さて、2009年は自動車業界にとっていろんな意味で印象深い1年でした。世界恐慌・景気後退による企業経営の大打撃、「自動車界の公共投資」とも言えるエコ減税、そしてそれに便乗したプリウスショック…。自動車界がよりグローバル化するにつれて、内需規模の拡大に限界が見え始めた日本の自動車市場は、今世界的に見てますます異端で孤独なマーケットになりつつあるのかもしれません。
そんな中でもやはり個人的に印象的だったのは、国沢さんからご招待頂いた東京モーターショウでの取材でした。規模縮小、海外勢の撤退、入場者数激減など、寂しいニュースばかりでしたが、内容は決して暗いものばかりではなかったような気がします。後日こちらの大阪モーターショウのほうにも足を運び、確かに景気の後退は肌身に感じざるを得ませんでしたが、車に対する情熱や憧れは、今の時代でもまだまだ庶民の中には根強く残っていると個人的には思っています。
そこで、昨今よく言われる「若者のクルマ離れ」について…。自分語りになってしまうのが手前味噌ではありますが、一応世代的にはいわゆる「貴重」となりつつある、20代なりたてのクルマ大好き人間であると自負しています。この問題について、諸先輩世代の方々がどうすればいいのか、現状はどのようなものなのか…とお話されている事はよく耳にしますが、実際に今の若い世代がどのように自動車を見つめているのか、それを語っている文や場などはあまりないのでは?というわけで今年最後となるレポートは、そういった観点から、「若い世代が感じている」自動車の存在意義や楽しみについて少し書いていきたいと思います。


今年のTMSに、そんな若い世代に向けた代表的な提案…否、若い世代の車好きがヴィヴィットに反応した、2台のクルマがありました。トヨタのFT−86に、ホンダのCR−Z。ここでは素晴らしい我が国を代表する自動車と分かりつつも、レクサスLFAや日産GT−Rは少し横に置いといて、としておきたいと思います。

かたや、かつての名車のコードネームをあしらった、富士重工との共同開発のFRスポーツカー。かたや、これからの次世代の主役を担うであろうハイブリッドに、スポーツという概念を組み合わせた、パワートレーンだけでなく「エコ」と「スポーツ」をもハイブリッドさせた次世代型FFスポーツの提案。2011年登場とも言われているFT−86は市販化に向けての道筋はまだまだベールにつつまれていますが、もう販売がそこまで迫っているCR−Zのほうは詳細が明るみになってきており、かなり現実味が増してきた事と思います。すでに雑誌等で、実際の市販型モデルを目にした方も多いのでは。

デザイン、エンジン、車重、走り、燃費、価格…次世代のクルマ好きを増やし育てる1台には様々な要素が要求されます。同世代の車好きは、セダン好き・ミニバン好き・軽好き・スポーツカー好きなどのそれぞれのジャンルに偏りがち。自分のような自動車ならどんなジャンルでも大好きな雑食系クルマ好きが減っていると感じているだけに、あらゆるジャンルで高得点を狙えるクルマが今後の主役を担っていく…その答えの1つが、今年のベストセラーとも言えるプリウス、なのかもしれません。もちろん、一部クルマオタクには毛嫌いされている事も重々承知しつつ…。

そこで今年最後、2010年へ向けてのレポートとして、今現在日本を代表すると言ってもいい、オープンスポーツ2台に乗って1日ワインディングを走りまわってきたインプレッションを踏まえて、改めてクルマの楽しさについて、「若年のクルマ好き」と目線で考えてみました。1台はダイハツのコペンアクティブトップ、もう1台はMC後のマツダロードスターRSのリトラクタブルハードトップ仕様。もちろん言うに及ばず、ともにMT仕様。ワインディング、高速道路、一般道…1日400km乗ってみて感じた事を、次回またお伝えしたいと思います。

<レポート 岩田和馬>