突然ですが、電機製品を買い替える時ってどんな時でしょうか。HDDレコーダーや液晶テレビといった画期的な商品が出た時、故障が起きて買い換えてしまった方がいいと判断した時など、いろいろだと思います。このような買い替えなら迷う必要はないにしても、悩むのが「消耗品の交換が必要になって、消耗品代が高いからいっそ新品に買い換えるか」というケースです。
例えばヒゲの濃い私には必需品の電気シェーバーです。だいたい1年くらいでの交換が推奨されている内刀と外刀を換えるのに5000円程度掛かるのに対し、新品シェーバーが7000円くらいで買えててしまうこともよくあります。こうなると、「もったいないけど新品の方がいいか」とも考えてしまいます。
プリンターも似ていると思います。もしプリンターにインク切れと軽微な不具合が起きたとして、インクを換えるだけでも純正品だと4000円から5000円、新品プリンターが1万円くらいで買えるとしたら、ほとんどの人が新品に買い替えると思います。
このサイクルは確かに消費を進めることで収益を上げるという意味では正しいのでしょうが、プリンターを例にして消費者からすると
・買い換えたのはいいけど新しいプリンターの使い方を覚えたり、壊れたプリンターを処分するのも面倒
・新品を作ることによって資源を使うことになり、結果的にゴミが増えるもいいのか?
といった疑問も出てきます。まあプリンターの場合には本体よりも消耗品のインクで儲ける商売になっているとか、電機製品全般に価格を考えると修理代が高いというのも使い続けることより買い換えを考える理由になっているのでしょうけど。
そんなことを考えながら、車に目を移すとGT−Rは例に挙げた一部の電機製品の消費形態とは正反対の使われ方、具体的に言えば「いいものを長く使う」という日本の良き文化を継承する商品を目指して開発されたそうです。
このことは開発責任者の水野さんが著者になっている「プロジェクトGT−R」という本の前書きに書かれており、内容を要約すると
「GT−Rの登場を通して(税法上だけにせよ)6年で償却が終わり、時間とともに価値が消耗するという車の消費形態を変えたい。具体的には今150万円で売られ、6年で税法上価値がゼロになる1500ccクラスの大衆車を、長く使えるよう耐久力を上げた上で200万円にし、償却期間を10年に延ばす。確かに販売台数は減るだろうけど値上げした分で利益は同じように得られるし、値上げによって200万円の車を買えなくなった人は3年落ちくらいの120〜150万円の同型中古車を買ってもらえばいい、などなど。」
といった考え方です。この考え方はすべての商品に当てはまらないとしても、いろいろな商品に導入して欲しいと感じる方も多いのではないでしょうか。車だったら生産時に使う原料やエネルギーの削減になるし、買い替えの時に掛かる税金を払わなくて済むメリットも大きいです。車の場合には環境対応や時代の移り変わりも大きいですから一筋縄にはいかないとしても、車を今まで以上に長く大事に使うようになり、イギリスの伝統ある古い家やカッコ良く見える古い衣類のように古い車に深い味わいを感じる世の中になれば、日本の風景や文化レベルも大きく変わるかもしれません。こんなことを考えていると、13年超の車の自動車税が割高になるのは今更ながら非常に腹の立つ話です。
プリンターだってこの考え方と同じにようにある程度値上げすることで耐久性を上げ、プリンター本体で常識的な儲けを得られるようになれば、インクで今までのように儲ける必要もなくなるでしょうから、消耗品を交換しながらいいものを長く使うことが出来ると思います。
価格競争力ももちろん大切ですが、価格よりも品質や性能の高さで勝負したい日本製品は「少し高くてもいいものが長く使えて、同じ期間に何度か買い換えるより結果的に安くつく」という方向性も考えるべきなのではないでしょうか。