ジュークはメカニズム面もなかなか見るべきところが多い車です。
まず車の土台となるプラットホームはノートやティーダなどと同じBプラットホームですが、ワイドトレッド化への対応やサブフレームを日産では「井桁型」と呼んでいるボディ側が2点支持タイプとなるものをBプラットホームを使っている車では初めて採用するなど、大幅な改良を受けています。例えるなら同じプラットホームでも違いの大きいインサイトとCR−Zの差くらいでしょうか。

さらに資料を見ると「欧州の道を走り込んで開発」という言葉があり、デュアリスのような質の高い走りが期待できそうです。そんなことを考えると、シートが堅めだったことやペダルも外車のようなゴツい作りだったことも納得です。なお、タイヤサイズは16インチとオプションのアルミホイールになる17インチ(PCDは5穴の114.3)で、タイヤはオンロードメインのSUVなのを象徴するようにサマータイヤで、銘柄は発表会にあった展示車で確認する限り横浜のデシベルでした。
パワートレーンも「HR15DE+CVT」という名前の上ではノートなどと同じですが、エンジン、CVTともに大幅な変更が施されています。
まずエンジンは1年近く前に技術発表がされていた、世界初となる通常のポート噴射でのデュアルインジェクターが採用されています。デュアルインジェクターを採用したことで吸気バルブ近くでの燃料噴射と噴射する燃料の粒径もより細かくすることが可能になり、燃焼の大幅な安定化に成功しています。さらに可変バルブタイミング(日産ではCVTC)が排気側にも採用され、燃費の向上にも寄与しています。
1.5リッターのNAとしては時代の最先端を行くエンジン
デュアルインジェクターCVTはスズキの軽自動車にも使われている副変速機付き(許容トルクは1.5リッタークラスまでとのこと)で従来より20%のワイドレシオ化に成功し、かつ重量が13%、サイズで10%の軽量化と小型化され、フリクションも30%低減しています。
右上のドリブンプーリーの左側が副変速機結果、10・15モード燃費は19.0km/lという低燃費を実現し、重量税と取得税のエコカー減税も50%減税が適応されます。
その他、オートエアコンが付くグレードには「インテリジェントコントロールディスプレイ」と呼ばれる、CVTのギアレシオやスロットル開度、エアコンの制御などをノーマルモードを基準に燃費重視のエコモードと走り重視のスポーツモードの3モードに切り替えられる機能も装備されます。
モード切り替えの名前に「ディスプレイ」と付くのは名前だけ聞くとちょっと変な感じもしますが、モード切り替えの操作パネルはエアコンの操作も兼ねたものになっており、見た目でもなかなか楽しめます。
エアコンの表示状態
「D−MODE」のスイッチを押すと、モード切り替え用に変身全体にもの凄く目立つ技術とまではいかないものの、ユーザーに実利がありそうな技術が詰まった車です。
しかし、これだけ技術の詰まった車にも関わらず、なぜかスタビリティコントロール(日産ではVDC)の設定がオプションでもなく、選択の余地すらありません。私は価格が200万円くらいの車までは価格との兼ね合いもあるので、標準装備がベストにせよスタビリティコントロールを全グレード標準装備にまでして欲しいとまで思いませんが、パッソでもオプション設定がある時代に出た上のクラスの最新モデルにスタビリティコントロールの設定がないのはあんまりではないでしょうか。これだけは早急な改善を望みたいところです。
グレードは標準のRSと上級のRXの2種類(SUVとして見ると意外にもFFのみの設定)で、価格はそれぞれ169万500円と179万250円となります。装備差を見るとインテリジェントディスプレイやインテリアの赤いパネルなど、RXにしか付かないものもいくつかあるのでどうせ買うならRXの方が満足度は高いのではないでしょうか。
値段自体はスペシャリティな雰囲気や塗装されたパネルやデュアルインジェクターなどのコストが掛かりそうなパーツが使われているのを考えるとまずまずリーズナブルに思います。ただ、直接的なライバルはない車なのは事実にせよ、価格だけで見るとRVRのベースグレードがジュークのRXと近い値段になっており、もし他の車も考えるユーザーだとどちらを選ぶか少し気になります。と言ってもジュークを買うユーザーはジュークに惚れ込んでいる人が多い気がするので、他車はまったく関係ないのかもしれません。
なお、今年の秋はVWのTSIエンジンのようなコンセプトの1.6リッター直噴ターボ(MR16DDT)搭載車のFF車と4WDの追加もアナウンスされています。特に4WD車には前後トルク配分の他、三菱のAYCのような後輪左右のトルク配分を行う新開発のALL MODE 4×4―iが搭載されることになっており、車自体楽しみですし、ジュークのコンセプトを突き詰めるなら本命はこちらなのかもしれません。
全体にいいところと悪いところ(主に好みがすごく分かれそうなスタイルとまったく設定のないVDC)が分かれそうな車ですが、こういった車が出てきたことは閉塞感が否めない自動車業界にとっては少なくともいい話題ですし、不景気で節約疲れを感じつつある日本人にとってもいい刺激になるのではないでしょうか。デザインを好む人も意外といるようで、車好きの20代中盤の友人と話していると「ジュークはメチャクチャカッコいい、デザインの日産になりつつありますね」と言っていました。とにかく日本で受け入れられるのか非常に気になる車です。