えてはっきり出ると思います。

グリップ式ではなくフラップ式のドアハンドルを少し残念に思いながら、ドアを開けて運転席へと座ります。インテリアの印象は、まさしく成り立ちそのままに、シビック+フィット÷2。最近のホンダの特徴として、パッと見は少しゴチャゴチャとしていて散雑な印象を持ちますが、実際の使い勝手はなかなかのもの。左右非対称インパネによって、ややナビの位置が助手席寄りすぎている感じもありますが、視認性や操作性自体は大変よく、またハザードスイッチも非常に分かりやすいのも○。また後述しますが、この価格にして全車フルオートエアコンが標準装備されており、この操作パネルの位置操作のしやすさやスイッチの質感も十分以上。見た目の質感は決して高いほうではありませんが、実際によく手の触れるスイッチの操作感や小物入れ部分などのタッチは、イメージが共通するだけでなく実際多くのパーツを共用しているであろうフィットよりも、確実に上に感じました。価格を考えれば質感は十分以上といっても差支えはないでしょう。少し気になるといえば、中央助手席側のエアコンの吹き出し口が、運転席からは少し遠いくらいです。

ステアリングは、シビックやフィットにも採用されているのと同一品。比較的小径タイプでグリップも太く、握り自体はなかなかのもの。しかしながら、多少慣れてきたとはいえ、いかんせんこの少々グロテスクにも思えるステアリングデザインが、インテリアとの調和性を少し欠いているという印象は個人的にはまだ今でも拭えません。ちなみにベースモデルとなるGのみがウレタンで、その他のグレードは本革仕様となっています。

フィットの大きく違うのは、シビックと共通するマルチプレックスメーター。キャブフォワードのクルマにありがちな、インパネ前部分のデッドスペースを上手く利用したこの上下2段式のメーターですが、このインサイトはよりそのレイアウトを分かりやすいものに。シビックでは上メーター(アンビエントメーター)に色々な表示がありましたが、インサイトはスピード表示のみ。ガソリン計やモーターのアシストメーターは、タコメーターと一緒に下メーターのほうにまとめられました。代わりに追加されたのは、現在のドライビング状況を分かりやすく「色」の変化で表示するコーチング機能。各メーカーはエコドライブのインジケーターなどを装着していますが、ホンダはメーターパネルの色を変化させることによって、視覚的に非常に分かりやすい表示方法を採用しています。タコメーター中央のマルチインフォメーションディスプレイでも、バー表示によってエコドライブをうながすようにモニターが変化しますが、エコドライブではグリーンに…アクセルを踏み加速するとブルーに…と、色彩によってドライバーに表示するこの方式は、単純ながらもその分かりやすさと把握性の高さにおいて、今後必見すべき新たなインターフェイスの提案の1つとなりそうです。

メーターまわりは斬新なものの、他の部分…シフトレバーは通常のフロアシフトで、サイドブレーキもハンドタイプ。動かす過程から近未来感たっぷりのプリウスと比べれば、良くも悪くも一般の車と同じような印象。もちろんこれは、このインサイトのコンセプトそのものを表していると言ってもいいので、取っ付き易さという点はむしろこのインサイトの特徴として見るべきでしょう。

むしろインサイトで評価したいのは、ドライビングポジションの良さ。少し低めのアイポイントに加え、適度なホールド感を備えたシート。また、ステアリングはテレスコ&チルト調整が可能で、ラチェット式シートリフターも装着されており、ポジションの自由度や収まりの良さは、どう調節してもルーミーさが残ってしまうプリウスとは隔世の差。サイドウォークスルーが可能なプリウスのゆったり感もそれはそれで長所ですが、基本的な運転姿勢の収まりの良さは、比べるとインサイトのほうがはっきりとスポーティ。調整幅や種類が多い点は、女性ユーザーにも好印象に受け取られるはず。

少し気になるのは、後方視界。バックミラーで真後ろを見ると、こちらはプリウスと同じような、補助ガラスとなるエクストラウィンドーのおかげで、ハッチガラスとの境界ピラーさえ目障りでなければ、通常の車よりもむしろ後方視界は優れているくらい。しかしながら、リアピラーが大きく寝ているハッチバックモデルの宿命として、斜め後方の死角はかなり大きめ。プリウスはクォーターウィンドウがあるおかげで若干マシですが、インサイトは大きくリアドアのカットを引っ張ってはいるものの、ウィンドウ面積自体も狭めなので、ここは購入検討される際にはぜひ一度確認する必要がありそうです。

前席ではその車高の低さというのが良い印象へと結びついていましたが、後席ではやはり若干の弊害を感じます。まずルーフ自体が低くリアへと大きく傾斜している見た目の通り、乗員性はイマイチ。思ったよりも後席の配置が前寄りなので、乗り込む際の足入れ性にも少し気を使います。乗り込んでしまえば、足元スペースはまぁまぁのゆとり。しかし、178cmの自分にはヘッドクリアランスは相当厳しい印象。もちろんルーズな姿勢で座ってしまえばあまり気にはなりませんが、ベルトを装着してキチンとした姿勢を取ると、頭は完全に当たります。また、グラスエリアがグッと絞り込まれているため、開放感という点でもイマイチ。ここは全高の違いにより、プリウスの圧勝。プリウスでも頭上付近は結構苦しいのですが、グラスエリアは広く明るい印象で、また足元スペースのゆとりも大きく違います。インサイトもコスト管理が厳しい中、キチンと中央席にも3点ベルトとヘッドレストを装着している点は評価できますが、その絶対的なシートサイズを含め、女性や子供はともかく、一般的な男性には少々窮屈な印象があるのは拭えません。またリアドアの開口部が大きくリアクォーターから開くようになっているので、狭い場所でのドアの開閉には少し注意が必要です。

反面、プリウスよりも優れていると感じたのは、ラゲッジスペース。バッテリーがあることでラゲッジフロアが高めなのはプリウスもインサイトも同じながら、インサイトのほうがよりラゲッジの高さ方向に余裕がある印象。これも、より小型化されたバッテリーシステムによる恩恵でしょう。床下収納を備えているのはプリウスも同じながら、インサイトは手前部分がさらに深くなっていてそこをサブトランクとして利用できるなど、実用性は一枚上手。リアバックドアもプリウスよりも軽く開閉可能です。

6:4の分割可倒のリアシートは、シングルフォールディングながら倒せばほぼフラットな空間が広がり、シート可倒さえできなかったシビックHVとは雲泥の差。これもハッチバックスタイルの採用とバッテリーの小型化による恩恵でしょう。初代インサイトの「土を敷きつめて家庭菜園でもしろというのか?」というような薄っぺらい空間からは想像できないほど、極めて実用的に使えるスペースとなっています。



岩田和馬(19歳 大学1年生 大阪府在住)
子供の頃から筋金入りのクルマ好きで、自動車メディアの仕事に就くことが夢です。自動車メディアは東京中心であり関西人には縁遠いものに感じていましたが、国沢学校での経験を通し夢実現に向け頑張って行きたいと思います。
posted by 親方 at 11:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 岩田和馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ウィッシュ→ストリームという一件があったように、ホンダも独自性うんぬんよりも、よりベストなパッケージングを追及した結果の現れ……。

発売されたのは、ストリームが先だったはずでは・・・?
Posted by イナマ at 2009年02月11日 12:09
イナマさん>
少し書き方の表現がややこしくなってしまいました。

ストリームの方がデビューが先だというのは承知しています。
ウィッシュがストリームを模倣した、と表現すべきでした。
Posted by 岩田 at 2009年02月11日 19:31
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