個人的には2年前にムーヴがフルモデルチェンジされ、車の実力としてはムーヴの方が優勢でも販売ではワゴンRが勝っていただけに、失礼な言い方をすればルーティーンワーク的なフルモデルチェンジをするかと予想していました。しかし、実際には「ダイハツの追い上げは相当なプレッシャーだったのだな」と感じさせるフルモデルチェンジでした。
まずスタイルから見ていくと、「いかにもワゴンR」という形なのは今まで通りですが、顔つきの変化やガラス面積が狭く見えるところ(実際には今までとそれほど変わらないとのこと)など、目新しさは十分です。
なお、スタイルは標準タイプと先代のモデルサイクル後半で追加された「スティングレー」(ダイハツでいえばカスタムのような位置付け)の2種類です。
インテリアはパレットに似た雰囲気で、道具っぽさを感じさせた先代に比べれば質感はかなり向上しています。
上/標準、下/スティングレー
室内空間はムーヴとほぼ互角、リアシートはホイールベースがムーヴより短いこともありムーヴの勝ちといったところでしょうか。広さ自体はハイト系の軽自動車の中で見れば合格点以上と言えるとレベルです。
そして意外だったのがプラットホームです。てっきりリアが新設計されたパレットの流用かと思いきや、リアはパレットのものながらフロントも新設計とのこと。さらに普通はゴム製のバンプラバーも高価なウレタン製だそうで、ワゴンRはスズキの稼ぎ頭だけに扱いも違うようです。
エンジンは数値も形式自体は同じながら、NA、ターボともにヘッド周りに大改良が加えられており、扱いやすさや燃費の向上に大きく貢献しているようです。今までスズキの3気筒エンジンは、基本設計が古いため(ストロークの短さも含む)ダイハツの3気筒エンジンに比べると低速トルクや「いかにも3気筒的な音」など劣勢でしたが、差をどの程度縮めたか気になります。
なお、先代ワゴンR(というよりスズキの軽自動車)ではマイルドターボや直噴ターボもありましたが、新型ワゴンRのターボエンジンはオーソドックスなもの1本となっています
写真はターボ
トランスミッションはCVTとの組み合わせが拡大されたことがトピックです。しかし、ターボは全車CVTながらNAの上級グレードでは4速AT,CVTの両方が選べます。これは値段優先のユーザーも多いことを考慮した結果だそうですが、いっそのことCVTの設定を増やし量産効果でコスト低減を考えてもいいようにも感じます。
価格は標準タイプのムーヴのベーシックグレードとなるL(101万8500円)と対応するFX(104万4750円)と比べると、若干高い感じです。このあたりは王者の余裕といったところでしょうか。
完全なキープコンセプトだけど最新のプラットホームの導入やエンジンの大改良など、スズキの総力を挙げて開発された新型ワゴンRの月間販売目標台数はなんと1万8000台! コンテも加わったムーヴ軍団とどんな戦いになるか非常に興味深いです。